特集 リカバリーを目指す認知療法(CT-R)を実臨床で生かす
薬物依存と再犯防止の先に―刑事施設における回復支援
武藤 みやび
1
1新潟刑務所矯正処遇部門(教育)
pp.449-454
発行日 2025年8月5日
Published Date 2025/8/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt51040449
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はじめに
2016年12月に再犯防止推進法が公布・施行され,2023年3月の第二次再犯防止推進計画には「薬物依存症は,薬物の使用を繰り返すことにより本人の意思とは関係なく誰でもなり得る病気であり,回復可能である」と明記された。厚生労働省は2017年4月より依存症対策事業を開始し,依存症の治療や回復支援に携わる専門家の育成,相談事業の拡充,情報発信の向上などを目指している。刑事施設においては2006年度から薬物依存などの事情により,改善更生および円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対し改善を図るために特別改善指導を実施しており,その一部を非常勤の処遇カウンセラーが担っている。
筆者は処遇カウンセラーとして集団に対する認知行動療法に基づく薬物依存離脱指導の選択プログラムを担当している。症状や障害があってもその人らしく社会の一員として生きていけるようアプローチするリカバリーを目指す認知療法(以下CT-Rと略)は,現在の矯正教育が目指す更生支援と社会復帰を実現可能にする。また,CT-Rは夢や希望,つながりを手掛かりに全人的な関わりをしていくがこれは依存症からの回復に欠かせない。本稿では筆者の取り組みのうちCT-R的なアプローチを紹介する。

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