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I 障がいのある人の性暴力被害のリスク
障がいのある人は性暴力被害におけるハイリスク群であると言われています。
発達障がいや知的障がいを持つ人を対象とした性暴力に関する海外の実態調査や研究報告は多く,発達障がい児では性暴力被害にあうリスクは障がいのない子どもに比べて2.9倍高い(Jones et al., 2012),成人では性暴力被害にあった割合は男性障がい者8.8%,男性健常者6.0%,女性障がい者25.6%,女性健常者14.7%で,女性で障がいのある人が被害にあうことが一番多い(Mitra et al., 2016),知的障がいを含む発達障がいの女性の70%が性暴力を受けたことがある(Sobsey & Doe, 1991)など,障がいのある人の性暴力被害の多さが報告されています。
日本では障がいのある人を対象とした性暴力被害に関する研究はまだ少ないですが,内閣府男女共同参画局(2018)による「若年層における性的な暴力に係る相談・支援の在り方に関する調査研究事業報告書」においては,性暴力被害者268件のうち,障害の有無に関する回答のあった事例127件については,障害者手帳の有無にかかわらず,障害「あり」と見受けられる事例が70件,そのうち精神障害19件,発達障害16件,軽度知的障害9件であったことが報告されています。また,性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターを対象とした「障害のある性暴力被害者の被害状況と相談支援の現状と課題」では,精神障害45.2%,発達障害24.7%,知的障害22.6%が被害にあっており(岩田,2023a, b),加えて岩田・中野(2019)による発達障害と診断された人とその疑いのある人を対象としたアンケート調査でも,回答者32名中23名(71.9%)が何らかの性暴力被害にあっていると報告されています。
なぜ障がいを持つ人が性暴力被害にあいやすいのでしょうか。本稿では主に知的・発達障がいを中心に考えてみます。

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