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はじめに
鳥取大学大学院医学系研究科附属臨床心理相談センター(以下センター)は,同研究科臨床心理学専攻で学ぶ学生の公認心理師・臨床心理士取得のための臨床実習機関として位置づけられ,年間延べ628件(2024年度)の相談を教員と学生で行っている。本専攻は本邦で初めて医学部に設置された心理師養成の大学院専攻であり,患者の多くは医療機関からの紹介となる。センターは大学院医学系研究科の附属機関ではあるが,附属病院とは組織的に別機関であり,相談料も相談者の自費負担となっている。学生も相談員としてセンター,附属病院,その他の外部機関で臨床心理学教員,心理士や担当医師の指導を受けながら両施設で実習を行っている。
本事例は,自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)があり,不登校を主訴に来談していた姉の弟(9歳)であり,山口ら(2022)として症例報告を行ったケースである。本事例は,学校の給食指導後から,食後の嫌悪的な結果と食物による感覚的な特徴の回避という回避・制限性食物摂取症(Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder:ARFID)症状を呈し入院にて心理教育とトークンエコノミー法を用いた行動的介入を行った。
ARFIDとASDの併発例の治療方法としては,従来行われてきた摂食障害の治療に加えて,ASDの特性を考慮して,具体的な分かりやすい指示や,見通しをつけること,視覚的な情報の提示,対人スキルの向上を目指した取り組み等の療育的支援を含む方略の必要性が指摘されている(作田,2021)。入院中の親や本人への心理的介入は,当時センターの学生相談員であった第二著者が,第一著者のスーパービジョンを受けながら,担当主治医と連携して行った。
また摂食障害の治療においては身体面のモニタリングが欠かせず,さらに心理社会的側面の支援が求められるため多職種での連携が不可欠である。Sharpら(2017)は小児の摂食障害において,少なくとも心理士,医師,栄養士,言語聴覚士もしくは作業療法士を含む医師,心理士,栄養士など多職種による介入を行うことを推奨している。
ARFIDとASDのある児の治療に関しては,家族を含めた多機関連携の重要性が指摘されている。本事例では,大学院生が臨床心理指導教員の指導を受けつつも,病院内の多職種連携は主治医が中心になって行った。院内のケース会議においては主治医や医療スタッフが連携し,入院中の児に対する治療的介入を実施する他,入院病棟からセンターへの通所,退院後のセンターでのフォローを行った。本人・親への心理的アプローチ,また家族,病院,心理機関との連携のあり方という観点から,あらためて本症例を見直すことで,児童入院病棟における心理的介入についての新たな知見と課題を整理してみたい。

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