特集 村瀬嘉代子1935-2025
日暮れて道遠し,されど覚悟は持ち続けよう,小さな勇気を添えて
田中 康雄
1
1ミネルバ病院
pp.126-131
発行日 2025年9月10日
Published Date 2025/9/10
DOI https://doi.org/10.69291/cp25080126
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I はじめに
2025年1月,村瀬嘉代子先生のご訃報が届いた。僕は事実を受け止めつつ,こころのなかでは今もってなににも向き合えていないままで居る。
2月に金剛出版から原稿依頼をいただいた。急ぎ受諾の連絡を入れながらも,ずっと考えることができないままでいる。
依頼は「先生の業績を回顧し,追悼の辞に留まることなく,その教えが,(僕の)思想,仕事にどのような影響を与えたか」とある。僕が今,書けるとしたら,先生から受けた有形無形の教えを少しだけ振り返ることでしかない。
原稿を書くことを決めてから,いつも以上に先生を常に僕の心に置きながら,仕事を続けていた。先生ならこのときどうお感じになり,どんな言葉で語るだろうか,ずっと考えている。
僕のなかに,確かに存在する「村瀬嘉代子先生」と,その都度アクセスし心の内で対話を続けるという嬉しさに哀しみが加わった。僕はそれを痛感している。
この原稿の乏しさこそ,僕が弟子と呼ばれるに値しないことを明らかにすることではあるが,きっと先生からは「お褒めの言葉」のメールが届くだろう。
ありがたいことに,いつも先生は,そんなふうに僕を護ってくださってきた。

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