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背景と意義
摂食嚥下障害は,従来,脳血管疾患や神経・筋疾患,頭頚部がん等の器質的・構造的疾患が主な原因としてとらえられてきた.しかし,超高齢社会を迎えた現在では,加齢や多疾患併存に伴う全身的な機能低下が嚥下機能に及ぼす影響が注目されている.その中心にあるのが,筋力や骨格筋量,身体機能の低下を特徴とする「サルコペニア」と,その前段階である「フレイル」である.サルコペニアは全身の骨格筋に影響を及ぼすため,嚥下関連筋群も例外ではなく,サルコペニアに起因する嚥下障害が臨床的に認識されてきている.
嚥下関連筋の筋力の1つとして「舌圧」がある.舌圧とは舌を口蓋に押し付ける力であり,舌機能を定量的に評価できることから摂食嚥下障害の臨床および研究において急速に普及している.近年は 「オーラルフレイル」 や 「口腔機能低下症」 といった概念も浸透してきており,口腔機能低下症は歯科領域において保険病名となっている.その診断項目の1つに 「低舌圧」 が含まれている.舌は,咀嚼,食塊形成,咽頭への送り込み等,摂食嚥下の各過程において重要な役割を担っており,舌圧が低下するとそれらに影響を及ぼす可能性がある.
他方,全身の筋力低下を包括的かつ簡便に評価する方法として,「握力」が極めて有用である.握力は非侵襲的かつ全身の筋力を鋭敏に反映する指標としてすでに確立されている.フレイルの評価基準(J-CHS基準) 1)(図1)や,アジア人のデータを基に作成されたアジアサルコペニアワーキンググループ(Asian Working Group for Sarcopenia;AWGS)の診断基準(2025年版) (図2) 2, 3)にも組み込まれている.
このようにフレイルやサルコペニアといった超高齢社会特有の病態に関連する嚥下障害をとらえるうえで,舌圧および握力の測定は摂食嚥下障害領域において簡便かつ重要度が高い.

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