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はじめに
プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)は,消化性潰瘍,逆流性食道炎,抗血栓療法時の消化管出血予防など,日常診療できわめて身近な薬剤である。その有効性は疑いない一方,以前から急性間質性腎炎(acute interstitial nephritis:AIN)の原因薬剤として知られてきた。さらに2010年代以降は,急性腎障害(acute kidney injury:AKI)にとどまらず,長期使用と慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の発症・進展との関連を示す報告が相次ぎ,PPIの腎安全性が改めて注目されるようになった。なかでも,2016年にJournal of American Medical Associationに掲載された「proton pump inhibitor use and the risk of chronic kidney disease」は,大きな関心を集めた1)。本研究は多施設共同コホートとして,PPI使用群とヒスタミンH2受容体拮抗薬(histamine H2 receptor antagonist:H2RA)群のCKD発症リスクを比較したものであり,10,482人を対象に,H2RA群に比してPPI群でCKD発症率のハザード比(hazard ratio:HR)が1.45[95%信頼区間(confidence interval:CI),1.11-1.90]と報告された。もっとも,その後には関連を支持する研究だけでなく,交絡を厳密に調整すると関連が弱まる可能性を示す研究も現れており,この問題は単純に結論づけられるものではない。本稿では,PPIと腎障害をめぐる主要な疫学研究を概観し,推定機序と実臨床での向き合い方について整理する。

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