胸部外科 74巻6号 (2021年6月)

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大動脈内に高度の浮遊粥状硬化病変を有するshaggy aortaを伴う弓部大動脈手術では,粥腫塞栓による脳合併症対策が重要である.特に体外循環の体循環および弓部分枝への順行性選択的脳灌流(SCP)の送血カニューレ挿入時,大動脈遮断操作時には,体外循環血流によるsandblasting effectに注意が必要である.粥腫塞栓による脳合併症を回避するため,体循環開始に先行し,SCPを体循環から分離して確立するbrain isolation法(BIT)が報告1)され,その後さまざまな手術の工夫と応用の報告2,3)がある.当院ではshaggy aortaを伴った弓部大動脈瘤に対して,脳合併症を回避すべくBITを用いた全弓部大動脈置換術(TAR)行っている.本稿では,当科で行っている手術手技の工夫および手術成績に関して報告する.

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マルチスライスCTの進化に伴い,術前に手術野の立体的イメージを把握することが可能となったが,実際に手にとることは困難である.われわれは立体的構造が複雑な大動脈基部病変に対する自己弁温存大動脈基部置換術に際し,3Dプリンタモデルを作成し,術前シミュレーション手術を行ったので報告する.

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上大静脈背面で右肺動脈幹を確保する場面としては,肺門部にかかる中枢型肺癌,右肺手術後の残存肺全摘除,中枢側の肺動脈損傷などが想定される.右開胸からは,主に二つの経路がある.

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大動脈スイッチ手術後の合併症として肺動脈狭窄は重要であり,多くの症例で経皮的バルーン肺動脈拡大術が施行される.しかし,術後長期間を経た症例ではバルーン拡大術による改善を認めない症例もあり,外科的介入が必要となる場合がある.本例では両側肺動脈狭窄に加えて多孔性筋性部心室中隔欠損症を認め,経皮的バルーン肺動脈拡大術での改善が乏しかったことから再手術の方針とした.両側肺動脈狭窄に際しては,スペースがない右肺動脈形成のために上大静脈転位を併用した.多孔性筋性部心室中隔欠損症に対しては,エコーガイド下サンドイッチ法による閉鎖術を施行した.再手術時の工夫について報告する.

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冠状動脈瘤は冠状動脈造影の0.3~5%に認め,まれな疾患である1).なかでも径が40 mmを超えるものは巨大冠状動脈瘤と呼ばれ2),頻度は0.02%と報告されている3).また,冠状動脈瘤破裂の報告のほとんどは冠状動脈瘻合併例であり4),冠状動脈瘻合併がないものはまれである.われわれは,瘤径56 mmの巨大冠状動脈瘤破裂による心タンポナーデをきたした1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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悪性腫瘍の自然退縮は非常にまれである.われわれは,経過中に病変の縮小と増大を認めた原発性非小細胞肺癌の2例を経験したので報告する.

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わが国の肺非結核性抗酸菌症の80%を占めるMycobacterium avium complex(MAC)症による続発性自然気胸の治療は,困難である場合も多い.われわれは,胸腔鏡下肺瘻内充塡および縫合・閉鎖が有効であった2例を経験したので報告する.

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患者は当時22歳の大学生の女性で,顔面の腫脹・頭痛・頸部圧迫感を主訴に来院した.

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はじめに 僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する標準術式は僧帽弁形成術(MVP)であるが,感染性心内膜炎(IE)が原因となる症例でMVPが完遂可能か否かは,感染の程度に影響される.われわれは,広範な感染巣を認めた僧帽弁位活動期IEに対し,疣贅や破壊が重度な組織のみを切除した後に弁尖を入念に擦過・洗浄するwashing & rubbing法により,自己組織のみで弁尖を修復した症例を報告する.

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はじめに 冠状動脈瘤は,正常冠状動脈径の1.5倍以上の局所的な拡張と定義され,希少疾患であるために治療体系は確立されていない.また無症状であることや,偶発的に診断されることから,自然歴や予後にも不明な点が多い.よって本疾患では個々の瘤の大きさや冠状動脈病変により,個別に治療方針が決定されているのが現状である.われわれは,無症状で診断された巨大右冠状動脈瘤に対して外科治療を行い,良好な経過をたどった1例を報告する.

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はじめに 外傷性の心破裂は,ほとんどの場合心タンポナーデか心囊内血腫を合併し,致命的となることが多い.われわれは外傷性の右房破裂に左血胸を合併し,心囊内血腫がないまれな症例を経験したので報告する.

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はじめに 乳頭状線維弾性腫(PFE)は,原発性心臓腫瘍の中ではまれな疾患である.本腫瘍は良性腫瘍であるが,脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす可能性があるため,外科的切除が必要である1,2).発生部位としては弁表面から発生するものが多く,心房壁から発生するものはまれである.われわれは,左房壁より発生したPFEの1例を経験したので報告する.

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はじめに 開心術後遠隔期に偶然に発見された無症候性の心臓腫瘤に対してCTガイド下生検を行い,慢性拡張性血腫(chronic expanding hematoma:CEH)と診断した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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はじめに 劇症型心筋炎後の心室瘤は,まれではあるが留意しなければならない合併症の一つである.われわれは心筋炎加療後,18年の経過で心室瘤を形成した症例に対し,手術加療を行い良好な結果を得たので報告する.

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はじめに われわれは,感染性胸部大動脈瘤破裂に対して,緊急胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)を行った後,二期的に肋間筋弁充塡術を施行した.6ヵ月後proximal stent graft induced new entry(SINE)による再破裂をきたし,二度目の緊急TEVARを行って寛解したので,報告する.

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はじめに 降下性壊死性縦隔炎(DNM)は,口腔内感染や咽頭膿瘍などが筋膜間隙や気管周囲間隙に沿って縦隔へ伸展する重篤かつ難治性の感染症であり,非常に致死率が高い1).われわれは,胸部大動脈人工血管置換術後に本疾患を合併した症例を経験したので報告する.

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はじめに 肺癌に対する管状肺葉切除術は,肺機能の温存と根治性の両立をめざした手術である1).われわれは,間質性肺炎を合併した右肺中葉と右B6入口部ならびに左肺上葉の3重複肺癌に対し,右肺中葉およびS6区域管状切除術と左肺部分切除術を施行した症例を経験したので,報告する.

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はじめに 縦隔の神経原性腫瘍の多くが肋間神経や交感神経幹に由来し,胸腔内迷走神経鞘腫は比較的まれな疾患である.われわれは左胸腔内迷走神経より発生した神経鞘腫の手術例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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はじめに 肺動静脈瘻は比較的まれな疾患である.感染症や脳血管障害の発症確率が高いため,早期の治療が推奨されている.われわれは,手術待機中に脳膿瘍を発症した右肺動静脈瘻の手術例を経験したため報告する.

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はじめに Kirschner鋼線(以下,Kワイヤー)は,整形外科領域で多用されている,骨接合に用いる固定用鋼線である.われわれは,骨接合に用いたKワイヤーが胸腔内に迷入したため,緊急手術により摘出した症例を経験したので報告する.

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臨床経験が30年以上となった今でも危機的状況に陥りそうになったり,陥ったりする.そのときに何が必要か? まずは冷静になることであろう.そして,自分の引き出しから状況に応じた解決法をイメージし,それを実行することである.そして,その引き出しは多いに越したことはない.その引き出しを増やしてくれる,またそういった危機的状況に陥らないためには何が必要かを示してくれる,それが本書である.

胸部外科医の散歩道

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鳥取大学医学部附属病院は鳥取県の西部地区・米子市にあり,町のシンボルである米子城跡に位置します.標高90 mほどの湊山には,かつて戦国時代の武将・吉川広家が1591年に築城した米子城があります.伯耆米子城は,鳥取藩の支城の地位にありましたが,近世初頭の城郭としてはまれにみる特色をもち,四層五重の天守閣(大天守)と四重櫓(小天守)という大小二つの天守が,華麗に連なる名城でした.明治時代に廃城となり,取り壊されましたが,もし天守閣が残っていたら,おそらく鳥取大学医学部もこの地にはなかっただろうといわれます.

基本情報

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胸部外科
74巻6号 (2021年6月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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