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I はじめに
日本における外国人住民の数は年々増加しており,2024年末の在留外国人数は376万8,977人(前年末比35万7,985人,10.5%増)で,過去最高を更新している(出入国在留管理庁,2025)。労働・留学・結婚など多様な目的で来日する人々の背景は多様化しており,それに伴って言語・文化・生活習慣の違いに起因する精神的ストレスや孤立感,適応困難などが深刻化していることが予想される。
しかしながら,日本の心理臨床現場においては,文化的・人種的に周縁化された集団(culturally and racially marginalized groups)に対する十分な配慮や,「文化的応答性(cultural responsiveness)」に関する議論が十分になされていない。心理援助職の育成課程においては,多文化コンピテンシーを育てる教育が十分に提供されておらず,多くの心理支援専門職が「文化の違い」に正面から向き合う機会を持たないまま,支援の現場に立たされている。このように,日本の心理臨床において,文化的・人種的多様性への対応はいまだ発展途上にある。支援現場において文化的・人種的に周縁化されたクライエントが直面している困難や,専門職側の課題を明らかにするためには,当事者であるクライエント自身の視点に基づいた知見が不可欠である。
このような背景のなか,本稿で紹介するSadusky et al.(2023)の系統的レビュー論文は,文化的・人種的に周縁化されたクライエントが,メンタルヘルス専門職(Mental Health Practitioners:以下MHP)に対してどのような経験や評価をしているのかを明らかにしたものである。本レビューは,10カ国から収集された48の質的研究をもとに,クライエント側の視点に焦点を当てて分析を行なっている。このような視点はこれまでの「支援者中心」の議論に一石を投じるものとして,日本における多文化間臨床実践の展開にも有意義な示唆を与えると考えられる。

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