投稿論文 展望・レビュー論文
英国を中心とした欧州諸国の保育現場における精神分析的視点の応用に関する研究動向―我が国の保育臨床への活用の手がかりとして
西野 将史
1
1東京女子大学 特任研究員
キーワード:
保育現場
,
精神分析的視点
,
タビストック方式乳児観察
,
ワーク・ディスカッション
,
社会的防衛
Keyword:
childcare setting
,
psychoanalytic perspectives
,
infant observation
,
work discussion
,
social defense
pp.748-758
発行日 2024年11月10日
Published Date 2024/11/10
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本稿では,英国を中心とした欧州諸国の保育現場で精神分析的視点がどのように活用され,何をもたらしているかについて明らかにするべく,研究動向をレビューした。分析対象となった14篇の文献を概観したところ,精神分析的視点を活用したワーク・ディスカッションと乳児観察は,主に調査研究の方法の一つとして用いられていることが明らかになった。保育現場に精神分析的視点を持ち込むことの独自性とは,保育者および保育所組織が無意識的に用いている社会的防衛を緩和させ,保育者の子ども理解のリフレクションを深めることである。ただ,馴染みのない精神分析的視点や考え方に基づいて観察し,話し合うということに対する保育者の戸惑いや不安にも配慮する必要がある。臨床実践として活用している我が国の現状を踏まえると,臨床的有効性を発信していくと共に,先行研究で示されているような実証研究の取り組みも重要になるだろう。

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