日本内視鏡外科学会雑誌 23巻6号 (2018年11月)

内視鏡外科手術に関するアンケート調査—第14回集計結果報告— 14th Nationwide Survey of Endoscopic Surgery in Japan

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 日本内視鏡外科学会ならびに日本産科婦人科内視鏡学会,日本泌尿器科学会の会員を対象に,内視鏡外科手術に関する第14回アンケート調査(2016年,2017年)を行った.

 日本内視鏡外科学会については最新の個人会員名簿に基づき重複,漏れのないように抽出した2,498施設,日本泌尿器科学会については拠点教育施設792施設,合わせて3,290施設にアンケートを送付した.尚,産婦人科領域では,2004年より日本産科婦人科内視鏡学会主導で日本内視鏡外科学会のアンケートフォームに準拠したアンケート調査が実施されており,同学会の2016年,2017年の調査結果と今回の第14回調査結果を合わせて示した.総回答数は1,336の施設ないし診療科より得られ,回答率は40.6%であった.

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 表1,図1に領域別,年度別の内視鏡外科手術総症例数を示した.全ての領域を合わせた症例数は2017年の1年間で248,743例であり,1990年から2017年末までに合計2,526,550例に内視鏡外科手術が施行された.

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1腹部外科領域の疾患別症例数の推移について

 表2,図2に腹部外科領域の疾患別症例数の推移を示した.腹部外科領域では2017年の1年間に100,529例,1990年から2017年末までに総数で1,224,252例の内視鏡外科手術が施行されていた.

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7食道疾患に対する内視鏡下手術について

1.術式別症例数

 1990年より食道疾患に対する内視鏡下手術が開始され,2017年12月31日までの総手術件数は27,677例であった.年度別,術式別の症例数は表30,図15のごとくであった.

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13肝疾患に対する内視鏡下手術について

1.対象疾患別症例数

 1990年より2017年12月31日までの総症例数は,20,378例であった.そのうち肝細胞癌が11,012例(54%)と最も多く,次いで転移性腫瘍が5,495例(27%),肝囊胞が2,284例(11%)であった.年度別,対象疾患別の症例数は表61,図22のごとくであった.

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1.術式別症例数

 2017年12月31日までの総手術件数は,1,981例であった.スリーブ状胃切除術が1,191例(60%)と最も多く,次いでスリーブバイパス術が269例(14%),胃バイパス術が236例(12%)であった.年度別,術式別の症例数は表77,図26のごとくであった.またロボット支援手術は表78のごとく15例に行われた.

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1腹腔鏡下手術

1.術式別症例数

 1990年より2017年12月31日までの総手術件数は,54,734例であった.鼠径ヘルニア手術が23,320例(43%)と最も多く,次いで虫垂切除術が14,122例(26%)であった.年度別,術式別の症例数ならびに新生児に対する手術症例数は表81,図27のごとくであった.

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1完全胸腔鏡下手術および胸腔鏡補助下手術について

 各施設で行っている胸腔鏡下手術について,完全胸腔鏡下手術であるか胸腔鏡補助下手術であるかについて問うたところ191施設から回答があり(複数回答あり),主要な操作をモニター下に行う完全胸腔鏡下手術である施設が137施設(54%),主要な操作を直視下に行う胸腔鏡補助下手術である施設が44施設(17%),両者の混合,またはハイブリッド手術である施設が68施設(27%)で,ロボット支援手術が7施設(3%)であった(図29).

 尚,ロボット支援手術は2016年,2017年で5,252例に行われた(表88).

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1総論

1.Port site recurrenceの経験について

 2016年,2017年では,葉状腫瘍,乳癌乳房内再発,乳癌腋窩リンパ節転移でそれぞれ1例ずつ報告があった.再発に対する治療は1例に再発腫瘍切除が行われ,2例に再発腫瘍切除と化学療法が行われた.

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1心疾患に対する内視鏡下手術について

1.術式別症例数

 2017年12月31日までの総手術件数は1,449例であった.年度別,術式別の症例数は表108のごとくであった.

 尚,2016年,2017年の手術において,術中に胸骨正中切開アプローチの直視下手術へ移行した症例が2例あり,その理由は出血によるものであった.

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 日本産科婦人科内視鏡学会においては2004年より1年区切りで日本内視鏡外科学会のアンケートフォームに準拠したアンケート調査が実施されており,同学会の2016年(回答施設数440施設),2017年(同472施設)の調査結果と今回集計された日本内視鏡外科学会の調査結果(同67施設,2016〜2017年)を合算して以下に示した.

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1総論

1.気腹法,腹壁吊り上げ法の選択について

 273施設よりの回答があり,全て気腹下に行う施設が271施設(99%),全て腹壁吊り上げ法下に行う施設と症例により選択する施設がそれぞれ1施設(0.4%)であった(図40).

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1脊椎内視鏡下手術について

1.術式別症例数

 2008年から2017年12月31日までの総手術件数は14,614例で,年度別,術式別症例数は表144のごとくであった.

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1顔面領域の内視鏡下手術について

 1994年から2017年12月31日までの総手術件数は1,544例であった.年度別,術式別症例数は表148のごとくであった.

回答施設名一覧
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日本内視鏡外科学会

理 事 長 渡邊 昌彦

学術委員会

(委員長) 猪股 雅史

(副委員長 産婦人科) 明樂 重夫

(腹部外科) 橋爪  誠

 山口 茂樹

 江口  晋

 和田 則仁

 白下 英史

 内田 博喜

(肥満外科) 瀧口 修司

(小児外科) 家入 里志

(呼吸器外科) 遠藤 俊輔

 岩﨑 正之

(乳腺・甲状腺外科) 玉木 康博

(心臓血管外科) 田端  実

(泌尿器科) 金山 博臣

 三股 浩光

(整形外科) 長谷川 徹

(形成外科) 大西  清

(アドバイザー) 松本 純夫

今回のアンケート調査にあたっては,以下の施設にご協力をいただきました.

ご協力誠にありがとうございました.

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◆要旨:胸腔鏡下に摘出した遺伝性球状赤血球症による胸腔内髄外造血巣を経験したので報告する.症例は既往歴のない54歳,男性.健診で胸部異常影を指摘され,精査で後縦隔腫瘍と診断された.2年間で軽度増大傾向を認め,その頭側に娘結節の出現を認めたため切除の方針となり,胸腔鏡下に腫瘍を摘出し,病理で髄外造血巣と診断された.髄外造血巣は貧血を背景に発生することが多く,血液疾患の合併が疑われた.術後に精査し,遺伝性球状赤血球症と診断した.胸腔内髄外造血巣は稀な疾患ではあるが,後縦隔腫瘍の鑑別疾患として考慮されうるものである.切除後に髄外造血巣の診断が得られた場合には,背景に血液疾患を疑い精査する必要がある.

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◆要旨:症候性胆石症の妊婦に施行される腹腔鏡下胆囊摘出術(laparoscopic cholecystectomy:以下,LC)は妊娠28週未満で行われることが多い.今回,筆者らは妊娠36週の妊婦に対するLCを安全に施行しえたので報告する.症例は26歳,初産婦.妊娠30週に心窩部痛が出現し,胆囊結石症の診断で保存的加療を開始した.症状の改善を認めたが,妊娠32週に症状が再燃したため再入院し,以後,食事摂取のたびに胆石発作を繰り返すため,妊娠36週でLCを施行した.術中気腹圧は7mmHgとし,妊娠子宮は胆囊摘出操作の妨げにならず,良好な視野が確保できた.術後経過は良好で,合併症なく妊娠40週で健康な男児を出産した.

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◆要旨:患者は62歳,女性.以前から完全内臓逆位と診断されていた.嚥下障害を主訴に精査を行い,胸部食道癌,cT3, cN0, cM0, cStageⅡ(食道癌取扱い規約第11版)と診断された.術前化学療法施行後に胸腔鏡下食道切除術と胃管再建術を施行した.事前に動画反転ソフトを用いて正常解剖の手術動画を左右反転することで完全内臓逆位患者に対する胸腔鏡下手術イメージを得たうえで手術に臨んだ.術中偶発症はなく,術後左気胸を発症したがドレナージで軽快し,術後17日目に退院した.完全内臓逆位患者に対する胸腔鏡下食道切除術は,左右鏡面像となる解剖学的位置を事前に十分に把握していれば安全に施行できる術式と考えられた.

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◆要旨:患者は60代の男性.有鉤義歯の誤飲に対し前医で内視鏡的摘出を試みたが摘出できず,CTで縦隔気腫も認め当院救急搬送となった.当院でも同様に内視鏡的摘出を試みたが困難であった.食道穿孔・裂創部に対してはクリップ縫縮やPGAフェルト被覆を行い,保存的に経過をみることとした.今後の栄養管理と有鉤義歯摘出を目的に,腹腔鏡補助下胃瘻造設術と経胃瘻的内視鏡操作による有鉤義歯摘出を行った.術後経過は良好で,術後2週目に飲水・食事を開始し,術後3週目に転院となった.経胃瘻的内視鏡操作による有鉤義歯摘出は,安全かつ比較的低侵襲な手術であり,食道穿孔をきたした義歯摘出困難例に対して有用な方法であった.

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◆要旨:患者は76歳女性で左鼠径ヘルニア再発に対して9年前にbilayer patch法による修復が行われた.2年前から術創より膿汁排出を認め,皮膚瘻形成を伴う再発左鼠径ヘルニア術後遅発性メッシュ感染と診断した.腸管との交通や腹腔内臓器損傷の可能性を考え,臍部にポートを挿入し,腹腔鏡観察下に前方アプローチでメッシュ除去を行った(ideal-Hybrid法).ヘルニアはMcVay法に準じた修復を行った.合併症なく退院し,現在術後2年経過しているが再発を認めない.遅発性メッシュ感染に対してideal-Hybrid法が行われた報告は自験例のみである.特にanterior space,posterior spaceの両者にメッシュが留置されている場合,腹腔鏡観察が解剖把握の補助となり,その結果合併症率を減少させることができると考えられた.

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◆要旨:患者は63歳,女性.内科的治療に抵抗性の慢性便秘を主訴に当科外来へ紹介となった.排便造影検査にて直腸間膜癒合不全,S状結腸過長症,また怒責時の直腸重積を認めた.症状改善のためには外科的治療が必要と判断し,十分なインフォームドコンセントのうえで腹腔鏡下Frykman-Goldberg手術を施行した.良性疾患かつ創部痛軽減を目的として経肛門的に標本摘出を施行した.現在術後11か月が経過しているが,緩下剤の内服をせず排便は良好であり,また排便造影検査では吻合部の直腸は仙骨に固定され,怒責時の重積を認めていない.内科的治療に抵抗する慢性便秘症例に対しては,原因を同定し外科的治療を行うことで,症状を改善する可能性があると考えられる.

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◆要旨:バリウム腹膜炎は消化管造影検査に伴う稀ではあるが重篤な合併症であり,腹腔内のバリウムの残存により炎症の遷延や強固な癒着をきたすとされている.今回筆者らはバリウムによる汎発性腹膜炎に対して穿孔部を含む直腸切除,腹腔ドレナージと結腸単孔式人工肛門造設術を行い救命した後に,人工肛門閉鎖を目的に腹腔鏡下に結腸直腸吻合再建術を安全に施行しえた症例を経験したので報告する.患者は59歳,男性.バリウムを用いた上部消化管造影検査を施行した3日目に突発する下腹部痛が出現し当院へ搬送された.敗血症性ショックや播種性血管内凝固症候群(DIC)を伴う消化管穿孔,汎発性腹膜炎と診断し,緊急開腹術を施行した.直腸S状部に穿孔を認め,穿孔部を含む直腸切除,腹腔ドレナージ術と結腸単孔式人工肛門造設術を施行した.術後炎症反応が遷延したがDICからも回復し術後42日目に一時退院することができた.初回手術後の96日目に人工肛門閉鎖を目的に腹腔鏡下に結腸直腸吻合再建術を施行した.バリウム腹膜炎による高度の炎症性癒着を認めたが,腹腔鏡による拡大視効果を活かした正確な癒着剝離により安全に結腸直腸吻合再建術を施行可能であった.高度癒着が予測される汎発性腹膜炎手術後の二期手術でも腹腔鏡下手術は治療法の選択肢の1つになりうると考えられる.

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◆要旨:患者は86歳,女性.右下腹部の違和感と嘔吐で受診した.CTで右閉鎖孔ヘルニアによる腸閉塞と診断し,緊急腹腔鏡下修復術を施行した.既往として6年前に右鼠径ヘルニア術後であったため,子宮および卵管をヘルニア門に縫着した.しかし,その7か月後に再発し,再度緊急腹腔鏡下修復術を施行した.縫着した子宮・卵管はすべて外れており,Richter型の腸管嵌頓を認めた.腸管壊死はなく,mesh sheetを用いて修復した.閉鎖孔ヘルニアに対する腹腔鏡下手術は低侵襲で嵌頓腸管を観察可能な点で有用である.修復方法は再発の点からmesh sheetを用いた修復術を第一選択とする必要がある.

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日本内視鏡外科学会への入会について

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編集後記 竹政 伊知朗
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 本誌は広く内視鏡外科領域を対象としているため投稿論文もバラエティに富み,2か月毎の編集会議で各領域の編集委員の先生方と討論することは,私にとってまたとない貴重な経験となっています.本誌編集会議は,基本的に東京都文京区の医学書院会議室で開催されていますが,編集委員の移動にかかる時間と金銭的な負担に配慮がなされ,今年からweb会議が導入されました.このweb会議は映像,音声ともになかなか優れていて,これまでいつもの会議室で顔をつきあわせて討論していましたが,遠く千数百km離れた場所にいる先生方と教室のパソコン画面を通して討論するようになりました.もちろん討論の内容はこれまで通り充実しており,論文によっては複数の編集委員の意見で討論が白熱することもしばしばです.web会議だけでなく,「人口減少」,「医師偏在」,「クラウドデータ構築」,「ロボット手術の保険収載」など今の日本の医療環境を考えると「遠隔操作」の重要性がいよいよ増してきたように思います.

 第23巻第6号は,特集として『内視鏡外科手術に関するアンケート調査-第14回集計結果報告-』と症例報告 8編の論文が掲載され,とても興味深い内容となっていますので是非ご一読ください.

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
23巻6号 (2018年11月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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