Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「結婚」—自身を殺そうとした母親の言葉に呪縛される結婚詐欺師の物語
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.1065
発行日 2017年10月10日
Published Date 2017/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201130
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「結婚」(監督/西谷真一)は,結婚詐欺師・古海(うるみ)健児(ディーン・フジオカ)とその被害者たちの物語.なんといっても全篇に漲るB級的佇まいに魅かれる.それは往年の大映映画の空気感であり,ディーン・フジオカはさながら市川雷蔵である.
本作は「浜辺の歌」からスタートし,最後の大団円でも「浜辺の歌」が流れる.「二十四の瞳」(監督/木下惠介:1954)でも同曲は2回使われる.1回目は修学旅行の船上.これは途中で切られる.2回目は,ラストのかつての教え子たちによる歓迎会という大団円でフルに使われる.このシーンの役者たちの視線の落とし方を援用したのが本作であり,筆者はそこに作り手の意図を感じた.すなわち,「二十四の瞳」に感涙したであろう母親世代,翻って母親一般への思慕が隠されているとみた.
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