作業療法 36巻2号 (2017年4月)

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要旨:重度の上肢麻痺に対するアプローチは,現在のところ確立されていない.本研究では,慢性期の脳卒中後の上肢麻痺を呈した対象者に,エビデンスを基盤にした複数の練習を併用したので報告する.対象者は,慢性期の脳卒中後上肢麻痺を呈した患者である.対象者は,ボツリヌス毒素A型施注後,1日1時間のロボット療法と0.5時間の装具と電気刺激を併用したCI療法を受けた.結果,介入前後において,8名の慢性期の脳卒中患者に対して,麻痺手の機能を図る評価は全て有意に改善した.この結果から,重度上肢麻痺を呈した慢性期脳卒中患者に複合的なアプローチは,有用な可能性が示唆された.

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要旨:潜在連合テストを用いて,作業療法学生に保持されている精神障害者に対する潜在的認知について検討した.その結果,作業療法学生には精神障害者に対するネガティブな認知が顕在的には現れていないが,潜在的には生じていることが示唆された.また「障害者」から「障がい者」への表記の変更は,作業療法学生の潜在的認知の改善に効果を及ぼしていないことが示唆された.これらから,学生にはすでに精神障害者に対するネガティブな認知が潜在的に存在していることを前提として,作業療法教育を始める必要があること,および実習指導において,学生が精神障害者との双方向の交流関係をもてるように介入することが,実習の効果を高めることを考察した.

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要旨:特別養護老人ホームで働いた経験のある作業療法士(以下,OT)10名と介護職(以下,CW)7名に半構造化インタビューを行った.そして,OTとCWの「情報の共有化」に関する認識を明らかにし,それぞれの認識を比較することで連携を促進する方法を検討した.結果,OTとCWの「共有したい情報」と,「情報の共有化の促進要因」が明らかになった.さらに,それぞれの「共有したい情報」と「情報の共有化の促進要因」の関係を検討することで,OTとCWそれぞれの「情報の共有化の促進要因の構造」が明らかになった.「情報の共有化」は,OTとCWそれぞれの「情報の共有化の促進要因の構造」にそって行うことで,促進されることが示唆された.

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要旨:発達障害領域の作業療法士20名への,幼児の意味のある作業についてのインタビュー結果を質的に分析した.さらに先行研究との比較検討から,作業療法士が考える意味のある作業を検討した.結果,幼児の意味のある作業は,取り組む全ての作業であった.発達障害領域の作業療法士は,その作業を楽しい生活の獲得に向け工夫や段階づけをして支援していた.そして,親子とともにその作業に取り組み,生じる感情と経過を言葉で意味づけすることにより,幼児が社会の中で自信を持って生きていけるよう支援していた.作業療法士の考える意味のある作業は幼児と成人に共通しており,自ら意思表示し,生活史に関係し,自分自身を(再)構築する作業であった.

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要旨:国外で標準化されているADL-focused Occupation-based Neurobehavioral Evaluation(以下,A-ONE)の本邦での信頼性と妥当性を検討した.A-ONEは,5領域22項目のADL観察を通して神経行動学的障害を同定する評価法である.信頼性は,4名の対象者のビデオ映像を用い評価者3名で評価者間および評価者内信頼性を検討し中等度以上の一致率を認め,妥当性は,22名の対象者にA-ONEとADL評価および各種高次脳機能検査を実施し両者間に中等度以上の相関を認めた.しかし評価しなかった項目や日本人の生活習慣に合致せず検討できなかった項目があった.今後の課題は,日本版A-ONEを作成し,すべての項目で対象者数を増やし信頼性と妥当性を検討することである.

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要旨:手根管症候群(以下,CTS)患者の鏡視下手根管開放術(以下,ECTR)術後急性期のDisabilities of the Arm, Shoulder and Hand(以下,DASH)得点,およびそれに関連する因子を検討した.CTS患者56名を対象に,DASHの得点を術前と術後1週間に測定し,同時に関連因子として痺れ,痛み,触覚,手指可動域,握力,不安感を測定した.術後のDASHの総得点は,術前と比較して有意に増加,すなわち主観的上肢能力は悪化した.この術後のDASHの得点増加には,主に痛み,握力,不安感が影響していた.CTS患者のECTR術後急性期の主観的上肢能力の改善には,これらの因子に対する介入の重要性が示唆された.

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要旨:左半側空間無視および全般性注意障害患者の下衣着脱動作に対する応用行動分析学的アプローチの効果について,シングルケースデザイン(AB法)を用いて検討した.ベースライン期(A)には,動作の中断や麻痺側操作の忘れのため,工程ごとに言語指示や介助が必要だった.介入期(B)には,14工程の下衣着脱動作に対して,先行刺激(3段階のプロンプト:間接的言語指示・直接的言語指示・身体的ガイド),強化刺激,ターゲット行動の設定を用いて応用行動分析学的アプローチを行った.先行刺激なしで遂行できた工程数を数え,2SDのband法を用いて検討した結果,動作は有意に改善した.先行刺激,強化刺激,ターゲット行動の設定により,課題を明確化し,適した行動を形成することができたと考えらえる.

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要旨:擬似的再現療法(以下,SPT)とは家族からの語りをオーディオ・ビデオテープに録音・録画・再生し,家族の存在を擬似的に再現させることで感情を刺激し,快適さをもたらす療法である.今回,不適切に繰り返される発声行動である言語的混乱行動(以下,VDB)が出現していた認知症高齢者一症例に対し,娘からのビデオレターによるSPTと音楽刺激を実施した.結果として,SPTでは介入前と比較すると介入後にVDBの回数に有意な軽減を認めたが,音楽刺激については有意な軽減を認めなかった.本症例にとって,娘からのビデオレターによるSPTは感情に対して強く働きかけ,症例の心理的ニーズを満たす要因となったため,VDBが軽減したと考えられた.

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要旨:車椅子使用者に使うことができる評価法開発の予備研究として,座位姿勢を考慮した上肢機能の評価法を検討した.健常成人10名を対象に,計測座位姿勢を4種類設定し,提示された線の上をトレースする課題(線引きテスト)を行い,座位姿勢の違いが上肢の協調運動に与える影響を所要時間,筆跡面積,圧中心点の軌跡長で評価した.臀部と座面の接触面積が小さく左右で非対称となる座位姿勢が安定座位と比較し筆跡面積が有意に大きく,3種類の計測座位姿勢において,上記評価間に有意な相関関係を認めた.本評価法により上肢の協調運動を定量的に検出できるだけでなく,座位姿勢の違いによる上肢の協調運動への影響に姿勢制御が関与する可能性が示唆された.

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要旨:Constraint-induced movement therapy(CI療法)の要素を含む上肢機能訓練において,目標設定のために作業選択意思決定支援ソフト(以下,ADOC)を使用した.対象者は脳卒中後,回復期の50歳代の右片麻痺の男性で,職業はエンジニアであった.ADOCを使い,「職業活動:工具の操作,パソコンの操作」と「日常生活動作(ADL):箸の操作」を目標に設定した.目標設定後,クライエントは1日1〜2時間の上肢機能訓練を受けた.結果,上肢機能の改善度や,上肢の使用頻度と動作の質,目標に設定した作業の満足度は,臨床上意味のある最小変化量または最小可検量を超える改善を認めた.

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■欧文目次

基本情報

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作業療法
36巻2号 (2017年4月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

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