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は じ め に
膝前十字靱帯(ACL)損傷の治療においては,膝関節の「不安定性」をいかに制御するかが本質的課題である.ACL不全膝の不安定性には,Lachman testで評価される前方不安定性と,pivot-shift test(軸移動テスト)で評価される前外側回旋不安定性があり,これらの正常化がACL再建術に求められる.1980年代に導入されたKT measurementは,Lachman testやanterior drawer test施行時の脛骨前方移動量を定量評価するシステムであり,健患差2~3mm以内が術後目標値として広く受け入れられてきた.その結果,ACL再建術の発展とともに前方不安定性は十分に制御可能となった.
しかし2000年代初頭,KT measurementで良好にもかかわらず,pivot-shiftが残存する症例が散見されるようになった.Pivot-shift testは,患者が日常生活やスポーツ活動で訴える「膝崩れ(giving way)」を鋭敏に反映し,術後満足度とも強く関連することが明らかとなり1),この不安定性の抑制が次なる課題となった.そこで本邦で開発された解剖学的二重束再建術2)は,従来の一重束再建術よりもpivot-shift制動に優れることが,ロボットを用いたcadaver研究により示され3),世界的な注目を集めた.
一方,実臨床でpivot-shiftの評価は徒手検査に依存し,主観的で粗い4段階評価しかなかった.このため,術式間のわずかな差異を検出することや,「みたこともない誰かが行った徒手検査」の結果を世界的に認めてもらうことには限界があった.客観的かつ定量的なpivot-shift評価法の確立は,ACL損傷・再建術に携わる臨床医の切実なニーズであり,これが本電磁気センサーシステムを開発する大きなモチベーションとなった.
このような臨床的課題の克服には医学のみならず工学的視点が不可欠である.われわれは幸いにも,当時,工学博士である長宗高樹先生が神戸大学整形外科に在籍しており,電磁気センサーを用いた膝関節動作解析システムを独自に開発しうる環境に恵まれていた.

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