作業療法 36巻4号 (2017年8月)

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要旨:本研究では,家族間介護における介護負担感との関連因子について文献検索を行った.被介護者要因で関連が認められた項目は,認知機能障害の程度や認知症の周辺症状,ADL自立度が挙げられた.介護者要因で関連が認められた項目は,QOL,抑うつ,健康状態,目が離せない時間であった.介護者─被介護者間関係で介護負担感と関連性を認めた項目は少ないが,続柄別で介護負担感と精神的健康感との因果関係に違いがある可能性が示されていた.外的要因として関連が認められた項目は,介護相談者の有無,介護サービスの利用数,ショートステイの利用であった.介護負担を変化させる要因を得るため縦断的なデータを使用した検討が今後の課題である.

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要旨:本研究は,地域在住高齢者のフレイルの程度と社会的環境要因の関連性について検討することを目的とした.要介護未認定の地域在住高齢者101名を対象とし,フレイルの判定にはCardiovascular Health Study(CHS),社会的環境要因の評価には包括的環境要因調査票(以下,CEQ)を測定し,Mann-WhitneyのU検定とロジスティック回帰分析により解析した.その結果,プレフレイルはCEQスコアと関連があることが示され,「人の役に立てる環境」がプレフレイルと関連する因子であることが示唆された(OR=2.922,95%CI=1.336-6.390).よって,高齢者の介護予防における社会的環境要因を把握することの重要性が示された.

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要旨:通所リハビリテーション(以下,通所リハ)での「作業に関する自己評価・改訂第2版(OSAⅡ)」を用いた作業療法(以下,OT)が健康関連QOLに与える効果を検討するため,通所リハ利用者34名を実験群と対照群に無作為に割り付けた.実験群はOSAⅡを活用したOT,対照群は通常のOTを各3ヵ月間実施した.結果,実験群では活動・参加の改善を目指す具体的な目標が多く挙げられた.3ヵ月後,両群の健康関連QOLに有意差は認められなかったが,実験群で目標達成に向かった者の健康関連QOLは向上し,達成に向かわなかった者は低下する傾向にあった.OSAⅡの活用により,活動・参加の目標設定がしやすくなり,達成状況は健康関連QOLに影響すると考えられる.

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要旨:悪性腫瘍を発症したクライエントに対して,亡くなる直前までの約5ヵ月間,訪問作業療を実施した.本実践では,作業の可能化が望める時期から介入することができたため,悪性腫瘍を発症してからできていなかった着付けという作業を再び行うことが可能となった.その結果,美容師という作業的存在に再び戻ることができた.さらにこの状態は,悪性腫瘍が進行し身体機能が低下しても,もう一度着付けをするという未来的思考を持ち続けることができ,死への恐怖に立ち向かうことを可能とした.以上から,悪性腫瘍を呈したクライエントに対して,作業の可能化が望める時期から作業的存在の支援をする訪問作業療法の重要性と意義が示唆された.

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要旨:脳卒中患者は脳卒中によって上下肢の麻痺が生じる.特に上肢麻痺は脳卒中患者のQOLを低下させる.複数の研究者は,分枝粥腫病(Branch Atheromatous Desease;以下,BAD)の上肢の機能予後は,通常の脳卒中に比べ,不良と報告している.今回,我々は入院後2日の間に麻痺の悪化を認めた中等度の上肢麻痺を呈したBAD患者を担当した.急性期から,上肢麻痺に対して対象者の意味のある作業を用いた課題指向型アプローチを提供した結果,上肢機能は臨床上意味のある最小変化を超える改善を認めた.本事例報告では,経過と結果について,BADの梗塞の深さ,梗塞層の大きさ,さらには発症当初の身体機能を用いた予後予測に関する考察を加えて報告する.

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要旨:筆者らは認知症高齢者に対する集団作業療法における環境設定を工夫し,その効果を確認した.認知症高齢者15名を対象に集団作業療法を3ヵ月実施した.実施時の前半は机を縦に並べた環境に,後半は机を半円形に並べて対象者同士が顔を合わせる環境に設定した.対象者の変化は,東大式観察評価スケールと改訂長谷川式簡易知能評価スケールを用いて調査した.その結果,机を縦に並べた環境に比べ,机を半円形に並べた環境下で行った集団作業療法の方に,行動面の改善が認められた(p<0.05).また,集団作業療法の前後で認知機能面の変化は認められなかった.集団作業療法では,円形に机を並べるなどの環境設定で,実施効果を高められることが示唆された.

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要旨:脳卒中後上肢麻痺への治療戦略の一つにConstraint-induced movement therapy(以下,CI療法)がある.通常のCI療法の練習時間は長く,現行の医療制度では人的資源不足が問題となる.今回我々は重度上肢麻痺を呈した回復期脳卒中患者に対し,CI療法に準じた上肢集中練習を実施した.人的資源不足解消のために,症例の妻とCaregiver contractを結び,妻が症例の自主練習を管理し上肢練習を行った.その結果,麻痺側上肢に対して1日3時間の練習量を担保でき,上肢機能と院内での麻痺手の使用頻度・質ともに改善がみられた.さらに麻痺手での食事や書字動作,復職に必要なパソコンのタイピング動作などの7つのニードが達成できたため,その経過を報告する.

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要旨:我々は,仕事中に右上肢を機械に挟まれ,右上肢Ⅲ度熱傷,示指から小指の中手骨レベルで切断に至った症例を担当した.母指は残存したものの重度の関節拘縮が生じ,対立の相手役となる示指から小指をすべて失ったため,物の把持が困難となった.これに対し,熱可塑性スプリント材で欠損指を再現し,将来的に作製する義手を見据えた練習用仮義手を作製し,作業療法を実施した.その結果,練習用仮義手装着下では,右上肢機能の改善,ADLでの積極的な使用,主観的満足度の向上を認めた.

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■欧文目次

基本情報

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作業療法
36巻4号 (2017年8月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

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