CLINICAL CALCIUM 24巻1号 (2013年12月発行)

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特集　骨粗鬆症治療の新たな展開

Preface

巻頭言～治療ゴールの設定を目指して～松本俊夫 24巻1号 , 2013年12月 , pp.9-9

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Review

骨粗鬆症の新たな診断基準および予防と治療のガイドライン萩野浩 24巻1号 , 2013年12月 , pp.11-18

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　骨粗鬆症の診断基準は，1995年に現在の診断基準のもととなる基準が日本骨代謝学会により策定され，２度の改訂の後，2012年に新たな改訂が行われた。新しい診断基準の最大の特徴は，椎体または大腿骨近位部骨折があれば，骨密度にかかわらず骨粗鬆症と診断される点である。一方，ガイドラインは1998年に「骨粗鬆症の治療（薬物療法）に関するガイドライン」が作成されたのち，新しいエビデンスに基づいて改訂が繰り返され，最近では2011年に改訂された。2011年版ではFRAX ®を取り入れた薬物治療開始基準の改訂，新しい治療薬の追加，治療薬の推奨グレードの刷新が重要な変更点である。

骨粗鬆症の治療標的の設定　Treat-to-Target 宗圓聰 24巻1号 , 2013年12月 , pp.19-24

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　骨折リスクが増大している患者のほとんどで，ビスホスホネート製剤の投与を長期に継続する必要がある。しかし，顎骨壊死や非定型大腿骨骨折などのビスホスホネート製剤の長期使用時の有害事象と関連して，ビスホスホネート製剤の最適な使用期間の設定や一定期間の治療後の休薬（いわゆるdrug holiday）を考慮することが提唱されている。最近，休薬に関する基準も複数提唱されている。　一方，最近骨粗鬆症管理に治療目標を設定するというさらなる戦略を包含することが提唱されるとともに，treat-to-target戦略も提唱された。現在，骨粗鬆症の治療目標や治療ターゲットを確立することの実現可能性を探るためのタスクフォースで議論されている。

Seminar

経口ビスホスホネート治療の進歩と課題竹内靖博 24巻1号 , 2013年12月 , pp.27-33

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　経口ビスホスホネート製剤は，エストロゲン製剤以外で骨粗鬆症による骨折の抑制をはじめて可能とした画期的なものである。これまで，骨吸収活性を高める方向と，内服回数を減らす方向で研究開発が進められてきた。一方で，稀ながら，長期使用に伴う顎骨壊死症や非定型骨折が生じることが明らかとなり，解決すべき課題となっている。

連日テリパラチド皮下注治療の進歩と課題矢野彰三 , 杉本利嗣 24巻1号 , 2013年12月 , pp.35-43

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　副甲状腺ホルモンのＮ末端34個のアミノ酸に相当するテリパラチドの連日皮下注射製剤は，骨粗鬆症治療薬として古くから研究開発が行われ，わが国では2010年に認可された。テリパラチド単独投与では，強力な骨形成の促進効果により主に海綿骨の著明な骨量増加が得られ，新規椎体骨折および非椎体骨折の発症抑制効果が立証されている。生涯における投与期間が２年間に限定されているため後療法が必要である。骨吸収抑制薬との併用による骨量増加効果も示されているが，効果的な投与方法について今後検討する必要がある。疼痛抑制効果や骨折治癒促進作用などが示されているため，背部痛を有する患者や重症な骨粗鬆症患者は良い適応であろう。

選択的エストロゲン受容体モジュレーター（SERM）治療の進歩と課題太田博明 24巻1号 , 2013年12月 , pp.45-52

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　SERM製剤はそのメカニズムから，使用開始当初，対象が比較的若年に限られ，また静脈血栓塞栓症（VTE）の副作用が危惧されていた。しかし，わが国での10年の使用経験により，比較的高齢者においても有効性が示され，またVTEの発現もほとんどみられなかったため，使いやすい薬剤としてのイメージが定着しつつある。さらにビスホスホネート製剤とは異なり，生理的なホルモン類似作用を有することが実臨床において支持されているようである。　今後の課題としては，骨質に対する明確な改善効果と超高齢者における有効性に関するエビデンスの取得が挙げられる。SERM製剤は有効性と安全性，利便性に優れたバランスの良い薬剤であることから，標準的治療薬として，今後も定着し続けるものと思われる。

活性型ビタミンＤ治療の進歩と課題福本誠二 24巻1号 , 2013年12月 , pp.53-58

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　従来使用されてきたアルファカルシドールやカルシトリオールに加え，エルデカルシトールが本邦で骨粗鬆症に対し使用可能となった。エルデカルシトールは，アルファカルシドールに比較し，より強い椎体骨折抑制効果を示すとのエビデンスが確立された。エルデカルシトールは主に，骨吸収の抑制により骨密度を増加させるものと考えられる。ただしいずれの活性型ビタミンＤ製剤でも，高カルシウム（Ca）尿症や高Ca血症などの有害事象に注意する必要がある。

Topics

カテプシンＫ阻害薬による骨吸収抑制と骨粗鬆症治療渡部玲子 , 岡崎亮 24巻1号 , 2013年12月 , pp.59-67

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　カテプシンＫは，破骨細胞のライソゾームから分泌され，酸性下で骨の主要基質蛋白である I 型コラーゲンを分解するシステインプロテアーゼである。カテプシンＫ欠損マウスでは，破骨細胞数に変化はなく骨吸収が抑制され，逆に骨形成は促進し，骨密度が増加していた。このような知見を背景に，骨粗鬆症治療薬として数種のカテプシンＫ阻害薬が開発された。このうち，臨床試験が進行しているodanacatibは，第１相および第２相臨床試験において，骨吸収を抑制する一方，骨形成抑制は軽度で，皮質骨を含め，骨密度を強力に増加させることが確認された。閉経後骨粗鬆症に対する骨折抑制効果を検討した第３相臨床試験の結果が，近く公表される予定である。

抗スクレロスチン抗体による骨形成促進と骨粗鬆症治療遠藤逸朗 24巻1号 , 2013年12月 , pp.69-73

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　スクレロスチンをコードするSOST遺伝子の不活性化変異により，著明な骨量増加がみられることが知られている。スクレロスチンは，骨細胞特異的に発現しており，骨芽細胞依存的に骨形成抑制作用を有することが明らかとなったことから，その作用を抑制する抗スクレロスチン抗体は骨粗鬆症治療薬として利用できる可能性がある。前臨床試験および臨床試験における著明な骨密度増加効果や骨代謝マーカーの変動結果から，抗スクレロスチン抗体は骨粗鬆症における新規治療薬として非常に期待される。

抗Dickkopf1（Dkk1）抗体による骨形成促進作用と骨粗鬆症治療田井宣之 , 井上大輔 24巻1号 , 2013年12月 , pp.75-83

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　Wnt/βカテニンシグナル伝達経路は，骨代謝に重要な役割を果たしている。厳密な制御を要するこのシグナルには多くの阻害因子が存在する。その一つに，ヒキガエルの胎生期に頭部誘導に関わる因子として同定されたDkk1がある。Dkk1はWntの共受容体であるLRP5/6とKremen（Kringle domain-containing transmembrane protein）との３者複合体を形成することでWntシグナルを抑制し，骨形成を低下させる。Dkk1のヘテロノックアウトマウスでは骨量増加が，過剰発現マウスでは骨量低下が認められる。抗Dkk1抗体は種々の動物モデルで骨形成促進作用が示され，骨粗鬆症治療薬としての臨床応用が期待されている。

Therapy

抗RANKL抗体デノスマブによる骨粗鬆症治療徳山直人 , 田中栄 24巻1号 , 2013年12月 , pp.85-91

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　骨粗鬆症および骨粗鬆症を原因とする脆弱性骨折は，我が国においても増加の一途をたどっている。近年，骨吸収を担う破骨細胞に極めて重要な役割を果たすRANKL（receptor activator of NF-κB ligand）をターゲットとした，完全ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体デノスマブ（denosumab）が新たな作用機序を有する骨吸収抑制薬として開発され，閉経後骨粗鬆症に対する複数の大規模臨床試験から，ビスホスホネートに代表される既存の骨吸収抑制薬と比較し同程度かそれを上回る骨密度増加と椎体・非椎体の骨折予防効果が示されてきている。一方，デノスマブ投与後の注意すべき有害事象として，低カルシウム血症や顎骨壊死などの発症機序についてはまだ詳細が判明していない点もあり，今後の更なる基礎的・臨床的研究による知見の集積が期待される。

静注ビスホスホネートの長期間歇投与と骨粗鬆症治療宮腰尚久 24巻1号 , 2013年12月 , pp.93-99

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　ビスホスホネート（BP）製剤は，経口製剤として処方されることが多いが，その生物学的利用率は極めて低く１％にも満たない。しかも，アドヒアランスが悪い場合には十分な骨折抑制効果が期待できない。これらの問題を解決するために，静注で間歇投与するBP製剤が開発されてきた。現在，わが国では，アレンドロネートとイバンドロネートの静注製剤が使用できるが，年１回の投与でも効果があるゾレドロン酸静注製剤の適用も待たれている。これまでの臨床試験において，これらの静注BP製剤は十分な骨折抑制効果を示しており，経口BP製剤に対する非劣性も証明されている。静注BP製剤は，消化管障害や座位困難などにより，経口BP製剤が制限される患者に最も良い適応がある。

週１回テリパラチド皮下注投与と骨粗鬆症治療中野哲雄 24巻1号 , 2013年12月 , pp.100-105

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　副甲状腺ホルモンの活性フラグメントであるテリパラチドを投与した場合，一過性の骨吸収と骨形成の刺激反応が生じ，その刺激が累積することで，骨形成が促進する。テリパラチド56.5μgを週１回繰り返し投与すると，24時間のマーカーの反応は減弱することなく生じる。骨粗鬆症患者に対する週１回投与により，腰椎の骨密度が8.1％増加し，新規椎体骨折は80％抑制された。有意な骨折抑制効果は，高年齢や低骨密度，既存骨折の高グレード等を有する高骨折リスクの症例においても認められ，また，長管骨構造の改善を通じた大腿骨近位部骨折の抑制効果も期待される。テリパラチドは投与制限を有するため，後続治療を考慮する必要があるが，現時点では，ビスホスホネートの使用が有用と考えられる。

理解を助けるトレーニング問題

連日テリパラチド皮下注治療について矢野彰三 , 杉本利嗣 24巻1号 , 2013年12月 , pp.106-106

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（2014年１月号特集：「骨粗鬆症治療の新たな展開」に関連した設問です。知識・情報の整理にお役立て下さい） ※PDFでは，本企画（理解を助けるトレーニング問題）の本号分すべてをご覧になれます。

静注ビスホスホネート製剤について宮腰尚久 24巻1号 , 2013年12月 , pp.107-107

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学会レポート　ASBMR 2013 REPORT

軟骨分野の基礎研究トピックス小林寛 24巻1号 , 2013年12月 , pp.110-113

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　米国メリーランド州ボルチモアで開催されたASBMR2013において発表された演題の中から，軟骨分野の基礎研究に着目し，最近の軟骨研究のトピックスを既知の報告とともに簡単に紹介する。

ASBMR 2013トピックス～基礎研究と臨床研究の最前線～小俣康徳 24巻1号 , 2013年12月 , pp.114-118

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　2013年10月に，ボルチモアで第35回ASBMRが開催された。今年も多くの演題が発表された。本稿では，ASBMR2013で発表された基礎研究または臨床研究の演題の中からトピックな内容を選んで報告する。

ASBMR2013印象記～Wnt系を中心に～岡崎亮 24巻1号 , 2013年12月 , pp.119-121

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　2013年10月米国ボルチモアで行われたASBMRの印象を，Wnt系に関する演題を中心に記した。

連載　注目の海外文献（21）

１．PPARβ/σはWntシグナルと骨代謝回転を調節する　２．軟骨下骨の間葉系細胞におけるTGF-βシグナルの抑制は，変形性関節症を防ぐ小林泰浩 24巻1号 , 2013年12月 , pp.124-125

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Lineup １．PPARβ/δはWntシグナルと骨代謝回転を調節する２．軟骨下骨の間葉系細胞におけるTGF-βシグナルの抑制は，変形性関節症を防ぐ

バックナンバー 24巻1号 , 2013年12月 , pp.147-151

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特集予告（２月号，３月号） 24巻1号 , 2013年12月 , pp.153-153

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CLINICAL CALCIUM
24巻1号
(2013年12月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0917-5857 医薬ジャーナル社

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