糖尿病診療マスター 14巻10号 (2016年10月)

特集 糖代謝異常妊婦さんを守ろう

  • 文献概要を表示

POINT

・妊婦の糖代謝異常管理目標は,母児の周産期合併症減少,母児の将来の糖尿病,メタボリックシンドローム予防である.

・上記目的達成のためには,妊娠前管理,妊娠中のスクリーニング,血糖管理,産後のフォローアップが重要である.

  • 文献概要を表示

POINT

・新診断基準の導入により,妊娠糖尿病の患者数は増加した.

・新診断基準で診断された患者でも,耐糖能異常と関連した周産期合併症が認められる.

・新診断基準で新たに診断された患者であっても,インスリン療法が必要な場合がある.

  • 文献概要を表示

POINT

・ライフサイクルをふまえた支援が必要.

・血糖コントロール支援は妊娠各期の特徴をふまえる.

・血糖コントロールは,子どもの将来に関連する.

  • 文献概要を表示

POINT

・妊娠糖尿病女性は分娩後正常化する場合が多いが,その後糖尿病に進展する率は非妊娠糖尿病者に比べ明らかに高い.

・糖尿病進展のリスク因子は,肥満,早期の診断,妊娠中の耐糖能異常,インスリン分泌低下,インスリン使用などである.

・産後の再診断,定期的な検査や生活指導などのフォローアップを継続することが推奨される.

  • 文献概要を表示

POINT

・糖尿病合併妊娠では,特に妊娠早期の血糖値が児の奇形と関係することから,計画妊娠が重要である.

・2型糖尿病では,妊娠時初めて糖尿病を発見されることもある.また高血圧,脂質異常などを合併している場合は,妊娠中は経口糖尿病薬と同様,使用できない経口薬が多いので注意する.

・1型糖尿病は本人のみならず,家族の支えと家族への教育が重要となる.

  • 文献概要を表示

POINT

・NCDs:心筋梗塞や脳卒中などの心臓血管病,がん,喘息や肺気腫などの慢性肺疾患,そして糖尿病などの非感染性疾患を総称してNCDs(non-communicable diseases;非感染性疾患)と呼ぶ.

・DOHaD:「胎児期(さらには胎児になる前の胎芽期)や乳児期の環境因子が,成長後の健康やさまざまな疾病の発症リスクに影響を及ぼす」という概念.

  • 文献概要を表示

POINT

・計画妊娠が重要.

・合併症の精査,治療を妊娠前に必ず行う.

・分娩後は直後では低血糖に注意,長期では治療を中断せず良好な血糖を保つこと.

  • 文献概要を表示

POINT

・糖尿病網膜症の進行の程度により,糖尿病患者の妊娠・出産の管理が大きく異なってくる.

・糖尿病患者においては,妊娠前から出産後まで,眼科専門医による網膜症の活動性の把握と,活動性の高い場合における密度の濃い眼科的治療の施行が,失明を予防するうえで重要である.

  • 文献概要を表示

はじめに

 糖代謝異常という名称は,1955〜2000年頃までは,糖尿病に至っていない軽いボーダーライン的な糖代謝異常を指していた.最近,重い糖尿病も含めて示すような傾向になり,本特集でも明らかに軽い妊娠糖尿病と,1型,2型糖尿病を同程度に含めてあるので,時代の流れを感じさせられる.

 日本糖尿病・妊娠学会は「糖尿病と妊娠に関する研究会」を基盤に生まれたものである.『糖尿病と妊娠』15巻1号に特別企画「特集30周年記念—学会立ち上げの歴史を熱く語る」が発表されている1)が,読者も異なるであろうし,軌跡をたどることは「温故知新」に通じ,かつ生き証人は,歴史を曲げることなく,事実を正しく伝える使命をもつものであると思われるので,ここに改めて記述させていただく.多少の重複はご海容をお願い致したい.

Perspective◆展望

  • 文献概要を表示

 日本糖尿病・妊娠学会の歴史は,日本の糖代謝異常妊婦さんの歴史でもある.

 本学会の年次学術集会開催は2015年11月に第31回を数えた.10年ひと昔というが,31回というのは,今回,本学会が3周りしてrebornしたともいえる.僭越ながら筆者が会長の役目を担った.本学会は新しい10年に向かって漕ぎだした.

  • 文献概要を表示

中塔 『糖尿病診療マスター』通巻100号記念座談会「糖尿病診療はどこに向かっているのか?」を始めさせていただきます.よろしくお願いします.

 糖尿病の治療,特に薬物治療はこの四半世紀で著明な進歩を遂げました.1990年代になり,α-GI,チアゾリジン薬,グリニド薬など新たな糖尿病薬が登場し,2009年12月には最初のDPP-4阻害薬シタグリプチンが上市されました.その後,2010年台になるとDPP-4阻害薬が次々と登場してまいりました.さらに,2014年4月には最初のSGLT2阻害薬イプラグリフロジンが発売され,その後SGLT2阻害薬もすでに6成分,7剤が発売されるに至っています.注射薬もインスリンアナログ製剤の進歩に加え,GLP-1受容体作動薬も登場し,作用時間が短いものから長いものまで,最近では週1回投与の製剤も2製剤が使用可能となり,治療の選択肢は大きく広がりました.

  • 文献概要を表示

糖尿病診療—残された課題

中塔 第Ⅰ部では,糖尿病の進歩を振り返りながらこれまでに変わったこと——解決された課題についてお話しいただきました.ここからは,糖尿病診療における残された課題について話を進めたいと思います.

 課題を考えるうえで,スライドを用意させていただきました(表1,図1).これは,当院で10年前から連携診療をしている方の経過104例です.当初HbA1cが7.2%で,半年に1回,当院とかかりつけで診ていて,現在7.3%ぐらいです.10年経って「変わっていないからいいのかな?」と思っていたのですが,これを「うまくいっている」と言ってよいのか,目標の7%には達していないので「不十分なまま推移している」と言ったほうがよいのでしょうか.10年間で薬物治療が進歩し,患者さん方も薬剤を変えたり加えたりしているのですが,あまり変化はありません.薬物治療の限界なのか,あるいは薬物治療の問題だけではないのか等々,この数字を見ながらいろいろ考えたものですから,提示させていただきました.

こんな時どうする!? 糖尿病患者によくみられる皮膚症状

  • 文献概要を表示

■内科医からのQuestion

 「足趾に紫紅色斑がみられ,疼痛を伴っており一部潰瘍化していますが,どのように処置をしたらよろしいでしょうか?」

糖尿病診療トレーニング問題集

専門医レベル 髙橋 美琴 , 沖本 久志
  • 文献概要を表示

症例 38歳,男性.

現病歴

 23歳,統合失調症で近医精神科入院中に空腹時血糖187mg/dL,HbA1c 12%,抗GAD抗体6,120U/mLで1型糖尿病と診断され,当院紹介.入院のうえインスリンを導入したが,退院後に治療中断.31歳,ふらつきで受診し,Hb 3.4g/dLの悪性貧血と随時血糖358mg/dLを認めたため入院.ビタミンB12投与と食事療法でともに安定したため退院したが,再度中断.38歳,口渇で受診し,随時血糖430mg/dLとHb 3.8g/dLの悪性貧血再燃を認めたため入院.

専門医に訊くCommon Disease最新の知識

虚血性心疾患 中川 義久
  • 文献概要を表示

Question

ステント治療を行った際,植え込み後はバイアスピリン®とプラビックス®を併用し,半年〜1年後に経過がよければ一方のみを継続するとされていますが,現状ではどちらを継続するべきなのか,教えてください.

Answer

 現状では2剤の抗血小板薬併用を中止した後には,単剤としてアスピリンを選択することが標準的である.この選択法での豊富な治療経験や保険制度上からも支持されている.アスピリン潰瘍に代表される副作用や,新規のADP受容体阻害薬の開発,クロピドグレルのジェネリック薬認可などの要因から,アスピリンを中止する取り組みも進んでいる.

  • 文献概要を表示

 食物は快中枢を刺激することが知られており,この中枢が麻薬やアルコールでも刺激されることから,砂糖(ブドウ糖と果糖による二糖類)も依存性があると考えられています.砂糖および甘味料含有飲料の消費増加が肥満者の増加と関連しています.若者は最も添加砂糖を摂っており,摂取カロリーの約20%が砂糖であり,その約50%は甘味料含有飲料1)由来です.果糖でなくブドウ糖は,やせた大人では空腹感を調節する部位(視床下部),報酬-動機づけに関わる部位(線条体)の血流を低下させることが報告されています1).砂糖はブドウ糖に分解され,脳の主要なエネルギー源となりますが,大量に摂ると特に脳の重要な成長期には報酬-動機づけ行動が不適切なものになると報告されています1)

 この論文では,最も一般に消費されている単純糖質のブドウ糖と果糖を飲用した時の脳血流を,やせた若者と肥満の若者でfunctional MRI(機能的MRI)を使って検討しています.

  • 文献概要を表示

 医師が診断に難渋するのには,いろいろな訳がある.診断に占める病歴の価値は,昔と比べてまったく低下していないが,医師は一般に聞き上手ではない.問診・病歴聴取・医療面接への経済的誘導はなく,傾聴や共感に関する教育の歴史が浅かったためでもある.

 患者も話し上手ではない.心身共に病んでいる患者の訴えは拙い.何と言っても,医療の素人である.そもそも人間は前向きに生きているのであり,後向きに病歴を振り返るのは苦手である.場合によっては,意識が障害されている.

  • 文献概要を表示

 「皮膚科はいろいろな皮疹をたくさん経験することが大切です」 私が学生のときに,ある皮膚科の先生に言われた言葉です.当時,皮膚科のカラーアトラスを読んで皮疹の特徴を覚えたのですが,カラーアトラスには詳細な記載がないので,また別の教科書で,その疾患の診断や治療法を勉強したものでした.皮疹の種類があまりにも多すぎて,臨床を知らない私にとっては,その疾患の頻度などもわからず,必死に覚えただけで,結局忘れてしまうことがほとんどだったと記憶しています.

 ジェネラリスト,つまり皮膚科の“非専門医”にとっての「これだけ知っておけばよい」99疾患がセレクトされていることが,本書のお薦めポイントの一つです.99疾患あれば,ジェネラリストが遭遇する日常の皮膚疾患は十分網羅されていると思います.逆に本書に掲載がなければ,専門医へコンサルトしてよいでしょう.

購読申し込み書

バックナンバー

本誌の編集体制

次号予告

基本情報

13478176.14.10.jpg
糖尿病診療マスター
14巻10号 (2016年10月)
電子版ISSN:1347-8389 印刷版ISSN:1347-8176 医学書院

文献閲覧数ランキング(
7月15日~7月21日
)