日本内視鏡外科学会雑誌 24巻2号 (2019年3月)

  • 文献概要を表示

◆要旨:Upside-down stomachを呈する食道裂孔ヘルニアを合併した胃癌に対し腹腔鏡下手術を行った症例の報告は少ない.患者は82歳,女性.繰り返す嘔吐による誤嚥性肺炎で入院中に上部消化管内視鏡検査にて胃癌を疑われ当科に紹介となった.上部消化管内視鏡検査では,胃の変形は非常に高度であり,噴門部に2型腫瘍を認めた.上部消化管造影検査では,胃軸捻転を伴った滑脱型食道裂孔ヘルニアによりupside-down stomachを呈していた.患者のADL,全身状態などから縮小手術の方針とし,腹腔鏡下噴門側胃切除術,食道裂孔縫縮術を施行した.術後の経過では嘔気,嘔吐などの症状の出現はなく経過し,術後16日目に転院となった.低侵襲な手術を行うことが可能であり,良好な結果を得られた.

  • 文献概要を表示

◆要旨:患者は31歳の女性で,健診時の腹部超音波検査で腹部腫瘤を指摘され,精査目的で当院に紹介となった.腹部CTで腹腔動脈幹右側に46mm大の境界明瞭な腫瘤を認め,超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)で神経鞘腫と診断された.手術は整容性にも配慮して細径鉗子を用い,腹腔鏡下腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は腹腔動脈幹周囲の神経叢と連続性を認めたため,同神経叢由来の神経鞘腫と考えられた.極めて稀な腹腔神経叢由来神経鞘腫に対する腹腔鏡下手術は安全で有用と考えられた.

  • 文献概要を表示

◆要旨:胃管気管瘻孔は食道癌術後の稀な合併症である.その要因は多岐にわたり,その治療法も非常に複雑かつ困難である.これまで,胸腔鏡下食道亜全摘出術後に胃管気管瘻をきたし,胸腔鏡下に治療しえた症例を2例経験した.両症例とも,瘻孔形成の原因が胃管側にあり,また気管膜様部側の瘻孔の径は5mm程度と小さく周囲組織の脆弱性も認めなかった.気管側の瘻孔部は単純閉鎖を行ったのち,1例は自己心膜を,もう1例は胃管の大網をパッチとして固定した.両症例とも術後経過は良好であった.胸腔鏡下気管瘻閉鎖術は初回手術が胸腔鏡下手術であること,また気管側の瘻孔の径が小さく,かつ単純閉鎖が可能であることが重要であると考えられた.

  • 文献概要を表示

◆要旨:症例1:79歳,男性.スクリーニングの上部消化管内視鏡で十二指腸に10mm大の0-IIa病変を認め,十二指腸癌の診断で腹腔鏡補助下内視鏡的粘膜剝離術(laparoscopy-assisted endoscopic submucosal dissection :以下,LA-ESD)を行った.症例2:62歳,男性.健診の上部消化管造影検査で胃腫瘍を認め,精査の上部消化管内視鏡で十二指腸下行脚外側に5mm大の0-IIa+IIc病変を認め,悪性を否定できずLA-ESDを行った.2症例とも病理所見では十二指腸癌(tub1・pT1a)であった.早期十二指腸癌に対して安全にLA-ESDを施行しえた2症例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

◆要旨:患者は66歳,男性.腹痛を主訴に救急搬送となった.腹部は硬く,反跳痛を認め,腹部CT検査で限局性の小腸の拡張,腹水を認めた.食事歴から小腸アニサキス症を疑いつつも,腹部所見,CT所見から絞扼性腸閉塞との鑑別が困難であり,単孔式審査腹腔鏡を施行した.手術所見では漿液性腹水,小腸の限局した拡張を認めたが,血流異常や捻転は認めず,小腸アニサキス症を疑い観察のみで手術を終了した.術後経過は良好で,腹部所見はすみやかに改善した.抗アニサキス抗体の上昇を認め,小腸アニサキス症と診断した.小腸アニサキス症は急性腹症の鑑別診断として重要であり,治療・診断には単孔式審査腹腔鏡は有用な選択肢と考えられた.

  • 文献概要を表示

◆要旨:患者は90歳の女性で,虫垂切除術,高血圧,糖尿病,胆囊総胆管結石内視鏡的治療の既往があった.虚血性腸炎の治療のため当院内科に入院中,胆汁性嘔吐で発症した.腹部CTで小腸closed loopを認め絞扼性腸閉塞と診断され外科紹介となり緊急手術を行った.腹腔鏡下に癒着を剝離したところ,横行結腸間膜の約3cm大の裂孔に空腸が嵌入していた.鉗子にて還納した腸管は壊死に至っていなかったため,腸管切除は行わず,腹腔鏡下に裂孔を連続縫合し閉鎖した.経過は順調で術後10日目に退院した.横行結腸間膜裂孔ヘルニアは内ヘルニアの中でも非常に稀であり,早期に診断すれば腹腔鏡下手術が有用な疾患と考えられたので報告する.

  • 文献概要を表示

◆要旨:腹腔鏡補助下胃切除術(以下,LADG)では肝臓圧排鉗子を用いて肝外側区域を挙上し術野を展開することが必須である.これまで圧排操作による術後肝機能障害が指摘されてきたが,肝梗塞にまで至った症例は非常に稀である.今回,肝圧排操作により術後肝梗塞を引き起こした症例を経験したので報告する.患者は75歳,女性.早期胃癌の診断でLADGを行った.術後1日目にAST 2,882IU/lと著明に上昇し,CTではA2,A3根部から血流が途絶し,S2,S3領域が肝梗塞となっていた.肝壊死から膿瘍化には至らず保存的加療で術後15日目に退院した.術後60日目のCTでは同部位の肝萎縮を認めた.不適切な挙上は肝梗塞にまで進展しうる場合があり,注意と工夫が必要である.

  • 文献概要を表示

◆要旨:稀な疾患である肺分画症の外科治療の基本は病巣の切除と異常動脈の切離であるが,肺葉内肺分画症では分画肺と正常肺との境界が炎症性変化の影響で不明瞭となり分画肺の領域が同定できない症例がある.今回,赤外光胸腔鏡によるインドシアニングリーン蛍光ナビゲーションで正常肺と分画肺の領域を同定し,胸腔鏡下分画肺切除術を施行した.インドシアニングリーン蛍光ナビゲーションを用いた完全胸腔鏡下肺内分画症の手術は本邦初の報告となる.

  • 文献概要を表示

◆要旨:患者は71歳,男性.69歳時にS状結腸癌の穿孔による汎発性腹膜炎に対してHartmann手術を受け,S状結腸人工肛門を造設された.正中創部と人工肛門周囲の膨隆を主訴に来院し,腹部CTで傍ストーマヘルニアと腹部正中切開部の腹壁瘢痕ヘルニアと診断された.後日入院し手術を行った.腹腔鏡下に1枚のメッシュにて両ヘルニアに対しKeyhole法を行い,傍ストーマヘルニアにSugarbaker法を加えたSandwich法にて同時に修復した.術後正中創周囲の発赤,疼痛が出現したが軽快し11日目に退院した.術後14か月経過したが再発を認めていない.

  • 文献概要を表示

◆要旨:患者は69歳,男性.左鼠径部痛を主訴に近医を受診し,左鼠径ヘルニア嵌頓の診断で当科へ紹介となった.腹部単純CT画像にて左鼠径ヘルニア嵌頓によるS状結腸穿孔を認めた.ヘルニア内容物を腹腔内に還納し,ヘルニア囊は高位結紮を行ったうえで双孔式人工肛門造設を施行した.術後経過は良好で術後第19病日に退院となった.人工肛門閉鎖を行ったのち術後7か月経過した段階で腹腔鏡下ヘルニア修復術(totally extraperitoneal repair;以下,TEP法)を行った.以後再発なく経過している.鼠径ヘルニア嵌頓による器質性疾患のないS状結腸穿孔は比較的稀で,人工肛門閉鎖を経てTEP法で修復した例は少ない.その有効性,安全性について若干の文献的考察を加えて考察する.

  • 文献概要を表示

◆要旨:Sandifer症候群は,胃食道逆流症と姿勢異常を特徴とする稀な症候群である.今回筆者らは斜頸を呈したSandifer症候群の2例に対して,腹腔鏡下噴門形成術による外科的治療を行ったため報告する.1例目は5歳男児で,斜頸とともに嘔吐を合併していたため胃食道逆流症の早期診断が可能であった.一方,2例目の7歳女児は,主訴が斜頸のみであったため,診断まで約5年を要した.2例とも胃酸分泌抑制薬・消化管運動機能改善薬による保存的治療では症状が改善せず,腹腔鏡下噴門形成術(Toupet法)を施行した.1例目は術後速やかに嘔吐・斜頸は改善した.2例目は頸椎の二次性骨変化を伴っていたため,斜頸の改善に時間を要している.

  • 文献概要を表示

◆要旨:患者は70歳,女性.右側腹部痛と嘔吐を主訴に当院を受診した.胸腹部造影CTにて右横隔膜ヘルニアによる腸閉塞の診断となり,腹腔鏡下修復術を施行した.回腸末端から上行結腸,肝右葉,大網が右胸腔内に脱出しており,これらを還納したところ,右横隔膜の背外側に6×5cm大のヘルニア門を認めたため,右側Bochdalek孔ヘルニアと診断した.横隔膜欠損部は直接縫合閉鎖にて修復した.術後経過は良好であった.近年,成人左側Bochdalek孔ヘルニアに対する完全内視鏡下手術は複数報告されているが,成人右側Bochdalek孔ヘルニアでは,自験例が本邦において初めてであるため,文献的考察を加えて報告する.

  • 文献概要を表示

◆要旨:【目的】7例の管内発育型GISTに対して,double protector法を用いた単孔式胃内手術を施行し,成績を検討した.【方法】上腹部正中切開をおき,LapShield®60を挿入し,胃を創直下に誘導する.胃前壁に切開をおき,LapShield®60を二重に使用し,胃瘻を作製した後,自動縫合器を用い胃内腔から腫瘍を切除し,胃前壁を手縫いで縫合閉鎖した.【結果】手術時間中央値は69分であった.術式の変更は認めなかった.術後合併症は1例も認めなった.全例切除断端陰性で,偽被膜損傷も認めなかった.術後在院日数の中央値は8日であった.【結論】double protector法を用いた単孔式胃内手術は,安全かつ簡便に施行可能であった.

--------------------

目次

欧文目次

投稿時のチェックリスト

編集後記 内藤 剛
  • 文献概要を表示

 年末の恒例行事である第31回日本内視鏡外科学会総会が福岡大学の岩﨑昭憲先生の素晴らしい企画で盛会のうちに終了し,新しい年を迎えることができました.平成最後の総会は,まさに内視鏡外科の歴史に一区切りをつけ,新たな時代の内視鏡外科の方向性を示していただいた総会だったと思います.この総会では医工学連携委員長として初めて,医工学連携企画を担当させていただきました.分からないことだらけで最初は戸惑いましたが,医工連携展示・ブースツアーでは出展していただいた企業にも大変好評価でしたし,国産ロボットのパネルディスカッションでも会場がいっぱいになるほどの聴講者にご参加いただき,本当に感無量でした.医工学連携というと,私が前々から感じているのは我々ユーザーのニーズとメーカーのニーズのマッチングができていないのはありますが,ユーザー側に機器のコンセプトやメカニズム,あるいは機器の利点やピットフォールがきちんと伝わっていないことが多いように思います.もちろん企業にしても製品説明のために色々と工夫をされているのは知っていますが,それがどの程度周知されているのか,また正しい使用がされているのか,もっと積極的にリサーチをしていただきたいように思います.米国ではSAGESでFUSE (Fundamental Use of Surgical Energy) という教育プログラムがあり,エネルギーデバイスの基本原理や正しい使用法を教えており,近年日本内視鏡外科学会でも取り上げられるようになってきました.ただ,医療機器の発展は日進月歩です.同じような機器で,基本原理は同じでもそれぞれのメーカーの特徴は大きく違う部分もあります.それらの特性を十分理解して正しく使用するのは外科医の義務です.「外科医だから器械のことは分からない」というのでは,内視鏡外科医としては不勉強な気がします.新しい時代の医工学連携委員会としては「ものづくり」に焦点を当てるだけではなく,新しい医療機器の原理や特性,また企業主導ではなかなか難しい他社製品との違いなどに焦点を当てた教育コンテンツの充実にも取り組んでいきたいと思っています.一度に風呂敷を広げて収集がつかなくなっては困りますが,少しずつ医工学連携の内容を充実させていければいいかなと思っています.

基本情報

13446703.24.2.jpg
日本内視鏡外科学会雑誌
24巻2号 (2019年3月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

文献閲覧数ランキング(
3月11日~3月17日
)