日本内視鏡外科学会雑誌 24巻4号 (2019年7月)

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◆要旨:腎移植後,移植側の鼠径ヘルニアに対して腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術を施行した2例を経験した.症例1は54歳,男性.24歳時に右腸骨窩に腎移植を受けた後に廃絶し,43歳時に左腸骨窩に腎移植を施行された.右鼠径部腫脹を認め,右鼠径ヘルニアと診断し腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術を施行した.症例2は43歳,男性.25歳時に右腸骨窩に腎移植を施行された.右鼠径部腫脹を認め,右鼠径ヘルニアと診断し腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術を施行した.いずれの症例も,移植腎や尿管の損傷なく安全に手術することができた.腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術は腎移植後鼠径ヘルニア修復において有用な術式の1つであると考えられた.

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◆要旨:患者は58歳,男性.心窩部痛を主訴に当院を受診し,胆石性胆囊炎の診断にて腹腔鏡下胆囊摘出術を行うこととした.術前MRCPにて,独立分岐の後区域枝へ胆囊管が合流しており,術中は胆囊漿膜下層内層(SS-I)を意識して剝離を行い,後区域枝を確認した後に胆囊管を処理した.当院では2014年4月から2018年4月までに腹腔鏡下胆囊摘出術を77例施行した.全例にMRCPまたはDIC-CTを施行しており,胆囊管が後区域枝へ合流する症例は本症例のみであった.胆囊管が副肝管へ合流する走行異常は頻度が低く,SS-Iを意識した慎重な手術操作が必要である.また,胆囊頸部周囲の高度炎症が予想される症例では胆管損傷を回避するために,術前画像による胆管走行異常の把握が有用である.

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◆要旨:症候性巨大肝囊胞に対する腹腔鏡下天蓋切除術は囊胞の再被胞化を避けるために十分な開窓が必要で,囊胞壁の広範囲切除が求められるが,切除範囲を広げすぎると囊胞壁内を走行する胆管を損傷するリスクが高まる.インドシアニングリーン(ICG)蛍光法を用いることにより,安全に手術しえた1例を報告する.患者は83歳,男性.右季肋部の膨隆と腹痛を主訴に来院した.有症状の単純性肝囊胞の診断となり,腹腔鏡下天蓋切除術を施行した.術中,切離線に出現した胆管をICG蛍光法で確認しクリッピングした.ICG蛍光法は簡便であり,胆管を正確に同定できることから,腹腔鏡下天蓋切除術において術後胆汁漏を予防する有用な手段と考えられた.

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◆要旨:患者は73歳,男性.右鼠径ヘルニアの手術歴があるが,他に特記すべき既往はなかった.左下腹部の膨隆・違和感を主訴に当院を受診した.腹部CT検査で左腹直筋外縁に小腸の脱出を認め,Spigelヘルニアと診断し,腹腔鏡下腹壁ヘルニア修復術(intraperitoneal onlay mesh : IPOM法)にヘルニア門縫合を加えたIPOM Plus法を施行した.手術は3ポートを留置し,ヘルニア囊周囲の癒着を剝離した.ヘルニア門を計測した後,ヘルニア門を縫合閉鎖した.Ventralight STTMメッシュを挿入し,ダブルクラウン法にて固定した.術後経過は良好で,第7病日に退院となった.Spigelヘルニアは腹壁ヘルニアの約2%と稀な疾患である.腹腔鏡下,特にIPOM Plus法での手術報告は少なく,若干の文献的考察を含めて報告する.

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◆要旨:患者は19歳,女性.自転車走行中に転倒しハンドルで左上腹部を強打した.帰宅後腹痛の増悪があり,救急要請した.来院時理学的所見では臍中心に圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった.腹部単純CT検査でも異常所見を認めず,帰宅のうえ経過観察となったが,受傷翌日に腹痛が増悪し再度当院を受診した.腹部造影CT検査にて腹腔内遊離ガスを認め,外傷性消化管穿孔と診断し,腹腔鏡下手術を施行した.十二指腸上行脚に2cmの穿孔部を認め,完全腹腔鏡下に全層連続縫合閉鎖した.術後経過は良好で,術後第5病日より経口摂取を開始し,第12病日に退院となった.外傷性消化管穿孔に対する完全腹腔鏡下手術は1つの選択肢となりうることが示唆された.

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◆要旨:患者は52歳,女性.腹部膨満感を主訴に近医を受診し,両側卵巣癌疑いで当院を紹介され受診した.消化管を精査したところ,S状結腸に半周性の2型病変を認め,生検より高分化管状腺癌と診断したが,転移性卵巣癌と重複癌(卵巣癌・S状結腸癌)の鑑別を目的に審査腹腔鏡下手術を施行した.腹膜播種病変の生検結果から病変は卵巣原発腺癌由来であると判断したため,重複癌と最終的に診断した.進行度より予後を決めるのは卵巣癌であると考え,術前化学療法を施行のうえ,外科医師と共同で卵巣癌とS状結腸癌の同時根治手術を施行した.卵巣癌に対する術後補助化学療法としてTC+Bev療法を6コース終了し,現在はベバシズマブの維持療法を行っている.

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◆要旨:患者は69歳,女性.悪性リンパ腫の寛解状態にて経過観察されていた.嘔吐,腹部膨満にて受診し,腹部X線およびCTにて胃軸捻転症と診断され内視鏡的整復術を行った.その7か月後,11か月後にも胃軸捻転症を再発し内視鏡的整復術を行った.待機的手術が可能であったため腹腔鏡下胃固定術を行った.捻転解除時の胃の形態や胃軸捻転の先進部を確認し,胃底部横隔膜固定を3針,胃小彎と肝円索を1針固定した.合併症なく第5病日に退院となった.術後4年再発なく経過し栄養状態は安定している.胃軸捻転症に対して腹腔鏡下胃固定術は低侵襲で有効な治療法であり,胃軸捻転の先進部を胃の自然な形態で固定することが重要と考えられた.

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◆要旨:患者は41歳,男性.交通事故で当院へ救急搬送され,右側腹部打撲を認めた.その後徐々に打撲部位に膨隆を認め,CTで同部位に腹壁ヘルニアを認めたため,受傷後約11か月目に手術治療を行った.手術は腹腔鏡下にて腹腔内よりヘルニア門を同定するtransabdominal preperitoneal approach(TAPP法)で行い,形状記憶リングを有したメッシュを用いて修復した.第3病日に経過良好で退院となり,現在再発は認めていない.外傷性腹壁ヘルニアに対する腹腔鏡下手術の報告例は少なく,今回筆者らは腹腔鏡下腹壁ヘルニア修復術を施行し,安全かつ有用であった1例を経験したので報告する.

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◆要旨:患者は65歳,男性.以前より完全内臓逆位を指摘されていた.腹部膨満感,右下腹部圧痛を主訴に当科を受診した.腹部CT検査にて回盲部近傍の回腸に狭窄および口側腸管の著明な拡張を認め,腸閉塞と診断した.イレウス管を挿入し保存的治療を行ったが改善に乏しく手術の方針となった.手術は腹腔鏡下に施行した.下行結腸と後腹膜との固定がされておらず,persistent descending mesocolonと診断した.S状結腸間膜と回腸末端付近の小腸間膜に癒着を認め,癒着により生じた間隙をヘルニア門とし小腸が嵌頓し内ヘルニアをきたしていた.内ヘルニアを解除し,ヘルニア門となった癒着の剝離を行った.現在再発なく経過している.

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◆要旨:鼠径部膀胱ヘルニアに対して,腹腔鏡下ヘルニア修復術(totally extraperitoneal repair:TEP)を施行した5例を経験した.症例はいずれも男性で年齢中央値は68歳であった.全症例において腹部CTで術前診断が可能であった.TEP法にてヘルニアの修復を行い,現在に至るまで再発を認めていない.今回,自験例5例と国内での報告17例を合わせ,鼠径部膀胱ヘルニアの臨床的特徴とTEPの有用性について報告する.

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◆要旨:患者は61歳,男性.健診で異常を指摘され当院を受診し,食道癌,胃癌と診断された.食道切除術の7日前に,胃癌に対し内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)を施行した.食道癌は胸腔鏡腹腔鏡下食道亜全摘術を施行し,後縦隔経路で細径胃管再建とした.術後6日目に胸腔ドレーン排液が増加し,呼吸状態が悪化し再手術を行った.胸腔鏡下に観察すると胃管のESD部に1cm大の穿孔を認めた.胸腔鏡下に穿孔部を閉鎖し,胸腔ドレーンを挿入して手術を終了した.術後は呼吸不全,膿胸が遷延したが術後第42日目に退院となった.食道癌術後の膿胸は重篤な合併症であるが,今回その原因が細径胃管のESD後の遅発性穿孔であった稀な症例を経験した.

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◆要旨:膀胱上窩ヘルニアは日本ヘルニア学会分類Ⅱ-1とされ,頻度は低く確立された術式はない.術前に診断できた症例や,transabdominal preperitoneal repair(TAPP)による膀胱の癒着剝離・修復例も稀である.筆者らは膀胱脱出を伴う外膀胱上窩ヘルニアと術前診断でき,TAPPで修復しえた症例を経験した.患者は73歳の男性で,右鼠径部の膨隆と疼痛を認め,画像検査で膀胱の腹壁外への脱出が疑われた.触診で鼠径管の正中側にヘルニア囊を触れ,外膀胱上窩ヘルニアと診断しTAPPでの治療方針とした.恥骨結節近傍のヘルニア門に膀胱右壁の癒着を認め,膀胱前腔を腹腔鏡下に剝離し,メッシュで修復を行った.TAPPは膀胱背側,恥骨までの剝離が明瞭に行え,膀胱上窩ヘルニアに対し有用であった.

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目次

欧文目次

投稿時のチェックリスト

編集後記 本田 五郎
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 「42歳男性.心窩部痛を主訴に近医を受診.腹部超音波検査で胆囊腫大を認め当院内科を紹介受診.CTにて胆囊と総胆管に結石を認め当科紹介」カルテ上で日常的によく見る文章ですが,本誌に投稿されてくる症例報告論文にもしばしば同様の文体が用いられています.本来,医療記録(カルテ)はきちっとした日本語で記述されるべきですが,医師の過剰労働の問題も相まってか,ある程度端折った簡易的な文体が容認されているのが現状だと思います.しかし,そのような簡易的な文体が医学界の業界用語・業界言葉として医学論文でも通用するということは決してありませんので,本誌に論文を投稿して頂く際には,正しい日本語を使って書いた原稿をお送り頂きたいというのが,私たち編集委員の切なる思いです.内容的には優れた論文でも,日本語の文体に問題がある場合,そのまま採用するわけにはいきません.編集委員は日本語の文体や誤字脱字などの細かなところまでチェックし,訂正の必要な箇所を指摘します.

 本来,こういった学術面以外の問題点は論文を投稿する前に教室や施設の指導者によって適切な指導が行われるべきものです.私の施設では,若手医師が診療情報提供書を作成したら,原則として部長が内容を確認してサインまたは押印します.その際に,内容そのものや誤字脱字のチェックだけでなく,文体や助詞の使い方や「てにをは」をチェックして文章の正しい書き方を指導します.余裕がある時は,手術記録の文章も同様に指導します.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
24巻4号 (2019年7月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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