作業療法 10巻4号 (1991年10月)

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 生きるということは,生きて活動するということにほかなりません.人はこの世に生み出されてから死ぬまでの数十年のあいだ,何らかの活動を繰り返し,活動を積み上げて,そこにいわば一つの〈生の物語〉を織り上げていきます.この生の物語を織物にたとえるならば,活動はそのひとつひとつの織り目です.それ次第で,織物の上に浮かび上がる織り模様は,彩り豊かなものにも,単調で貧しいものにもなります.そして私たちが求めているのは,なによりこの〈物語〉の豊かさであるはずです.

 そんなことは,大仰な比喩を借りて言わなくても,当然のことじゃないかと言われそうです.しかし,どうもこのごろ,このあたりまえのことがあたりまえでなくなっているような気がしてなりません,今日,私たちはなにかしら,このごく当然の〈生の物語性〉を失いつつあるように思えるのです.さらに言えば,物語性の基盤をなす〈活動〉がその意味内容を変質させてきているのではないかと思えてならないのです.

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要旨:知的退行に伴うADL機能喪失が子供のADL機能獲得の逆順序で起るか否かを調べるため特別養護老人ホーム入所者全員131名を対象にして長谷川式簡易知的機能評価とADL機能年齢水準の関係について横断的研究を行なった.その結果,知的評価とADL機能年齢水準との間に高い相関があり,知的低下の程度に対応して機能的能力の喪失が子供の発達の逆順序で起る可能性が示唆された.更に,知的機能評価に基づいた知的能力4群(正常,境界,準痴呆,痴呆)と機能年齢水準は簡単な直線式で関係を表わせる事がわかった.この研究によって長谷川式検査からの医学診断情報は直接患者のOT治療や介護に役立つ情報として利用できる可能性,並びにADL実行能力から知的能力の推定を行なうことの妥当性が示唆された.

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要旨:ゲルストマン症候群,構成失行,動作失行その他の高次神経障害をもつ,67歳の主婦の作業療法を担当した.中核的障害が,言語から視覚的イメージを想起すること,および位置・時間関係の理解と操作の障害にあると推定されたので,その面の指導を強調しつつ,生活技能の再学習を導いた.5ヵ月の訓練の結果,患者は,部分的自立を得て家庭に復帰した.終了時の検査成績は,ある範囲の自然回復があったことを示唆したが,書字における,練習した文字とそうでない文字の明らかな成績の相違は,訓練が実用水準の獲得に有効であったことを示す例証の1つと考えられた.ここに,本例の訓練内容と成果および考察した事項を報告する.

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要旨:作業活動にともなう運動やそれから起こる深部感覚刺激,素材や道具から受ける皮膚感覚刺激への反応は,人の生育過程における体験と深い関わりがある.それが幼少時に快の体験として記憶されたものであれば,なじみのある感覚として,また言語的知的な認知を必要としない刺激として,人の記憶や情動に直接作用すると考える.ピアノを弾くという作業活動の,脳機能モデルに基づいた固有の仮説機能を示し,その固有の機能と個人にとっての力動的意味が,記憶の回復に果たした相互作用について,症例を通して考察した.症例は,入院中自殺を図り,身体障害と失語症に併せ,事故以前の全ての記憶を失い,幼少時より習ったピアノをきっかけに記憶を取り戻した分裂病の男性である.

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要旨:就労経験を持つ,入院中の精神分裂病患者40名を対象に,離転職の原因を調べた.結果は,就労中の精神の変調(症状の出現)を直接の原因とした者が16名で,作業適応(身体,精神,環境各側面)不全18名,職業観の問題3名,その他8名(いずれも延べ数)計29名を直接の原因とする者に比べて少なかった.このことは自我の支持,補強がなされていれば,離転職には至らなかった者が多いことを示している.本論では,離転職に至る危機状況の分析を行い,援助の方法を具体的に述べた.

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要旨:男性精神分裂病患者1名に対して運動量調査を実施した.その結果,作業療法が実施された日のほうが,実施されなかった日に比較して運動量が増加していることがあきらかとなった.このことは入院患者の適度な運動量維持のため,作業療法が有効であることを示すものであると述べた.また,今後に残された課題等について若干の考察を加えた.本論の意義は,作業療法が実施されることによる患者への運動量供給の増加をカロリーによる数値で示したことにある.

基本情報

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作業療法
10巻4号 (1991年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

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