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は じ め に
医師として働き始めて最初にぶつかる壁の一つにプレゼンテーションがある.毎年4月になると朝のカンファレンスや回診,そして担当した患者や家族に治療や手術の説明を行う際に若手医師が苦労している光景をしばしばみかける.これには医学教育が大きく影響していると筆者は考えている.わが国の医学教育はどちらかというとインプット(知識を頭に入れること)が重要視され,アウトプット(その知識をまとめて発表すること)の機会は非常に限られている.国家試験を合格するまではインプットに全力を注ぐことが医師免許証への最短ゴールとなるが,一度医師になった途端にアウトプットを臨床の現場では求められる.そのため研修医教育に携わる者として毎年プレゼンテーションの講義を実施しているが,最初からアウトプットに自信をもっている者は皆無である.いたとしても知っている限りの知識をメリハリなく話し,制限時間内に情報を効率的に提供できる者はいない.
しかしプレゼンテーションスキルは生まれもった能力ではなく,後天的に身につけることができるスキルであることを理解しなければならない.ただ単にコミュニケーション能力が高いということとは違うということである.そこには「型」があり,パターンに沿って話を組み立てていき,決められた時間に必要な情報をわかりやすく聴衆に提供(プレゼントを渡す)することがプレゼンテーションの本質である.その補助的役割をはたすものがスライドであり,決して主役になってはならず,あくまでもサポートするものという認識が必要である.そのためプレゼンテーションの際にスライドを聴衆に読ませるのは御法度で,みた瞬間に理解できる構成でなければならない.その構成を理解するためには必読書なるものがあり,帝京大学の渡部欣忍先生が書かれた『あなたのプレゼン誰も聞いてませんよ!』(南江堂)とその続刊は必読である.10年以上前に発売されたが,本質をついているので今も色褪せることなく,筆者にとってもスライドづくりの教科書である.ぜひ購入していただきたい.
さて,最近話題の人工知能(AI)スライド作成であるが,昭和生まれであっても筆者は決して否定はしない.できあがったものをみると,時間をかけて作成した筆者のスライドよりもみやすいことがままあるのも事実である.しかし原則として他人の作成したスライドは話しにくく,スライド作成最中にそのスライドで話す言葉も考えながら作業しているので,一度自身で作成してブラッシュアップするのには用いてはいるが,最初からつくってもらうことはない.ただし,昨今のAIの進歩を鑑みると,自分好みのスライド作成をディープラーニングさせて実行することが数年先には可能となっているかもしれないと密かに期待はしている.

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