論評
タスクシフトによる医師の労働時間短縮と生産性向上の検証
荒井 耕
1
1一橋大学大学院経営管理研究科教授
pp.10-17
発行日 2025年7月11日
Published Date 2025/7/11
DOI https://doi.org/10.57527/JUNPO2969004
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1 問題意識 現在、病院界においても医療職を中心に人手不足に陥っており、今後も中長期的に人手不足がさらに進行すると予測されているため、業務効率化などを進めて労働生産性を向上させていく必要性が高まっている。また病院職員の継続的な処遇改善も求められており、そのためにも労働生産性の向上は重要となっている。 こうしたなか、厚生労働省は、「医療・福祉サービス改革プラン」(厚生労働省 2019)を策定し、2040年に向けて単位時間サービス提供量(=サービス提供量÷従事者の総労働時間)としての生産性を5%以上、医師については7%以上、改善させることを目指している。その際、厚生労働省(2019)は、①ロボット・AI・ICT等の実用化推進など、②タスクシフティングなど、③組織マネジメント改革、④経営の大規模化・協働化、の4つの改革を通じて生産性の向上を図るとしている。特にタスクシフトについては、2つ目の改革項目として取り上げられているだけでなく、3つ目の改革項目である組織マネジメント改革においても「タスクシフティング等に関する好事例を創出し、事例の分析を行う。また、好事例の収集、周知を行うことで、横展開を図る」(厚生労働省 2019)と言及されており、生産性向上のための重要な手段として大きな期待が寄せられている。

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