日本内視鏡外科学会雑誌 24巻1号 (2019年1月)

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◆要旨:高齢者の直腸脱患者に対する腹腔鏡下直腸固定術の安全性について検討した.2014年1月から2015年12月に直腸脱に対し腹腔鏡下直腸固定術を施行した症例を対象に,80歳以上の高齢者群42例と80歳未満の非高齢者群70例に分けて患者背景,手術成績,術後合併症,術後再発,排便機能を比較検討した.術前アルブミン,ヘモグロビン,PNIは高齢者群で低く,ASA2以上,併存疾患,呼吸機能低下は高齢者群で多かった.術後合併症や再発の頻度は両群間に有意差を認めなかった.高齢者群では術後に漏出性便失禁は改善がみられたが,切迫性便失禁と便秘は術前と変わらなかった.80歳以上の高齢者でも全身麻酔が可能な症例では腹腔鏡下直腸固定術は安全で根治性の高い術式と考えられた.

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◆要旨:婦人科手術においては,超音波吸引装置(以下,CUSA)は多くの開腹手術で使用されているものの,腹腔鏡下手術では,筆者らの検索しえた範囲では1件の報告があるのみであった.近年,腹腔鏡用CUSAが開発され,5mm径のものが開発され使いやすくなった.筆者らは子宮頸癌に対する腹腔鏡下広汎子宮全摘術を26例行い,そのうち13例にCUSAを使用した.CUSAを用いた症例(CUSA群;n=13)とCUSAを用いなかった症例(非CUSA群;n=13)とを後方視的に比較した.CUSA群は非CUSA群に比べて有意に出血量(p=0.010)や手術時間(p=0.001)を減少させ,また新たに有害事象を生じることはなかった.今後症例を積み重ねて婦人科腹腔鏡下手術におけるCUSAの有用性について前方視的に検討する予定である.

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◆要旨:【背景】当科では急性胆囊炎症例に対して,卒後3〜6年目のレジデントが腹腔鏡下胆囊摘出術(LC)の執刀を行い,高難度例では術者交代を考慮し,安全性を担保する.【目的・方法】当科で2013〜2015年にLCを施行された急性胆囊炎149例を対象に,レジデント完遂例と,術者交代例の2群で患者背景を比較し,難易度規定因子を検討する.【結果】完遂例は94例,交代例は55例であった.年齢(完遂例:交代例=61.1:71.9歳,p<0.01),CRP値(5.8:12.5mg/dl,p<0.01),胆囊短径(36.3:39.7mm,p<0.01),ショックバイタル患者数(0/94:6/55人,p<0.01)が交代例で高値であった.多変量解析を行うと,年齢,CRP値,ショックバイタルが術者交代のリスクであった(p<0.01).【結語】急性胆囊炎に対するLCの難易度を術前スクリーニングできる可能性がある.

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◆要旨:患者は76歳の男性.当院に白内障手術目的の入院中に発熱を認めた.血液検査で肝・胆道系酵素値が上昇し,腹部CT検査で胆道気腫と総胆管結石を認めた.また十二指腸と胆囊頸部に連続性を認めたため胆囊十二指腸瘻の存在が疑われた.上部消化管内視鏡および造影検査で十二指腸に約5mm大の瘻孔を認め胆囊十二指腸瘻と診断した.総胆管結石症に対して内視鏡的逆行性胆管膵管造影(以下,ERCP)で除去後,胆囊十二指腸瘻に対して腹腔鏡下に瘻孔切除と胆囊摘出術を施行した.胆囊十二指腸瘻は,術前診断ができて瘻孔周囲の炎症が軽度であれば,低侵襲手術としての腹腔鏡下手術が有用であると思われた.

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◆要旨:今回筆者らはS状結腸癌に対して腹腔鏡補助下S状結腸切除術を行い,吻合部肛門側腸管の虚血による縫合不全を認めた症例を経験したので報告する.患者は慢性腎不全で維持透析中の70歳男性.S状結腸癌に対して腹腔鏡補助下S状結腸切除術,D2郭清を施行した.術後1日目の透析中に頻脈,悪寒戦慄,腹痛が出現したため縫合不全を疑い臨時手術の方針となり,術中所見において下腸間膜動脈の閉塞と吻合部肛門側腸管の虚血壊死を認め,Hartmann手術を施行した.動脈硬化性病変を有する症例でのSD junction近傍の病変に対する手術の際には,直腸S状結腸移行部での辺縁動脈の吻合の欠損の可能性を考慮した血管処理術式であっても肛門側腸管の血流不全発症の可能性があり,それも見据えた手術計画を要すると考えられた.

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◆要旨:潰瘍性大腸炎に対する結腸全摘術後の残存直腸炎に対して,経肛門内視鏡アプローチ単独で残存直腸切除術を行った症例を経験したので報告する.患者は52歳,女性.37歳時に結腸全摘術,回腸人工肛門造設術を施行されたが,残存直腸の炎症が持続し保存的治療で改善しなかったため,残存直腸切除を行う方針とした.骨盤腔内を子宮が占拠していたため,経肛門内視鏡アプローチ単独でも腹腔内の腸管損傷をきたすことなく安全に残存直腸を切除することが可能であった.腹腔操作を伴わない本術式は術後の早期回復にも寄与し,有用な選択肢の1つであると考えられた.

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◆要旨:患者は初産婦の27歳の女性で,妊娠34週4日目に右季肋部痛を認めた.強い持続痛が改善せず,胆囊炎と診断し,腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.合併症なく終え,母子ともに問題なく経過している.妊娠後期では子宮底がせり上がるため,子宮損傷を防ぐには,術前に超音波で子宮底を確認すること,上腹部に1stポートを開腹法で挿入することや5mmの軟性鏡を使用することが肝要である.また子宮底のせり上がりによって横隔膜が挙上し,挿管チューブが予想より深く入り,換気困難になることがあり,注意が必要である.本邦で妊娠後期に腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した報告は少なく,本症例は各種工夫により安全に手術を施行できた.

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◆要旨:患者は58歳,女性.4年前に胃体中部大彎の早期胃癌に対してESDを施行した際,穿孔をきたした.保存的治療にて軽快したが,病理検査にて水平断端陽性であり,穿孔から2か月後に腹腔鏡補助下幽門保存胃切除術を施行した.病理組織検査では,M,Gre,0-Ⅱa,tub1,pT1a,ly0,v0,pN0,pPM0,pDM0,StageIAであった.胃切除から4年後に右下腹部のポート挿入部に腫瘤を認め,デスモイド腫瘍を疑い腫瘍摘出術を施行したが,病理にて先の胃癌と同様の組織と診断され,ポート再発と診断した.術後化学療法を施行したが,約4か月後にCT検査にて多発する腹膜播種を認め,再発後2年1か月で死亡した.

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◆要旨:審査腹腔鏡により早期の治療介入が可能であった結核性腹膜炎の1例を経験した.患者は74歳,女性.主訴は発熱.CTにて右肺尖に浸潤影,腹水,腹膜肥厚を認めた.T-SPOT.TB検査が陽性であり結核性腹膜炎を合併した肺結核症が疑われた.しかし喀痰・腹水ともに結核菌は検出されなかったため,審査腹腔鏡を施行した.腹膜にびまん性に白色結節を認め,同部位の病理組織学的検査でLanghans巨細胞を伴う類上皮性肉芽腫を認めた.このため,結核性腹膜炎と診断し,抗結核療法を開始した.結核性腹膜炎では腹水中の結核菌の証明は困難であり,審査腹腔鏡は早期診断,治療介入に非常に有用と考えられた.

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◆要旨:噴門直下の胃粘膜下腫瘍に対するEndo GIATM Tri-StapleTM Radial Reload(以下,RR)を使用した単孔式腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除(laparoscopy endoscopy cooperative surgery:以下,LECS)の手技について報告する.単孔式LECSで臍の創から挿入したlinear staplerで噴門近傍の腫瘍切除部位の閉鎖をすると,短軸方向での閉鎖が比較的難しく噴門狭窄の心配がある.RRを使用することで短軸方向での閉鎖が容易となり,狭窄のリスクを低減できる.またRRの挿入も単孔式アプローチでは容易であり,有用な選択肢のひとつと考えられた.

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◆要旨:患者は52歳,女性.S状結腸癌に対し腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.術後1年9か月で右肺S10に転移を認め,胸腔鏡下右肺部分切除術を施行した.肺切除4年後に,CTで気管分岐部リンパ節の腫脹を認めた.生検で腺癌の転移と診断した.PETにて同部位以外に集積を認めなかったため,手術の方針とした.手術は腹臥位胸腔鏡下腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は気管分岐下に認め,周囲への浸潤を認めなかった.迷走神経の肺枝1本のみ切離し腫瘍を摘出した.経過良好で術後3日目に退院した.病理学的所見にてS状結腸癌の転移と診断された.中・下縦隔腫瘍に対して腹臥位胸腔鏡下手術は左側臥位と比較して術野展開が良く,手術操作性も良好であるため手術法の選択肢の1つと考えられた.

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◆要旨:患者は30代,女性.妊娠7週目に心窩部痛を認め,急性胆管炎の診断で緊急入院となり,内視鏡的胆道ステント留置術を施行後,軽快退院となったが,妊娠14週目に胆管炎が再燃した.保存的に軽快したが妊娠20週目に胆石発作にて3度目の入院となった.胆石発作,胆管炎を頻回に繰り返しており,今後の胎児への影響を考慮し内視鏡的総胆管結石砕石術を施行後,妊娠21週目に腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.経過は良好で胎児への影響もなく,術後5日目に軽快退院となり,妊娠39週目に健児を出産した.妊娠中期における胆石・総胆管結石に対して内視鏡的,外科的処置を安全に施行することができた.

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◆要旨:直腸切除術において,double stapling technique (DST)は標準的な吻合法として確立されている.しかし肛門から直腸断端までの距離が長い場合にはしばしば自動吻合器の挿入が困難な症例を経験することがある.通常のDST吻合ができなくても開腹術であれば手縫い吻合などに変更することは可能であるが,腹腔鏡下手術の場合,特に腹壁が分厚い肥満患者では小開腹創での体腔外吻合は容易ではない.体腔外で吻合を行うためにS状結腸や直腸を十分に小開腹創から体腔外へ引き出すことができなければ,下行結腸や脾曲の授動を要したり小開腹創を拡げたりしなければならない場合がある.筆者らはHartmann手術後の腹腔鏡下人工肛門閉鎖術において,OrVilTMを用いてアンビルを肛門から入れる方法で腹腔鏡下に側端にDST吻合を行った腹腔鏡下人工肛門閉鎖術の2例を経験した.この方法は腹腔鏡下の直腸やS状結腸切除術後の再建において,残存直腸が長いなどの理由で肛門から自動吻合器の挿入が困難で,かつ小開腹創での体腔外吻合が困難な場合には有用な吻合法である.

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目次

欧文目次

お詫びと訂正

投稿時のチェックリスト

編集後記 寺尾 泰久
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 世界中の婦人科腫瘍専門医が注目していたLACC trialの結果が2018年11月にMinimally Invasive versus Abdominal Radical Hysterectomy for Cervical Cancer. N Engl J Med 379(20):1895-1904, 2018に掲載された.タイムリーに本誌の文献抄録に紹介したかったが,10月が締め切りであったため間に合わなかった.これは子宮頸癌に対する低侵襲広汎子宮全摘出術(腹腔鏡,ロボット)の予後,合併症,QOLなどを,それまでの標準術式である開腹広汎子宮全摘出術と比較したランダム化試験である.子宮頸癌に対する低侵襲広汎子宮全摘出術が,従来の開腹術に比べ再発・死亡のリスクを上げるという結果であった.日本はこの試験に参加していなかった.予後が悪かった原因として,腟カフの作製の有無や術者や施設の違いもあるのかもしれないが,今後の日本の子宮頸癌に対する広汎子宮全摘出術を考えさせられる試験となった.しかし,日本は放射線治療ではなく手術にこだわってきた歴史もあり,広汎子宮全摘出術の術式は諸外国と異なり,radicalityも高い.今回の結果は非常に重要ではあるが,日本からの情報発信を続ける必要がある.

 2年前に日本内視鏡外科学会雑誌の編集委員にさせていただいた.2か月に1回医学書院に編集委員全員が集まって編集会議を開催していた.審査論文は紙ベースであったものが,PDFファイルとなり,遠方の先生方はテレビ会議で参加と変化した.また,本号から完全オンライン化され,全論文カラーで掲載されることになった.雑誌が送られてくるとパラパラ眺め,気になった論文はその場で読むようにしていたので,冊子としての形態がなくなってしまうのは寂しさもある.しかし,コスト削減,事務局の業務軽減,保管スペースの確保などからもよい点が多い.今後は電子版になりますが,皆様により一層有意義な内容を届けられるように努力してまいります.そのためにも多くの論文投稿をお願い申し上げます.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
24巻1号 (2019年1月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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