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I 司法面接的手法による協同面接
どもが虐待や性暴力の被害にあった疑いがある時,子ども(および障害者など社会的弱者)から被害について聴き取るために用いられる司法面接(forensic interview)と呼ばれる手法がある。司法面接の目的は,①子どもからの聞き取りが子どもに与える負担をできる限り少なくすること,②子どもから聞き取る話の内容が間違った誘導の結果(記憶の汚染)ではないかという疑念がもたれる可能性をできるだけ排除すること,そして,③子どもの関わった事件が何らかの作為による虚偽の話ではなく実際にあった出来事であるかどうかを検討するための情報を得ることである(司法面接支援室,n.d.)。具体的な手法としては,誘導の影響を排除するため子どもの自由報告を促しながら情報を収集することが重視され,オープン質問と呼ばれる働きかけが推奨される。また,面接は原則1回で実施され,ゆるやかに構造化された一連の面接の流れ(プロトコル)に沿って進められる。そして,面接の様子は録音・録画し記録される(司法面接の詳細は仲(2016)を参照)。
この司法面接は多機関が連携しながらチームで実施されるため,多機関・多職種が連携できるシステムを確立し,そのシステムの中に司法面接を位置づけることが重要である(田中,2020)。このような多機関連携の中で司法面接の手法を用いて実施される面接は,協同面接(または代表者聴取)と呼ばれる。国内では児童相談所や警察・検察といった福祉・司法機関の連携のもとに導入が進められ,近年では年間約2,000件の協同面接が実施されている(法務省,2022)。子どもへの性暴力は他者の目が届きにくい場面で起こりやすいことから,子どもが語る被害に関する証言がその後の対応を方向づける重要なカギとなることが多い。司法面接を含む多機関連携システムは,子どもの証言を適切に取り扱うことにより,子どもを守ることを目指すものである。

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