糖尿病診療マスター 14巻11号 (2016年11月)

特集 経口糖尿病治療薬2016—病態に応じたベストチョイス

Ⅰ鼎談

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 私が研修医だった35年ほど前は,糖尿病の入院患者さんは概ね「やせ型」で,学会でも肥満者の糖尿病は分けて扱うという主張もあったくらいです.糖尿病の治療薬は,インスリンも「レギュラー」と「レンテ」だけ,経口血糖降下薬は基本的にSU薬のみで,専門医の腕の見せどころはSU薬のさじ加減という時代でした.インスリン分泌不全を呈する患者さんが多かったわけですが,その後インスリン抵抗性が成因の一つとなり,現在はむしろ後者が主流ではないかと感じるようになりました.経口血糖降下薬も増えて,現在7種類もあります.今回の座談会では,いま一度病態に応じた薬剤の選択について考えてみたいと思います.

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POINT

・インスリン抵抗性が主体→空腹時インスリンやHOMA-IRが高値/BMIが25以上

・インスリン分泌不全が主体→血中CPRや尿中CPRが低値/BMIが22未満

Ⅲ各論 インスリン抵抗性を重視する場合

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POINT

・メトホルミンは第一選択薬として使用でき,高用量まで増量が可能である.

・長期使用経験があり,安価であり,体重への影響が少ない等の利点がある.

・DPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬との併用においても,有効性が期待される.

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POINT

・チアゾリジンは多彩な効果(pleiotropic effects)を有している.

・チアゾリジンは良好な持続性(durability)をもった薬剤である.

Ⅲ各論 インスリン分泌不全を重視する場合

DPP-4阻害薬は万能薬か 久保田 章
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POINT

・すでに実臨床で数多くの症例に使用されているDPP-4阻害薬は,血糖降下以外の多面的作用も有し,アウトカム試験で心血管イベントについての安全性も報告され,初期例からインスリン治療例まで幅広い2型糖尿病治療に安全に有効活用できる薬剤である.

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POINT

・インスリンに次ぐ60年の長い臨床経験をもつ.

・低血糖以外に深刻な有害事象がない.

・併用療法で二次無効を予防する.

Ⅲ各論 SGLT2阻害薬,食後高血糖改善薬

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POINT

・SGLT2阻害薬の効果は多岐にわたる.

・適正使用を心がけ,丁寧な診察により副作用発現を見逃さないことが重要である.

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POINT

・薬剤の特性を説明し,服薬アドヒアランスの向上に努める.

・口腔内崩壊錠や配合剤の活用を考慮する.

施設訪問 運動療法頑張っています!・1【新連載】

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運動療法内容

個人運動指導

 診療後,もしくは診療までの間に行う.自作の資料で運動の必要性を説明,必要に応じ可能な実技指導も行う.体組成測定の結果をもとにフィードバック.管理栄養士と連携し,食事と運動の両面から患者さんをサポートする.

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 私が研修医だった30年以上前には,経口血糖降下薬はSU薬が数種類あるのみで,これをいかに使い分けるか,量を調節するかが専門医の腕の見せどころだったように思う.ビグアナイド薬を使う専門医がいたかもしれないが,いたとしても少数派であったに違いない.現在は7系統の薬剤が使用可能となっており,正直なところ隔世の感を禁じ得ない.

こんな時どうする!? 糖尿病患者によくみられる皮膚症状

鶏眼・胼胝・亀裂 新井 達 , 末木 博彦
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■内科医からのQuestion

 「2型糖尿病にてインスリン導入している患者です.今回は肺炎にて加療中ですが,以前から足に胼胝があるようです.定期的なフットケアをお願いします.」

専門医に訊くCommon Disease最新の知識

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Question①

小児科で小児糖尿病を専門としています.1型糖尿病患者さんは甲状腺疾患を合併することが多いので,インスリン治療と併せてコントロールする必要がありますが,苦慮することがあります.1型糖尿病患者における治療のポイントについて教えてください.

Answer①

 1型糖尿病患者では,発症時および経過中の自己免疫性甲状腺疾患の合併に注意する.バセドウ病の治療は,一般のバセドウ病患者と変わりないが,抗甲状腺薬の早期中止より甲状腺機能の長期安定を目指す.抗甲状腺薬の治療でコントロールが困難な場合は,手術やアイソトープ治療への切り替えを考慮する.

糖尿病診療トレーニング問題集

専門医レベル 田中 瑞絵 , 歳弘 真貴子
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症例 68歳,女性.

主訴 意識消失.

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 世界的に肥満と糖尿病の増加が大きな問題となっています.経口血糖降下薬の開発は飛躍的に進歩していますが,2型糖尿病の治療には食事・運動療法は最も重要です.食事療法は栄養指導や日々の外来診療の場で頻回に行われますが,運動療法はコストの問題や明確な指示と実行が難しいことから敬遠されがちです.日本人2型糖尿病患者を対象とした観察研究では,余暇時間に運動量が多い者は脳卒中や全死亡率が低く,運動療法の効果が示されています.しかし,2010年に行われた糖尿病運動療法の実施状況の調査では運動療法を行っていると回答した割合は52%であり,食事療法と比して実施率が低いことが示されています.理由の一つに「運動を行う時間がない」という患者さんの意見があります.運動療法といわれると,特別に運動の時間を割くことが必要なように考えがちですが,日常生活のなかでの身体活動量を増やすことも肥満・2型糖尿病の予防・治療として有効だと考えられます.居住地域が歩きやすいほど日常の身体活動量が増加するため,居住地域の歩きやすさは肥満・糖尿病の発症と関係していると考えられてきましたが,前向きに検討した研究はありませんでした.そこで今回,居住地域の歩きやすさと肥満・糖尿病の発症の関係を前向きに検討した論文を紹介します.

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 今の医学は過去の失敗の積み重ねから成り立っている.

 「自分が下した診断のもと帰宅させた患者が,翌日別の診断で入院した」という経験は,多くの医師が経験したことがあるのではないだろうか.しかも,その経験は何年経っても忘れられない記憶となり,部下の指導で最も強調しているのは,このような失敗が大きく影響しているからであろう.診断エラーがなぜ起きてしまい,どのように対処したらよかったかを共有することができれば,患者の不幸を回避できるだけでなく,難解な疾患の診断への近道となる.

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 この本が書店に並べられて最初にタイトルを見かけた時,ある種の衝撃を受けた.というのは,タイトルは『医師の感情』であるが,副題が“「平静の心」がゆれるとき”となっていたからだ.「平静の心」とはオスラー先生が遺した有名な言葉であり,医師にとって最も重要な資質のことであったからだ.医師にとって最も重要な資質である“「平静の心」がゆれるとき”とはどういうときなのか,これは非常に重要なテーマについて取り組んだ本であると直観的にわかった.

 この本を実際に手に取ってみると訳本であった.原題は“What Doctors Feel”である.なるほど,この本はあの良書“How Doctors Think”(邦題『医者は現場でどう考えるか』,石風社,2011年)が扱っていた医師の思考プロセスの中で,特に感情について現役の医師が考察したものである.“How doctors think”は誤診の起こるメカニズムについて医師の思考プロセスにおけるバイアスの影響について詳細に解説していた.一方,この本は,無意識に起きている感情的バイアスについて著者自身が体験した生々しい実例を示しながら解説したものである.リアルストーリーであり,説得力がある.

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 評者が初めて医学部生向けに臨床研究について講義した際,参考にしたのは学生時代に受けた講義であった.一方,大学院教育はまったく受けていなかったが,ありがたいことにNIH(National Institutes of Health)で臨床研究に参加して,臨床研究に必要な事項を学ぶことができた.(研究デザインをした上で)研究倫理委員会への申請,研究参加した患者を含む一般へのアウトリーチ活動,そして統計学の重要性といった事柄である.

 当方の大学院生には,〈患者・家族のニーズを踏まえ,日々の臨床疑問の解決と病因・病態を解明し,病因・病態に即した診断・治療・予防法の開発をめざすことが基本方針〉であり,〈臨床研究のしっかりしたお作法,すなわち研究デザインやデータ解析などを身につけることが重要〉と説明し,参考図書を紹介してきた.ところが,研究デザインやデータ解析に関する図書は,臨床的観点が乏しい,あるいは数式が多すぎて取っ付きの悪いものになりがちである.さりとて,あまりに簡略化したものは食い足りず,良い臨床研究の教科書はないものかと,探し続けていた.

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糖尿病診療マスター
14巻11号 (2016年11月)
電子版ISSN:1347-8389 印刷版ISSN:1347-8176 医学書院

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