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はじめに注1)
Graham Musicは,ロンドンに拠点を置く子ども・青年心理療法士であり,成人心理療法士である。彼は精神分析理論を基盤に持ちながらも,アタッチメント理論や神経科学の知見を有機的に結びつけ,マインドフルネスの技法を柔軟に取り入れている。
彼はこれまでに,数多くの本を出版している(Music, 2011;Music, 2019他)。さらに近年では,2023年の心理臨床学会第42回大会に招聘されており,彼の実践がわが国でも注目されていることがうかがえる。しかし,彼の実践は,精神分析にマインドフルネスを取り入れるような斬新なアプローチであるため,読者に誤って理解されたり,十分に吟味されないままセラピーに導入されたりする危険性がある(林・他,2023)。
そこで本稿では,彼の近著の一つである『Respark』(Music, 2022)を紹介する。「スパーク」とは,電気の比喩である。エネルギーが高くて落ち着けない人もいれば,弱すぎる人もおり,多くの人はこれらの間で揺れ動く。そして,本書では三つのスパーク,すなわち,健全なスパークを誘発するような体験を経験したことのない「アン・スパーク」,トラウマや恐怖によって心が打ち砕かれた「デ・スパーク」,エネルギーはあるが役に立たないあり方で発火している「ミス・スパーク」について,さらにはそうした状態から「リ・スパーク」するプロセスについて,事例を踏まえながら説明されている。本稿ではそれらの内容を簡単に紹介したうえで,Musicの実践がその斬新さゆえに生じうる誤解や過度な一般化を回避するために,彼が本書の中で取り上げていない他の精神分析理論から若干の考察を加え,彼の実践の臨床的意義を改めて問い直したい。

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