作業療法 36巻5号 (2017年10月)

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要旨:本研究では,専門職が経験する信念対立の経時的変化を測定する等化尺度(Assessment of Belief Conflict for Profession;以下,ABCP)を開発した.先行研究のインタビューデータからABCPの仮尺度Aと仮尺度Bを作成し,作業療法士を対象に調査を実施した.454名のデータで仮尺度Aと仮尺度Bの妥当性と信頼性を検討し,良好な結果を示した項目で尺度を等化した.開発した2つの尺度は共に,信念対立という1つの因子を計10項目で測定し,概ね同等の尺度特性を備えることが確認できた.ABCPは専門職の信念対立の一般化された重症値を推定し,信念対立の状態を経時的に測定できると考えられた.

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要旨:本研究の目的は,「回復期リハビリテーション病棟における作業療法士のEvidence-Based Practice(以下,EBP)に対する意識度質問票」の開発である.274名の作業療法士を対象に全39質問項目の信頼性・妥当性を検討した.回答偏向,Cronbachのα係数,因子分析,主成分分析の結果に基づき,最終的に「EBPに対する意識尺度」(4因子26項目)と「EBPに対する自己効力感尺度」(6項目)からなる5つの下位尺度で構成された.各下位尺度はα=0.65〜0.93であり,十分な内的整合性が認められた.また,各下位尺度を構成する質問項目は,0.35以上の因子負荷量と0.80以上の主成分負荷量を有しており,尺度は構成概念妥当性を有していると判断された.

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要旨:人工膝関節置換術(以下,TKA)後患者の疼痛に対する心理的要因は慢性疼痛,生活の不活動を招く恐れがある.本研究は,患者教育を用いた作業療法(以下,OT)実践が疼痛と心理的要因および活動量に与える影響を検討することを目的とした.TKA後患者を対象とし,対照群28名と教育群36名に分類した.測定指標には疼痛(安静時痛,歩行時痛)と破局的思考(下位項目;反芻,無力感,拡大視),不安と抑うつ,自己効力感,活動量を測定し,分散分析にて解析した.その結果,教育群において歩行時痛,反芻,不安,抑うつに交互作用を認めた.本結果より,TKA後患者に対する患者教育を用いたOT実践の有用性が示唆された.

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要旨:作業療法学科在籍中の学生におけるコミュニケーションスキル自己評定尺度を開発することを目的とした.学生259名中,有効回答のあった176名を分析対象とした.得られた結果をもとに探索的・確証的因子分析を実施し,最終的な項目数は29項目,5因子が抽出された.第1因子「関わり合いの導入」,第2因子「非言語的行動の読み取り」,第3因子「非言語的行動の表出」,第4因子「他者への同調」,第5因子「緊張場面の処理」と命名した.これらの尺度は高い内部一貫性を示した(Cronbachのα係数=.902).この尺度の活用により,学生が留意すべきスキル不足があらかじめ認識可能となり,作業療法の提供がより効果的に行えるようになると予想される.

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要旨:モヤモヤ病に対する左血行再建術後,運動性失語などを呈した小学6年の男児の作業療法(術後8日から30日)を経験した.活動制限,疼痛,検査のために啼泣することが多く,離床に拒否的であった.知能検査や失語症検査の結果より,学業に影響を及ぼす可能性があると考えた.離床の促進,円滑な復学などを目標とし,ブロックあそびやキャッチボールを用いて病室から作業療法室へと活動範囲を拡大した後,ウェクスラー児童用知能検査第4版と計算課題を実施した.児が好む運動課題を行ったことで,離床の促進と療法士との信頼関係が生まれ,苦手とする高次脳機能検査や計算課題にも取り組むことができ,神経学的な異常所見を認めず早期に復学できた.

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要旨:本研究の目的は,作業療法士養成校で行われている授業に対する学生の価値づけを明らかにすることである.対象は,4年制の養成校に在籍する3年生37名,および22の授業科目であった.方法は,対象となる授業科目の定期試験終了後に課題価値測定尺度を用いて評価し,授業科目全体に対する価値づけのあり方を把握した後に,授業科目を知識伝達型授業科目と参加体験型授業科目に分けて価値づけの傾向を比較した.その結果,参加体験型授業は,知識伝達型授業よりも興味価値,私的獲得価値,公的獲得価値,実践的獲得価値の下位尺度得点が有意に高かった.この結果より,参加体験型授業は,学生の学習動機を高め将来の職業をより意識させると考えられた.

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要旨:眼球運動障害により,日常生活に大きな不自由を認めた70歳代女性の脳幹梗塞症例に対し,眼球運動訓練を実践したため報告する.症例は,右眼に内転障害を呈し,左方視で複視を認めた.テレビを見る,字を書くなど生活動作に重度の不自由を感じていた症例に対し,頭位変換を伴わない追視,注視,輻輳反射を用いた眼球運動訓練を週6回,1回20分,期間は4週間実施した.その結果,眼球運動は改善し,複視は消失,生活の不自由度も著明に改善した.眼球運動訓練により,外眼筋の短縮や萎縮などの二次的な変化を予防できたことが,良好な結果につながったと考える.

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要旨:既往歴に頚椎症性神経根症を認め鏡視下手根管開放術後にdouble crush syndrome様の症状を呈した症例について報告する.作業療法は二段階で行い,第一段階では主として頚椎症,第二段階では手根管症候群に焦点をあてた.頚椎症に対しては肩甲骨固定筋群の筋力強化による頚椎の力学的負荷の緩和を目的とし,手根管症候群へは正中神経領域での神経の圧迫緩和目的で上肢の各関節を調整した肢位での神経滑走運動を実施した.その結果,しびれと痛みが改善しADLで使用可能な手の獲得につながった.今回のことから頚椎症と手根管症候群からなるdouble crush syndromeでは頚椎にかかる力学的負荷の軽減と手根管部の圧迫緩和が有効である可能性が示唆された.

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要旨:集団活動が主体のデイサービスになじめず,不適応を起こす重度知的障害者が安心して楽しく過ごせるよう,利用者中心支援の評価・計画法を試作した.認知症ケアのセンター方式やカナダ作業遂行測定からの援用を基に作成し,ケア職員との事例検討のなかで改訂する方法をとった.評価法は職員側視点と,職員が利用者の思いや願いを代弁する利用者側視点とを対比させる「三人称・一人称比較集団評価法」とし,計画法は両者の思いを統合して協働するための「個別支援計画作成シート」とした.これらを用いることにより,作業が皆でやるべき義務的なものから本人がやりたいと思えるものになり,重度知的障害者が安心して楽しめる活動が増えた.

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要旨:透析後疲労を認める一症例に対して,作業療法とベルト電極式骨格筋電気刺激法(以下,B-SES)を用いて介入した.その結果,身体機能の向上と疲労感の軽減を示した.さらに,作業選択意思決定支援ソフト(以下,ADOC)を使用して目標設定した作業活動についても,介入後に満足度の向上を認めた.本実践報告は,透析後疲労を認める患者に対し,ADOCを用いて目標を明確にした作業療法と身体機能に対するB-SESの併用が,身体機能向上とADLの獲得につながる可能性を示した.

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要旨:本研究の目的は実車評価時期と実車評価結果の関連性を調査し,時期による違いを考察することである.実車評価を実施した脳卒中後の106名を発症から実車評価までの期間で2ヵ月未満(短期群),2〜4ヵ月(中期群),4ヵ月以上(長期群)の3群に分類し,神経心理学的検査,実車評価結果を比較した.実車評価結果は指導員の総合判定と作業療法士が採点した運転行動評価表(Road Test)の得点とした.すべての群間比較の中で有意差を認めたのは短期群と長期群におけるRoad Test得点のみであり,長期群が有意に低下していた(p=0.0159).このことより発症から実車評価までに期間を要したものは,実車評価時に問題となる運転行動を呈する可能性が考えられた.

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■欧文目次

基本情報

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作業療法
36巻5号 (2017年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

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