糖尿病診療マスター 14巻9号 (2016年9月)

特集 進み過ぎた糖尿病合併症患者を支える—よりよい生活をめざして

Ⅰ糖尿病中途失明者を支える

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POINT

・近年の抗血管内増殖因子(VEGF)薬の硝子体注射の導入,網膜光凝固や硝子体手術の技術向上により,糖尿病網膜症による視力障害や失明を防止することが可能となっている.

・しかし,それを有効的に行うためにも,糖尿病網膜症の早期診断がポイントとなり,定期的に糖尿病患者の眼底をスクリーニングすることが重要である.糖尿病患者の内科・眼科の医療連携が,よりよい視機能維持にとても大切であるといえる.

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POINT

・視覚障害者は三療以外にも就労が可能.

・視覚障害者の特性を理解した就労支援が重要.

中途失明者の社会復帰 林 洋一
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POINT

・視力障害者の日常生活や職業訓練の重要性

・中途失明者の社会復帰への難しさについて

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POINT

・透析中も血糖管理が大切である.

・糖尿病の透析患者は非透析患者に比べ,網膜症(眼底出血),血管合併症,神経障害,骨症,低栄養の抑制・管理がより必要である.

・失明の透析患者の支援には,症例ごとに考え適切な内容を判断し実行する辛抱強い努力が必要である.

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POINT

・糖尿病腎症による末期腎不全に対して,腎移植は心血管合併症の進行を抑制しうる.

・腎移植後の糖尿病管理はきわめて重要である.

Ⅲ両下肢切断多重糖尿病合併症患者を支える

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POINT

・両下肢切断糖尿病患者の多くは重複障害をもち,心身機能低下の悪循環を生みやすい.

・定期的な全身観察とトータルケアが両下肢切断糖尿病患者には必要である.

Ⅳ泌尿器科合併症をもつ患者を支える

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POINT

・糖尿病患者は高頻度で泌尿器科合併症を伴う.

・下部尿路機能障害は,蓄尿障害から排尿障害までさまざまな病態を呈するが,重症化すると慢性尿閉に至る.

・勃起不全は,重大な心血管合併症の前駆症状の可能性がある.

・気腫性尿路感染症は,重篤化すると外科的治療の適応となる場合がある.

Ⅴ心疾患合併糖尿病患者を支える

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POINT

・心臓リハビリテーションは「きわめて有効な治療」の一つである.

・心臓リハビリテーションで,心疾患合併糖尿病患者が心疾患合併非糖尿病患者と同程度まで,生命予後が改善する.

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 本号では,糖尿病患者さんの合併症が重度になって,いわば最悪の経過となった方々に対するサポートについて特集しました.この座談会では,そのなかでも私自身,何もできなくて特に困ると悩んでいた「高度視力障害の方々」を取り上げます.

 20年ぐらい前までは,働き盛りのうちに視力障害になる方がけっこうおられました.最近は,40代,50代という方は少ない感じがしますが,片眼は見えないという方はたくさんおられます.また,5年以上ずっとHbA1cが6〜6.5%と理想的な見事なコントロールを維持していらっしゃるにもかかわらず,徐々に視力が落ちて,70代,80代になってから両眼失明(全盲)状態となる方々がおられます.声の掛けようもない,ご本人もご家族もつらいという現実があります.

 このような視力障害の方々に何かできることはないかと思っていた時に,積極的に頑張っておられる先生方のことを奥口先生から聞き,山田先生,安藤先生のおられる新潟が日本で一番先進的に取り組んでいる地域だということを知りました.本日は,その先生方から直接お話を伺いたいと思い,お忙しいなかお集まりいただきました.

Perspective◆展望

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 糖尿病患者が長い中断の末に深刻な症状を抱え,がまんの限界を迎えてようやく受診してくることがある.一見手遅れでも,何とか機能を保って完全な障害者にならずに自宅に帰ることも少なくない.症状の出た糖尿病患者が深刻さを悟り熱心に治療に取り組んで,良好なHbA1cを保てるようになることもまた少なくない.しかし,良好なコントロールを維持しているにもかかわらず,そして眼底は光凝固し尽くされているのにもかかわらず,じわじわと視力が低下する症例もままみられる.何年もかかって眼圧がじんわりと徐々に徐々に上昇し,両眼の視力が失なわれていく患者を筆者は数人経験した.これも一種のレガシー効果であろうか.放置していたのは何年も前のことで,その後はずっと良好な血糖コントロールを維持してきたのに…….何と皮肉なことであろうか.患者さんは悟ったようにあきらめ顔であるが,内科医は悔しくて残念で仕方がない.コントロール不良は5年も10年も前のことだったのに,そしてこんなにも良好なコントロールを続けている人に,いまになってこんな深刻なことが起こるなんて…….糖尿病の合併症にはそのような側面もある.

 さて,全盲になった人にはその後どんな人生が待っているのであろうか.眼科医から指導を受けるチャンスはさほど多くない.ほとんどの患者は漂流するかのようにその後の人生をあきらめており,家族も途方に暮れている.

こんな時どうする!? 糖尿病患者によくみられる皮膚症状

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■内科医からのQuestion

 「66歳男性.糖尿病教育入院中に左頸部から肩にかけて痛みを伴う小水疱の集簇が出現.その後,背部にも小水疱が散在してくるとともに,痛みも増強してきました(図1).診断,治療および注意点について教えてください」

専門医に訊くCommon Disease最新の知識

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Question②

糖尿病患者がSLEに罹患した場合,注意すべきことは何か?

Answer②

 糖尿病患者がSLEに罹患した場合に問題となる点は主に2つと思われる.一つはステロイド使用に伴う血糖コントロール悪化と,もう一つは腎病変の評価である.

 血糖のコントロールはステロイド使用に特徴的な夕方高血糖と,逆に朝方の低血糖の問題である.血糖の変動を細かく見ながらインスリン量の調整をしなければならないことが多い.

 糖尿病患者の治療経過中の腎病変評価に関しては,尿蛋白だけでなく,SLEに特徴的な『望遠鏡円柱』や尿潜血など,糖尿病腎症では説明のつかない尿所見を見逃さないことが重要である.膠原病を疑う症状がある場合には,CBC(血球減少)・抗核抗体・補体価(CH50)などの評価が必要となる.

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 唐辛子から抽出される生理活性物質は,肥満,心血管疾患,消化器疾患,癌等を改善させるといわれています.たとえば,唐辛子が食欲を低下させたり,副腎からのアドレナリン分泌増加を介してエネルギー代謝を亢進させたりして肥満を改善するという報告がありますし,唐辛子に含まれるカプサイシンは,カプサイシン受容体(TRPV1)を介してカプサイシン感受性神経興奮を引き起こし,胃粘膜の血流を増加,胃酸分泌を低下させ,胃粘膜保護に働くとされます.また,胆囊癌の発症を抑制したという報告や,腸内細菌にも影響を与えるという報告もあります.

 本研究は,日常の食生活で,唐辛子を使った辛い食べ物の消費量と,死亡率の関連を調べることを目的としています.対象は,2004〜2008年に中国10地域で登録された,30〜79歳の男性199,293人,女性288,082人です.質問票を用いて,「最近1カ月でどのくらいの頻度で辛い食べ物を食べたか」などの辛い食べ物に関する項目と,年齢,性別,職業,学歴,収入,婚姻状態,既往歴,家族歴,身体活動量などの項目に回答してもらい,さらに身長,体重などの身体測定を行いました.2013年まで平均7.2年間にわたり追跡調査を行い,COX比例ハザードモデルを用いて死亡率を解析しました.

糖尿病診療トレーニング問題集

専門医レベル 柏原 米男
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症例 8カ月,男児.

主訴 体重増加不良,活気低下,発熱.

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 雑誌『糖尿病診療マスター』は,このたび,創刊号(第1巻第1号,2003年)から数えてちょうど100号目を迎えました.創刊時に掲げられました「創刊のことば」(右頁)は今も色褪せることなく,この間,この「創刊のことば」に則り,毎号さまざまな切り口で議論の場を提供し続けてきました.

 そこで本誌では,“通巻100号記念座談会”として,「糖尿病診療はどこに向かっているのか?—残された課題と新たな課題」をテーマに座談会を企画・収録しましたので,次号(第14巻第10号)にて掲載いたします.本誌編集委員の中から4名の先生方にご出席いただき,急速に発展してきた糖尿病診療が直面する課題に触れながら,その限界がどこにあるのか,どのような展望が待っているのかを独自の視点で語っていただきましたので,どうぞご期待ください.

お知らせ

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 本の価値はいったい何で決まるのだろうか? わかりやすく言えばそれは,その本によってどれだけの人が救われるかということではないだろうか.そして,救われるのが死に瀕して助かる命だとしたら,その本の価値は何にも代え難いものだろう.この本がまさにそんな本だ.

 人ががんや寿命で死ぬとき,人は死を自覚し,死を受容し,受容しないまでも納得して,あきらめて,死ぬことができる.しかし,突然の病気で死に至るとき,あるいは不慮の事故に巻き込まれて死に至るときは,死を思う時間さえも与えられない.人生を振り返る時間もない.だから,突然の死からできるだけ多くの人を救ってあげたい.すべての医療者は,いやすべての人々は,家族は,そう願っている.その願いを叶えるのがこの本だ.

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 「医学」を意味する“Medicine”には,「内科」という意味もあります.将来専攻する基本領域にかかわらず,すべての医師には,“Medical Diagnosis”すなわち「内科診断学」の学習が勧められます.医学生や初期研修医にとっては,内科診断学は医療面接や診察法を行う基礎となる学問であり,各論的な症候学と合わせて,最も重要な臨床医学の学ぶべき領域となります.

 さらには,新しい内科専門研修を専攻する医師には,将来のサブスペシャリティー診療科の種類にかかわらず,総合(一般)内科的な知識の習得と経験が求められており,内科診断学は研修目標のコアとなるでしょう.また,総合診療専門研修を専攻する医師にとっても,病院総合や家庭医療のいずれを選択するにせよ,多くの内科系疾患の初期診断過程にかかわることから,内科診断学を学ぶことが必須です.

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糖尿病診療マスター
14巻9号 (2016年9月)
電子版ISSN:1347-8389 印刷版ISSN:1347-8176 医学書院

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