特集 はたらく人たちのウェルビーイング―‘はたらき方’というよりも,‘企業風土’の改革を
ウェルビーイングのための性差医学・医療,ジェンダード・イノベーション,フェムテック
片井 みゆき
1,2,1
1国立大学法人政策研究大学院大学片井研究室
2国立大学法人政策研究大学院大学保健管理センター
pp.21-27
発行日 2025年2月5日
Published Date 2025/2/5
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Ⅰ 性差医学・医療
1.性差医学・医療とは
生物学的性(Biological sex),社会的性(Gender),ライフステージによる内分泌環境の変化は,健康や疾患に影響を与える。性差医学・医療は,疾患の病態解明・診断・治療・予防において,「生物学的性差」「社会的性差」「ライフステージに伴う性ホルモン分泌変動の影響」に配慮し,診療の質と精度の向上を目指すものである。個々の患者に最適な医療を提供する個別化医療の第一歩として性差医療は重要な役割を持ち,医療者が性差やライフステージに対する視点を持つことが大切である。
性差医学の成り立ちを振り返ると,1960~70年代に妊婦が服用した薬が出生児に影響を及ぼしたサリドマイド等の薬禍を受け,1977年以降は世界中で妊娠可能な女性を薬剤治験に組み込むことが禁止されたことに遡る。これは重要な措置であったが,結果として,女性生殖器・乳腺悪性腫瘍以外の生理医学的研究が主に男性を対象として行われ,女性特有の健康問題や疾患の治療に関するエビデンスが不足する事態となった。こうして失われたエビデンスを補完するために,性差医学・医療の視点が重要となる。
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