作業療法 25巻1号 (2006年2月)

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要旨:在宅での作業療法を成功させるには,介護者の介護負担軽減への支援は欠かせない.そのためにも,介護負担を正しく認識し評価する必要性は高いが,これまでに開発された介護負担尺度は幾多の問題を抱えている.作業療法士が介護者の介護負担に関する研究を行いその結果を共有するには,信頼性・妥当性・実用性を有する尺度を用いて,研究を進める必要がある.また,在宅生活に関わる多くの作業療法士にとって,簡便で的確に介護者の介護負担感を評価できる尺度は,在宅介護を支援し適切な作業療法サービスを提供する上で有用と考えられる.その意味で,近年開発されたJ-ZBI-8やFCSは,これらの問題に対応した簡便な尺度と考えられた.

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要旨:記憶障害を呈する症例に対し,受傷後2〜5ヵ月の第1期と受傷後1年5〜6ヵ月の第2期に分け異なる治療介入を行った.第1期では記憶障害だけでなく意識障害,注意障害,前頭葉症状も呈しており,環境調整,外的補助,残存記憶能力の効率化等の多面的な治療介入を行うことで,院内生活自立へと結びつけることができた.第2期では内的方略を導入し,視覚的および言語的手がかり法を用いて単一事例実験デザインにより各方法の治療効果を検討した.視覚的手がかり法は有効と考えられる一方,言語的手がかり法は混乱を生じさせる原因となる可能性が示された.この結果をもとに職場の環境調整を行い,復職へ結びつけることができた.

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要旨:人間の脳の左半球は,右手で道具を使用する時,特殊なネットワークが喚起されると考えられている.箸は日常生活の中でも身近な道具で,わずか2本の細長い棒から成る単純な食器であるが,巧みに操作するためには,高度で優雅なスキルが必要である.本研究の目的は,箸操作に関連する脳のネットワークを明らかにすることである.健常者6名を対象とし,H215OをトレーサーとしたPET(ポジトロン断層撮影法)を使用して,「箸つまみ」に関連する局所脳血流を測定した.その結果,一次運動感覚野(M1/S1),運動前野(PM),上・下頭頂小葉(BA7・BA39/40),視覚野(BA17/18/19),小脳では虫部,歯状核部,中間部,半球部に有意な賦活を得た.

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要旨:本研究の目的は,高齢障害者の学習ニーズを,比較的健康な高齢者(=老人大学受講者層)と比較しその特徴を明らかにすることである.ほぼ同様の内容の学習ニーズに関する質問紙調査から,高齢障害者334名と老人大学受講者682名のデータをもとに,11項目の学習領域へのニーズを比較分析した.その結果,高齢障害者群は,老人大学受講者群よりも関心のある領域と幅が狭く,交流や園芸・陶芸に関する学習ニーズは,老人大学受講者群よりも高率であった.高齢障害者群のニーズをADL能力別に見ると,全介助群で交流ニーズの値が高値であった.また高齢障害者群の過半数の者に,ボランティアなどの貢献的活動へのニーズがあることも示された.

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要旨:左中大脳動脈領域の梗塞により失行症状を呈した症例の職場復帰への関わりを報告する.症例は顕著な運動機能障害がなくADLはほぼ自立していたが,慣習的動作や物品使用時に拙劣,錯行為などの誤反応を認めた.治療アプローチでは物品を呈示し使用行為を促すというRothi行為処理モデルの視覚/物体入力経路の利用の基で同一の物品操作を反復し,基本的物品から業務と類似の動作を含む物品へ操作を段階づけ,セラピストの徒手的誘導も加えた.アプローチは体性感覚野や行為の意味システムを活性化させ,それによって症例の失行症状は軽減され職場復帰に至った.しかし行為概念系の問題は復職後も残存し,長期的な援助の必要性が示された.

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要旨:地域生活における障害者の再適応の心理的過程について実証的な研究は少ない.本研究では在宅脳卒中後遺症者を対象として心理的適応の構造モデルを構築し,共分散構造分析によりその妥当性の検証を行った.その結果,モデルの妥当性が検証された.在宅脳卒中後遺症者では,ADLの向上によって自分で実際に行動を起こし,様々な成功体験などをもつことにより自分に対する自己価値が高くなり,障害に対して受容し肯定的となることが実証された.ADLの獲得は間接的に本人の心理面に大きく影響を及ぼしており,心理的適応において重要な要素であることが示されたが,ADL向上が心理的適応に及ぼす限界も示唆された.

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要旨:精神障害者退院促進支援事業は,入院患者のうち症状が安定しており受け入れ条件が整えば退院可能である者に対して,社会的自立の促進を図るものである.2004年度広島県の本事業に参加する機会を得たので,作業療法士の立場から初年度の実践について報告をした.対象者の目標数は20名で,対象者数も20名であった.そのうち5名が事業を終了し,4名が退院した.退院を阻害する要因が家族や身寄りの無いことである場合には,本事業は有用であった.作業療法士の本事業への参画及び活躍が期待されるが,そのためには作業療法に対する理解が社会の中に浸透することや,個別治療を行える体制の整備等が課題である.

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要旨:テーブルの周囲に仕切りを設置する方法が好ましい環境設定といえるのか,仕切りの有無に対する主観的評価を調べることを目的とした.通所リハビリテーションを利用する高齢者12名を対象として,食堂のテーブルの周囲に仕切りがない設定と仕切りを使った設定の両者を使用した後,アンケート調査を行った.その結果,仕切りを設置した環境設定が有意に好まれ,プライバシーの確保や落ち着き,会話のしやすさといった項目が有意に高い得点を示した.仕切りを設置した食堂の環境設定は高齢者の主観的評価が高く,プライバシーや交流の向上につながる可能性が示唆された.

基本情報

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作業療法
25巻1号 (2006年2月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

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