連載 臨床心理学・最新研究レポート シーズン3
哲学的健康―パーソン・センタードな対話法による患者・クライエントの個人的哲学の顕在化
藤井 翔太
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1都留文科大学教養学部
pp.761-767
発行日 2024年11月10日
Published Date 2024/11/10
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I はじめに
「救い」や「癒やし」を求めて哲学に惹かれる人は,今も昔も少なくない。ビジネスパーソン向けに人間関係やコミュニケーションを指南する通俗的な哲学書は,ひっきりなしに世に送り出されている。あるいは,精神科医や心理カウンセラーが,自らの専門領域に資する洞察を得ようとして,関連する哲学の議論を参照したいと考えることもあるだろう。
こうした需要に応答する形で,高度に専門化された制度的な分野としての「哲学」に自閉することなく,具体的な有用性を備えたリソースとして哲学を捉え直そうという動きが,国内外で注目を集めている。現実の社会問題や文化事象を分析し応答しようとする応用哲学や,教育目的で哲学を活用する子どものための哲学(P4C)・哲学プラクティスといった取り組みが,その一例である。また心理療法の文脈では,哲学を治療的・総合的な生の技法として実践していた古代哲学を,とりわけ認知行動療法の先駆として再評価する論者も登場してきている(Robertson, 2020)。
本稿では,同じく古代哲学からインスパイアされた哲学者・哲学プラクティショナーのルイス・デ・ミランダ(Luis de Miranda)が提唱する「哲学的健康」という概念と,彼が考案した個人的哲学の測定・構築メソッド「SMILE_PH」を紹介し,その意義と今後の方向性について簡潔に考察する。

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