糖尿病診療マスター 13巻12号 (2015年12月)

特集 再生医療と創薬—糖尿病患者のベッドサイドへ

Ⅰ再生医療

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POINT

・ES細胞,iPS細胞を分化誘導させた膵β細胞を移植するⅠ型糖尿病治療が研究されている.

・免疫反応・炎症抑制効果がある間葉系幹細胞(MSC)を用いたⅠ型糖尿病治療も期待されている.

・ブタ体内でヒト膵島を作るキメラ動物の研究は,倫理的問題はあるが,実用レベルに近いとも考えられている.

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POINT

・ヒトES/iPS細胞から段階的分化誘導法や分化転換などの方法で,膵β細胞の作製が試みられている.

・ES/iPS細胞研究は,新たな病態モデルのプラットホームとして病因解明や治療法の開発につながる.

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POINT

・糖尿病足潰瘍を想定して,糖尿病ラットモデルにおいて他家脂肪由来幹細胞(ASC)シートを移植した.

・ASCシートは,それ自身ならびにそれ自身が分泌するサイトカインにより創傷治癒を促進した.

Ⅱ創薬

GPR作動薬 亀井 信二 , 加来 浩平
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POINT

・GPR40作動薬であるfasiglifamが臨床応用目前であったが,肝障害の懸念から2013年末に開発中止となった.

・GPR119作動薬の開発は臨床治験第2相の段階まで進行している.

・現時点で臨床第3相試験中のGPR作動薬はなく,実臨床での応用の可能性については未知数である.

経鼻GLP-1製剤 上野 浩晶 , 中里 雅光
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POINT

・経鼻GLP-1製剤により,速やかな血中GLP-1の増加がみられた.

・経鼻GLP-1製剤投与後に,初期インスリン分泌の増加とグルカゴン分泌の抑制がみられた.

・本剤の2週間投与により,グリコアルブミンの有意な低下を認めた.

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POINT

・グルコキナーゼ活性化薬は,血糖に依存した膵β細胞でのインスリン分泌と肝臓でのグルコースの取り込みやグリコーゲン合成作用を有する.

・膵β細胞において,細胞増殖とアポトーシス抑制作用を有し,膵β細胞量を調節する.

・グルコキナーゼ活性化薬は臨床試験での血糖降下作用が確認されているが,効果が長期的に持続するかが課題とされている.

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POINT

・週1回投与型DPP-4阻害薬トレラグリプチンは世界初の週1回投与型経口血糖降下薬として,2型糖尿病治療の新たな選択肢となる.

肥満症治療薬 宮崎 滋
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POINT

・肥満症治療薬は減量により肥満症の合併症を軽快,改善させることが目的.

・食事,運動療法で改善が困難な患者が対象.

PCSK9阻害薬 小倉 正恒 , 斯波 真理子
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POINT

・PCSK9はLDL受容体の分解を促す.

・PCSK9阻害薬では抗モノクローナル抗体医薬の開発が最も進んでいる.

Perspective◆展望

創薬と再生医療 内潟 安子
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 本号では,秦の始皇帝が待ち焦がれた不老長寿の薬とまではいかないが,夢のある話をまとめてみた.

 糖尿病の治療薬の種類が急にめっきり増えた.どれを先に,どれを次に使用するといいのか,またどれとどれは相性が悪いのかと千々に迷ってしまうな,と思っている矢先,近々に,まだまだ,新しい概念の糖尿病治療薬が出てきそうである.日本発の創薬もあり,楽しみなところである.

季節を感じる糖尿病食—旬の野菜と身近な卵で

—師走—大根めし と プリン 城戸崎 愛
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大根めし

■材料(4人分)

大根 約400g(中 約1/2本)

米 3カップ

油揚げ 2枚

サラダ油 大さじ2

*1 しょうゆ…大さじ1 酒…大さじ1 砂糖…小さじ1

湯 3 1/3カップ

*2 酒…大さじ1 しょうゆ…小さじ1 みりん…小さじ1 砂糖…小さじ1 塩…少々

三つ葉 4〜6本

糖尿病診療トレーニング問題集

専門医レベル 阿部 眞理子
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症例 36歳,女性.

主訴 特になし.

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▶症例提示

2型糖尿病,69歳,女性.

 健康診断でHbA1c 7.5%.2004年頃から健康診断の結果(HbA1c 6.4%)で要指導となっていたが放置.徐々に上昇してきたため心配になり2007年,当院受診(HbA1c 7.0%).

 身長154.6cm,体重67.4kg,BMI 28.2kg/m2,食後血糖118mg/dL,HbA1c 7.6%.

 既往歴:高血圧症,脂質異常症,脂肪肝.

 喫煙:なし,飲酒:なし.

 右股関節痛があるため,ほとんど歩かない.外出時の移動は車.

専門医に訊くCommon Disease最新の知識

痛風・高尿酸血症(1) 古川 真
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Question①

痛風・高尿酸血症患者に糖尿病発症は多いのでしょうか?

Answer①

 痛風は2型糖尿病のリスクを上昇させる独立した危険因子であるといわれている1).血清尿酸値が上昇するにつれてメタボリックシンドロームの頻度が高くなるとの報告があり,2型糖尿病の合併頻度が痛風の非合併例に比較して約2倍であった2)

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 今回の論文は,何かと話題の多い,SGLT2阻害薬関連副作用のケトアシドーシスについてです.SGLT2阻害薬は体から糖分を排出させる作用があり,糖質摂取の少ないものでは,ブドウ糖,グリコーゲン貯蓄不足から,脂肪分解が起こり,ケトーシス,ケトアシドーシスを引き起こすのではないかと危惧されていました.一般に,1型糖尿病患者でのレジストリ研究では,糖尿病ケトアシドーシス(DKA)は6,796名で,5%近くの合併症です.DKAは高血糖(250mg/dLより以上),アニオンギャップアシドーシス,血中ケトン増加の3徴と,従来は定義されてきました.

 海外では,カナグリフロジンの処方が多く,17,596例の臨床試験からの報告1)を以下に紹介します.2015年5月11日までのカナグリフロジンを用いたランダム試験17,596症例からのすべての糖尿病ケトアシドーシスと関連イベント(ケトアシドーシス,代謝性アシドーシス,アシドーシス)を分析しています.合計12例の糖尿病ケトアシドーシスが起こっており,カナグリフロジン100mgで4例(0.07%,1,000人年当たり0.522),300mgで6名(0.11%,1,000人年当たり0.763),プラセボ2名(0.03%,1,000人年当たり0.238)であり,今までの2型糖尿病患者での報告と同程度であったと報告しています.

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 そこはハーバード白熱教室さながらの熱気であった.講師も受講生も皆一緒になって議論する.若いナースもいればベテランのドクターもいる.どうやら医療職種だけというわけでもない.日本の大学の一般的な授業風景とは異なる世界がそこにあった.社会人向けの講座であるから,いろいろな人が集まっているのであろうが,年齢も職種も風貌も異なる人々が,何についてこれほど熱い議論を交わしているのだろうか.

 東京大学公共政策大学院の医療政策教育・研究ユニットが社会活動として実施する「医療政策実践コミュニティー」.通称H-PACは,患者支援者,政策立案者,医療提供者,メディアの4つの異なる立場の者から構成される.受講生は常にミックスチームを作って,共に政策提言や事業計画書の成果物を作り上げる.

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 私が管理栄養士として病院に勤務し,糖尿病教室や栄養食事指導を始めたのは1990年頃です.当時の糖尿病教育入院は,40〜50歳代の肥満を伴う糖尿病患者さんが多く,食品交換表の勉強などが組み込まれていました.糖尿病療養指導は,多職種によるチームで行われておらず,栄養・食事指導は食物栄養のみに着目した指導型教育であったように思います.

 しかし時が流れて今,わが国は世界に類を見ないスピードで高齢化が進行し,超高齢社会に突入しました.その中で,医療においては,単に長く生きるのではなく,健康を維持・増進しつつ寿命を延ばす取り組みがなされています.これを実現するために,医療従事者には,指導教育型から脱却し,セルフエフィカシィ(自己効力感)を高める技術が求められます.本書は,そんな社会のニーズに合わせて,糖尿病の基本から,ライフステージごとの生活指導に留まらず,心理面とそのケア,行動変容を促すアプローチなどについても述べられています.また,災害時の対策と対応から服薬アドヒアランス,糖尿病とがんなど,教科書にはみられないコラム記事がとても新鮮です.

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 本書は2015年に京都で開催されたWorld Health Summit(WHS)のRegional Meetingで取り上げられたトピックをそれぞれの専門家が解説したものに加えて,同会議の会長を務められた京都大学医療疫学教授の福原俊一先生による世界のリーダーへのインタビュー記事から成っている.WHSの全体を貫くテーマは「医学アカデミアの社会的責任」とされ,さらにそのキーワードとして医療レジリエンスという言葉が用いられている.

 大変に恥ずかしい話ではあるが,私はこれまでレジリエンス(resilience)という言葉の意味をよく知らなかった.レジリエンスはもともと,物理学の用語で「外力によるゆがみをはね返す力」を意味したが,その後,精神・心理学用語として用いられ,脆弱性(vulnerability)の対極の概念として「(精神的)回復力・抵抗力・復元力」を示す言葉として使われるようになったという.今回,評者がこの書評を依頼された理由を推測するに,評者が最近,超高齢社会における現代医療の限界・脆弱性を指摘していたことにあると思われる.もっともその指摘は身内に脆弱高齢者(frail elderly)を抱えた個人的体験によるもので,アカデミックな考察には程遠いものである.

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糖尿病診療マスター
13巻12号 (2015年12月)
電子版ISSN:1347-8389 印刷版ISSN:1347-8176 医学書院

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