Medical Technology 53巻7号 (2025年7月発行)

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特集　教えて！誘発電位検査

扉 53巻7号 , 2025年7月 , pp.663-663

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　誘発電位検査は検査環境の整備に始まり，機器の管理，アーチファクト対策，検査技術が揃ってはじめて結果解釈を行うことができます．こうした準備や手技を適切に実践するには，正しい知識が不可欠です．

1．誘発電位検査を始める前に髙橋　修 53巻7号 , 2025年7月 , pp.664-675

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誘発電位検査においても機器の品質向上や省力化が進んでいるが，データの精度を上げるために，今まで以上に神経生理学・電気工学の知識と技術に基づいた慎重な機器操作が要求されている．本稿では，検査を始めるにあたって知っておくべき歴史や原理，ノイズ対策などの基礎知識を概説する．

2．誘発電位検査の手技と結果解釈　1）聴性脳幹反応（ABR）髙橋　広大 53巻7号 , 2025年7月 , pp.676-680

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聴性脳幹反応（ABR）は，聴力推定目的，脳幹機能評価目的，さらには術中モニタリング検査まで，幅広く臨床応用されている誘発電位検査である．ABRの実施にあたっては検査環境の整備，機器の管理，および信頼性のある検査データを導出する技術の習得が必要である．

2．誘発電位検査の手技と結果解釈　2）体性感覚誘発電位（SEP）小川　優司 53巻7号 , 2025年7月 , pp.681-685

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体性感覚誘発電位は，末梢神経から大脳皮質感覚野に至る感覚伝導路の機能を評価するために用いられる．本稿では臨床に広く用いられている短潜時SEPについて，おもに検査の概要や検査法，実際の検査時のポイントに重点を置いて解説する．

2．誘発電位検査の手技と結果解釈　3）運動誘発電位（MEP）種田　建太 , 花島　律子 53巻7号 , 2025年7月 , pp.686-689

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運動誘発電位は錐体路を客観的に評価でき，筋萎縮性側索硬化症などさまざまな神経疾患で用いられる．大脳～神経根の伝導時間を個別に評価できるため，病変の推定にも役立つ．臨床的には磁気刺激を用いた方法が広く普及している．安全に検査を実施し，検査結果を正しく理解するためには，磁気刺激特有の性質を理解する必要がある．

2．誘発電位検査の手技と結果解釈　4）視覚誘発電位（VEP）後藤　純信 53巻7号 , 2025年7月 , pp.690-695

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視覚誘発電位（VEP）を検査する際に重要なヒトの視覚情報処理の生理，VEPの原理，パターン刺激を用いる利点，刺激パラメータの重要性，記録条件や記録時におけるトラブルの原因と対処法について概説する．

2．誘発電位検査の手技と結果解釈　5）事象関連電位矢部　博興 , 星野　大 , 菅野　和子 53巻7号 , 2025年7月 , pp.696-701

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精神医学は，医療現場への導入に堪えうるバイオマーカーを提供していないという深刻な問題をかかえている．他の医療分野とは異なり，多くの場面でバイオマーカーを使用しない医療が続けられている．また，狭義の誘発電位が死後脳判定を含め重要な臨床分野に導入されているのに対して，事象関連電位（ERP）の臨床応用は遅れている．たとえば陽性電位成分であるP300などにおいては，精神現象に対する高い感受性が，反対に検査結果の不安定さを生み出してしまう．しかし，ミリ秒単位の時間解像度で認知心理過程を計測できる唯一無二の利点は揺るがない．

ミスマッチ陰性電位（MMN）は自動性，無課題という誘発電位に似た特性を有し，装置が安価，計測が容易，発生源や発生機構が解明されていること，環境安定性といった利点から，精神神経疾患のバイオマーカーとして期待されている．

2．誘発電位検査の手技と結果解釈　6）術中神経モニタリング木崎　直人 53巻7号 , 2025年7月 , pp.702-709

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現在，多くの施設で行われている術中神経モニタリングにおいて，実際に施行しているのは誘発電位検査である．検査室で行う検査と手技はほぼ同一ではあるが，手術室という特殊な空間で行う難しさがある．本稿では，手術室検査として行う誘発電位検査のポイントを紹介する．

3．アーチファクトと対策杉山　邦男 53巻7号 , 2025年7月 , pp.711-716

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臨床的に価値のあるデータを記録するためには，アーチファクトの除去は欠かせない手技である．誘発電位検査はベッドサイドで繰り返し可能な検査であり，さまざまな環境下で実施することが要求される．アーチファクトの原因と対策を知ることで，どのような環境下であっても効果的な対応が可能となる．

Editorial―今月のことば

コロナ禍のもたらしたもの廣井　禎之 53巻7号 , 2025年7月 , pp.653-653

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　コロナ禍の『禍』とは，「災い」「災難」「不幸なできごと」を意味する言葉で，コロナ禍とは2019年12月からの新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の流行による災難や社会の危機的状況を指しています．しかしながら，この新型コロナウイルス感染症も2023年5月8日より感染法上の位置づけが季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられました．これにより，法律に基づき行政がさまざまな要請・関与をしていく仕組みから，個人の選択を尊重し，国民の自主的な対応をベースとした仕組みに変わりました．

話題―NEWS&TOPICS

AMR（薬剤耐性）―サイレントパンデミックとは近藤　周平 , 中村　敦 53巻7号 , 2025年7月 , pp.656-658

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はじめに

　AMR（Antimicrobial Resistance；薬剤耐性）とは，不適切な抗微生物剤（抗菌薬など）の使用により，抗微生物剤が効かなくなる，あるいは効きにくくなることである．近年，抗菌薬が効かないAMRをもつ細菌が世界中で増加している．2013年のAMRに起因する死亡者数は70万人とされるが，何も対策を講じない場合，2050年には世界で1,000万人に及び，がんによる死亡者数をこえると推測した報告がある^1）．

C型肝炎ウイルスの抗原・抗体同時検出試薬が保険適用に―抗原・抗体同時検出はスタンダードになっていくのか？大越　章吾 53巻7号 , 2025年7月 , pp.659-661

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従来のHCVの診断

　従来，C型肝炎ウイルス（HCV）感染の診断は，“まず抗体検査を行い，陽性であればPCR法を実施する” という流れで行われてきた．しかし，これらの2つの検査それぞれを時間を置いて行うことは煩雑かつ非効率であり，コストがかかることも問題であった．

クライテリア確立のための細胞所見―鑑別疾患と重要所見

5．子宮体部加藤　智美 53巻7号 , 2025年7月 , pp.717-721

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要点

・不正性器出血では，内膜崩壊（機能性出血）と腫瘍性病変（器質性出血）を鑑別する．

・弱拡大から強拡大を通して腺管と間質の2相性をとらえ，主として上皮性成分の構造異型の有無を認識する．

・女性ホルモンの影響による，上皮の化生性変化および間質の分泌期様の変化に着目する．

・高齢者では特に細胞異型に着目し，高異型度腫瘍の存在を考える．

MT Seminar―読んで、見て、深める臨床検査技師のための誌上講義

中皮腫を示唆する細胞所見―病理検査室の報告と対応松本　慎二 53巻7号 , 2025年7月 , pp.722-726

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要点

☑組織診断が施行されていない症例でも，病理学的所見の根拠としての適切な細胞診断が行われている場合，その他の所見と総合して中皮腫と判定・認定されることがある．

☑中皮腫診断における体腔液細胞診では，詳細な細胞観察による形態評価にて異型細胞を確実にとらえることが，診断の重要なファーストステップである．

☑病理診断報告書には，免疫化学染色による中皮細胞起源の証明や遺伝子変異に基づく腫瘍性であることの診断根拠も，あわせて明確に記載することが望まれる．

Dダイマー高値の原因は何が考えられるか雨宮　憲彦 53巻7号 , 2025年7月 , pp.727-731

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要点

☑Dダイマーは，フィブリン血栓がプラスミンにより溶解された分解産物の一つである．Dダイマーを測定することにより，体内で血栓が形成されている（または形成された）可能性の有無を知ることができる．

☑Dダイマー測定は免疫学測定法であるため，まれに非特異反応の影響により病態に関係なく予想外な偽高値を呈することがあるため注意する．

☑Dダイマー測定は二次線溶を反映する重要な検査である．しかし，DICを診断する場合，線溶抑制型（二次線溶優位）から線溶亢進型（一次線溶優位）まで病態もさまざまであり，凝固検査はもとより他の凝固線溶系マーカー（特にFDPやPICなど）も測定することが望ましい．

臨床検査技師として知っておきたい手術前貧血小林　清子 , 石田　明 53巻7号 , 2025年7月 , pp.732-736

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要点

☑手術前貧血は患者の術後経過に悪影響を与える．

☑多職種が連携して周術期診療を行い，手術前貧血に対して適切な治療を行うことが重要である．

有意義な臨地実習に向けて　前編：養成校側の立場から髙嶋　眞理 53巻7号 , 2025年7月 , pp.737-741

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要点

☑臨床検査技師の卒前教育は，2022（令和4）年度からの新カリキュラムにおいて臨地実習が12単位（うち1単位は臨地実習前の技能修得到達度評価）に拡充され，臨床検査技師養成所における教育の質の向上が求められている．

☑臨地実習先となる医療関連施設へ学生を送り出す臨床検査技師養成所は，学生と密にコミュニケーションをとり，十分な事前準備を行うことが重要である．

☑医療関連施設と臨床検査技師養成所が協同・連携して臨地実習を実施することが，社会に貢献できる臨床検査技師の輩出につながる．

薬剤感受性検査データ（MIC）の読み方と耐性菌検査グラム陽性菌編

7．Escherichia coli（大腸菌），Proteus mirabilis 相原　正宗 53巻7号 , 2025年7月 , pp.742-746

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薬剤耐性機序：獲得性β-ラクタマーゼ

　近年，抗菌薬が効きにくい腸内細菌目細菌の分離率が高まっている．特に，カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌（carbapenemase-producing Enterobacterales；CPE）や基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ（extended-spectrum β-lactamase；ESBL）産生菌など，β-ラクタマーゼ遺伝子の後天的な獲得により，広域β-ラクタム系薬に耐性化した菌の蔓延が深刻化している．

基礎講座

造血幹細胞移植と合併症―臨床検査を含めて日野　雅之 53巻7号 , 2025年7月 , pp.747-751

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◎同種造血幹細胞移植にはさまざまな合併症がある．

◎多くの職種が専門性を活かしたチーム医療が不可欠である．

◎臨床検査は患者状態の把握，造血幹細胞の評価，合併症の早期発見，治療効果の判定など，移植過程の多くの場面で重要な役割を果たしている．

学会レビュー

第36回日本臨床微生物学会総会・学術集会木部　泰志 53巻7号 , 2025年7月 , pp.752-752

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はじめに

　2025年1月24～26日の3日間，八木哲也総会長（名大大学院）のもと，名古屋国際会議場（名古屋市）にて標記学会が開催されました．テーマは「Adapt！適応せよ！―革新と継承の時代に適応できる臨床微生物検査―」で，専門学会ならではの企画が多くあり，大変有意義な3日間でした．ここでは，私が注目した演題についてご紹介します．

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目次 53巻7号 , 2025年7月 , pp.654-655

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VOICE 読者のページ 53巻7号 , 2025年7月 , pp.753-753

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MTパズル 53巻7号 , 2025年7月 , pp.754-754

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Information 53巻7号 , 2025年7月 , pp.755-755

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編集後記・次号予告 53巻7号 , 2025年7月 , pp.756-756

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基本情報

Medical Technology
53巻7号
(2025年7月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0389-1887 医歯薬出版

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