臨床泌尿器科 73巻12号 (2019年11月)

特集 Nicheな前立腺炎の全容に迫る!

企画にあたって 和田 耕一郎
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 「前立腺炎」と聞いて,どんな印象をお持ちだろうか.悪性腫瘍や尿路結石など,手術を中心とする疾患を診る頻度の高い泌尿器科医にとっては,「面倒な疾患」という印象が強いのではないか.それは,「前立腺炎」が細菌感染症と,感染症としては説明できない慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(chronic prostatitis/chronic pelvic pain syndrome : CP/CPPS)からなっているためであり,後者は症候群という概念的な疾患単位でつかみどころがないためであろう.さらに,CP/CPPSにおける疾患特異的な病態解明や治療の確立が大きく進んではおらず,慢性,難治性の疾患であることが大きな要因と考えられる.本特集を立案するにあたり,これまでの総まとめといっても過言ではない,網羅的でかつ新しい知見を盛り込んだ解説を著者の先生方にお願いした.

 本特集では,まず基本となる前立腺炎の分類と現状の鑑別方法についておさらいし,主に頻度の高い細菌性前立腺炎とCP/CPPSについて解説していただいた.診断や治療法がほぼ確立している細菌性前立腺炎については,耐性菌対策や排尿障害に対するマネジメントが重要な一般細菌による前立腺炎に加え,比較的報告が少ない性感染症としての前立腺炎について項目を新たに設けた.外来診療において最も悩ましい疾患の1つであるCP/CPPSについては,診断や治療のほかに症状ドメインの分類や診療ガイドラインが存在する欧米の動向,さらに現在行われている基礎研究や最新の臨床データに関する項目を設け,解説していただくよう依頼した.

〈分類〉

前立腺炎の分類 安田 満
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▶ポイント

・前立腺炎の分類には,Drachらの分類,NIH分類,およびUPOINT(S)がある.

・Drachらの分類,NIH分類は感染症の視点からの分類であり,UPOINT(S)は病因による分類である.

・UPOINT(S)は慢性前立腺炎の治療に適している.

〈急性細菌性前立腺炎〉

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▶ポイント

・男性で発熱や排尿痛などの症状を認める場合には,急性細菌性前立腺炎を考慮する.

・原因菌としては,大腸菌が半数以上を占める.

・敗血症性ショックなど重症化する例もあり,初期抗菌薬は原則として注射薬を選択する.

・経直腸的前立腺生検後の急性細菌性前立腺炎では,原因菌としてフルオロキノロン耐性大腸菌,ESBL産生大腸菌を考慮する.

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▶ポイント

・急性前立腺炎の起炎菌として,淋菌やクラミジアはまれである.

・大腸菌による急性前立腺炎の一部は性感染症である.

・尿路感染症を有する女性との性交渉は,急性前立腺炎発症の高リスクである.

〈慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群〉

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▶ポイント

・CP/CPPSの病態は疼痛ないし不快感を主とした症状症候群である.

・CP/CPPSの診断は,除外診断による.

・NIH-CPSIは,治療前後の症状の程度を評価できる.

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▶ポイント

・CP/CPPSは,多様な病因が関与するため,単一の病因を治療標的としても効果は不十分である.

・主要症状・症候(ドメイン)を6つ(性機能を含めると7つ)に分類し,陽性ドメイン別に標的治療を行うのがUPOINT(S)分類である.

・陽性ドメイン数とNIH-CPSIスコアの相関はよく,適正標的治療により症状改善効果は高まる.

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▶ポイント

・CP/CPPSは,NIHが提唱した「前立腺炎症候群」のカテゴリーⅢを指す.

・成人男性において比較的頻度の高い泌尿器科疾患であるが,特定の病因や病態が示されておらず治療法も確立されていない.

・多様な症状をUPOINTに分類し,各々に対応した治療法を選択することが望ましい.

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▶ポイント

・CP/CPPSは,多要因性の症候群である.各治療と並行して,まずは食生活の改善や運動は試してみる価値はある.

・治療の基本は薬物療法であるが,UPOINTの表現型に沿った集学的治療を行うことが重要である.

・本稿では,薬物以外の治療のなかで,食生活の改善や運動,保険適用のある鍼治療,保険適用はないが侵襲の少ない低強度体外衝撃波治療の3点につき解説する.

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▶ポイント

・患者の症状や不安,生活への支障の程度を考えながら,適切な検査や治療を提案する.

・診療を通じて,患者自身が疾患や自分の症状を理解し,セルフマネジメントできるように指導する.

・症状が軽度の場合は,検査や治療を開始せず経過観察することも1つの選択肢である.

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▶ポイント

・EAUから出されているchronic pelvic painのガイドラインでは,多領域にまたがり,包括的な診断と治療を行うことが推奨されている.

・CPPSは感染やほかの明らかな局所の病理学的所見が証明されていない症状症候群である.

・CPPSの治療において患者の治療満足度を向上させるためには,多職種介入マルチサポートの構築が重要となる.

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▶ポイント

・CP/CPPSは,さまざまな要因により形成される複雑な発症機序があるため,病態解析が重要である.

・CP/CPPSの複雑な発症機序を想定して,基礎研究ではさまざまな動物モデルを用いた研究が行われている.

・炎症細胞の主体はマクロファージとT細胞であり,炎症細胞が産生するサイトカインおよびケモカインが病態を反映するバイオマーカーとなる可能性がある.

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▶ポイント

・CP/CPPSにおいては実際の臨床現場においては,漫然と患者の訴えに応じて主にニューキノロン系抗菌薬の中期〜長期投与が行われていることが多く,特に非抗菌薬療法の臨床研究が待たれる.

・これまでその関与について意見の分かれていたうつ病に関して,うつ病の有無がCP/CPPSの治療に影響するという韓国からの報告があった.

・非薬物療法として,鍼治療やESWTなどの本疾患における効果の臨床研究が報告されている.今後本邦においても,これらの研究が期待される.

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要旨

 手術と外照射放射線療法は,限局性前立腺癌に対する同等の治療選択肢とみなされている.既報では長期生存は手術が勝る可能性が指摘されているが,両者の比較においては異なる患者背景や副作用プロファイルなどの諸問題があり,単純な成績比較は困難である.また,各治療でロボット手術やIMRTといった技術革新も進んでいるため,治療成績をアップデートしていくことも重要である.最近,手術と外照射放射線療法を比較した初のランダム化比較試験の結果が報告された.また,筆者らは最近,両者の先端技術同士の比較論文を出版した.これらの紹介も含め,限局性前立腺癌に対する両モダリティの比較について腫瘍学的成績を中心に概説する.

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 「画像検査を学ぶ本だ」という予想をはるかに超えていた.救急室や外来で出合う疾患の特徴的な画像が次々と登場し,経験知が詰まったクリニカルパールがテンポよく紹介された本であった.画像診断は「知っていれば診断できる」ことが多い.逆に言うと,知らなければ見過ごしてしまう所見がたくさんある.この本は,あなたの「診断できる」を確実に増やしてくれる一冊である.

 この本がすごいのは,画像診断の「周辺」までクリニカルパールでカバーしているところだ.第1章「画像診断総論」で取り上げられている以下などは,普段なら難しくて読み飛ばしてしまいそうな内容だが,簡潔なメッセージ(鉄則)とまとめで読みやすくなっている.

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目次

バックナンバーのご案内

次号予告

編集後記 近藤 幸尋
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 最近小職の勤務する大学において,大学院生の充足率に関する報告と大学院生のリクルートの依頼の手紙が来ております.現在の若人にとって,大学院および博士に対しての興味は薄いようです.専門医制度が引かれている現在では,後期研修医を終えてから専門医試験があり,その後に腹腔鏡手術の技術認定などサブスペシャリティの試験が続くため,卒後約10年間はそれらが中心となっています.それから大学院に入り博士論文を書くわけですので,博士の高齢化は避けられません.

 8月に文部科学省の科学技術・学術政策研究所が「科学技術指標2019」を発表しました.科学技術指標はわが国の科学技術活動をまとめた基礎資料です.本指標から日本の状況をみると,研究開発費・研究者数はともに主要7か国中第3位,論文数は世界第4位,注目度の高い論文数は世界第9位,2か国以上への特許出願数は世界第1位で,研究者に占める博士号保持者の割合(高度研究人材の活用度)は産業分類によって異なり,日本は米国と比較すると高度研究人材の活用度が低い傾向にあるようです.また,人口100万人あたりの博士号取得者数では,主要国の中では日本のみ減少傾向が続いているとのことで,近年の論文数と博士号取得者数の減少を国は問題視しているようです.

基本情報

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臨床泌尿器科
73巻12号 (2019年11月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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