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はじめに
地域住民の健康と幸せのために、最前線で活動されている保健師の皆様に、ウェルビーイング学会についてご紹介できる機会をいただいたことを、とてもうれしく思います。
筆者の前野は、もともと工学系出身なので、幸せなものづくりや、人々を幸せにする家づくり・町づくりなどを研究してきました。そのベースとなるものがwell-being and happiness studyと呼ばれる幸福学です。また、秋山は、精神看護学が専門で、ポジティブ心理学の考え方を看護に取り入れることを目指しています。人をケアする人(看護職や家族介護者など)のウェルビーイング(well-being)を向上させるために、セルフ・コンパッションという概念を研究・普及しています。
地域で保健活動をされている皆さんは、学生時代から「ウェルビーイング」という概念に慣れ親しんできたと思います。そして現在、健康寿命の延伸のために、地域の人々が身体的に健康であることはもちろん、生きがいを持って活き活きと生活できるように、活動していらっしゃることでしょう。このように看護においてはなじみのあるウェルビーイングですが、一般の人々にもウェルビーイングについてもっと知っていただきたいと思い、筆者らはウェルビーイング学会を設立しました。
現代は、先行きが不透明で将来の予測が困難であるという、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代と言われています。産業革命以来、私たちは経済成長こそが素晴らしいと思って発展してきました。でもその結果、環境問題、戦争の問題、貧困の問題、少子高齢化問題など、さまざまな問題が起こりました。それらの諸問題を受けて、現在、経済的な豊かさだけではなく、精神的な豊かさや健康を含めて幸福を捉えるウェルビーイングという考え方が、重視されてきています。
産業革命以来のこの大きなパラダイムを、もっと人々のウェルビーイングを作るパラダイムに転換して行くべきではないかと、かねてより思っていました。そのためには、広く一般の人々にもウェルビーイングを知っていただく必要があり、この学会を作りました。
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