扉
コミュニケーションとプレゼンテーション
鎌田 恭輔
1
1旭川医科大学医学部脳神経外科
pp.805-806
発行日 2014年9月10日
Published Date 2014/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436102323
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私は元来好きなことのみに集中して頑張ることができない性格でした.脳神経外科には漠然とした憧れを抱いて入局しましたが,当時は特に確固たる信念をもち合わせていたわけではありませんでした.ただ入局してからは,8人の同期と切磋琢磨しながら遮二無二手術に参加していました.専門など考えることもなく,日々の定時・臨時手術に加え,大学外の総合病院での勤務時は腹部,整形外科手術の助手としても参加させていただいていました.しかし,その結果,手術への興味ばかりに偏り,患者とのコミュニケーションは少なくなり,患者の“痛み”をわかる医師とはほど遠い姿である自分へのコンプレックスが徐々に大きくなってきました.
入局から4年目の春,臨床医を続けることへの不安を抱きながらも,かねてより憧れていた北海道大学電子科学研究所で研究することになりました.ここでは医師としてではなく,研究者として基礎工学,電気回路を含む生体磁場計測研究に没頭する覚悟でした.しかし,師事した工学部の教授からのアドバイスは「医者は臨床の研究をしなさい」という一貫したものでした.その結果,今まで気づかなかった患者の“痛み”を思い,臨床現場の限界などを顧みることになりました.まったくわからなかった超伝導力学などについて,工学部の同僚が医学部の人間にもわかるようにかみ砕いて丁寧に説明してくれました.分野の異なる専門家との対等なコミュニケーションと患者への思いを抱き続けながらの研究生活で,その後も臨床医として医工連携研究に携わることになった私の医師人生の礎となる貴重な経験でした.
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