特集 教えて!誘発電位検査
2.誘発電位検査の手技と結果解釈 5)事象関連電位
矢部 博興
1
,
星野 大
2
,
菅野 和子
2
1福島県立医科大学 こころと脳の医学講座
2福島県立医科大学 医学部 神経精神医学講座
pp.696-701
発行日 2025年7月15日
Published Date 2025/7/15
DOI https://doi.org/10.32118/mt53070696
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精神医学は,医療現場への導入に堪えうるバイオマーカーを提供していないという深刻な問題をかかえている.他の医療分野とは異なり,多くの場面でバイオマーカーを使用しない医療が続けられている.また,狭義の誘発電位が死後脳判定を含め重要な臨床分野に導入されているのに対して,事象関連電位(ERP)の臨床応用は遅れている.たとえば陽性電位成分であるP300などにおいては,精神現象に対する高い感受性が,反対に検査結果の不安定さを生み出してしまう.しかし,ミリ秒単位の時間解像度で認知心理過程を計測できる唯一無二の利点は揺るがない.
ミスマッチ陰性電位(MMN)は自動性,無課題という誘発電位に似た特性を有し,装置が安価,計測が容易,発生源や発生機構が解明されていること,環境安定性といった利点から,精神神経疾患のバイオマーカーとして期待されている.

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