特集 「信じたい」という心理―心の病から陰謀論まで
「私は騙されない」―特殊詐欺
西田 公昭
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1立正大学心理学部
pp.683-687
発行日 2024年11月10日
Published Date 2024/11/10
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I はじめに
“特殊詐欺”と呼ばれる詐欺被害は,面識のない不特定の者に対し,電話その他の通信手段を用いて,預貯金口座への振込みその他の方法により,現金等をだまし取る詐欺である(西田,2018)。警察庁(2018)によれば,振り込め詐欺(オレオレ詐欺,架空請求詐欺,融資保証金詐欺および還付金等詐欺)および振り込め詐欺以外の特殊詐欺(金融商品等取引名目の特殊詐欺,ギャンブル必勝情報提供名目の特殊詐欺,異性との交際あっせん名目の特殊詐欺およびその他の特殊詐欺)を総称したものを指すというが,いずれにしても,メディアを媒介した非対面コミュニケーションを利用して,犯人が何者かになりすますことでするのである。そして現在では,これら非対面の詐欺がもはや特殊というよりも一般となってしまっている。
このような詐欺被害は2000年代初頭に始まり,現在も続く。警察庁(2024)によれば,令和5(2023)年の特殊詐欺の認知件数は19,038件(前年度比+1,468件,+8.4%),被害額は452.6億円(+81.8億円,+22.0%)と,前年に比べて総認知件数および被害額は共に増加したという。この10年を振り返っても,年間の認知件数は2万件を前後していて深刻な状況が続いているが,今後もAI発展と普及などによって騙す側の技術の向上が予測され,また消費社会の非対面化のさらなる進展によって,犯人の増加が非常に懸念される。

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