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Ⅰ 高度な専門化と社会的支援の乏しさの乖離
1990年代以降,欧米の犯罪心理学・司法精神医学領域では,再犯を主要なアウトカムとした研究が蓄積され,とりわけ性犯罪分野は,リスクアセスメントに基づく介入や理論的枠組みの検討を通じて研究と実践を牽引してきた。一方,日本では海外の知見が体系的に整理される前に,認知行動療法,依存症モデル,薬物療法,条件づけ理論,ストレングスモデルなど,個別の「介入方法」が断片的に導入されてきた。その結果,性犯罪行為の多様性や背景に応じたアセスメントと介入選択が十分に共有されないまま,実践者は迷いを抱え,地域における支援資源は限られた状態が続いている。加えて,性犯罪は他の犯罪より恐れや嫌悪といった強い否定的感情を喚起しやすく,理解困難なものとして受け止められてきた。性犯罪による被害の深刻さが社会的に認識され,法制度が整備されてきたことは重要な前進であるが,こうした感情的背景の上に法整備が進んだことで,結果として加害行為者に対する単純な厳罰感情が助長される側面もある。そのことが,加害者の孤立を深め,司法手続きに至るまで支援へのアクセスをためらう状況を生み出しているともいえる。
筆者は決して加害行為を擁護する立場には立っていないが,適切な支援は誰にとっても必要であり,それによって次なる被害を防ぐという視点が重要であると考えている。本稿では,地域で性問題行動に取り組む一つの実践として,筆者が所属する一般社団法人もふもふネットの取り組みを紹介する。これは特定の成功例や標準モデルを提示するものではなく,地域で実践を模索する人々が自らの文脈に応じた取り組みを構想する際の参考となる一つの実践例を共有することを目的とする。

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