特集 心不全パンデミック時代の新しい診療知を求めて
セミナー 知っておいてほしい新しい心不全診療のポイント
がん治療関連心機能障害(CTRCD)の診断と管理─腫瘍循環器学とは?─
及川 雅啓
1
,
竹石 恭知
1
1福島県立医科大学循環器内科学講座
キーワード:
▶がんと心血管疾患は共通の危険因子を持ち,両者を横断的に扱う腫瘍循環器学の重要性が高まっている.
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▶CTRCDはLVEF低下だけでなく,BNPやトロポニン上昇などの潜在性心機能障害も含む概念である.
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▶アントラサイクリン系薬剤によるCTRCDは用量依存性に発症する.
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▶HER2阻害薬によるCTRCD発症リスクは,アントラサイクリン系薬剤併用で上昇する.
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▶VEGF阻害薬は高血圧と血管内皮障害により,CTRCDや血栓症を引き起こす.
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▶GLSはCTRCDの早期検出に有用で,低下例では心保護療法導入の判断に役立つ.
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▶irAE心筋炎は重症化しやすく,筋炎や重症筋無力症を併発しやすい.
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▶がん関連血栓症は抗凝固療法を検討するが出血リスクにも注意が必要である.
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▶CTRCDを発症した場合は,心不全治療を開始しながら,がん治療継続の可否を協議する.
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▶がん治療医・循環器医との連携によって,「がん治療の完遂」と「長期心血管予後の改善」を両立させることが求められる.
Keyword:
▶がんと心血管疾患は共通の危険因子を持ち,両者を横断的に扱う腫瘍循環器学の重要性が高まっている.
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▶CTRCDはLVEF低下だけでなく,BNPやトロポニン上昇などの潜在性心機能障害も含む概念である.
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▶アントラサイクリン系薬剤によるCTRCDは用量依存性に発症する.
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▶HER2阻害薬によるCTRCD発症リスクは,アントラサイクリン系薬剤併用で上昇する.
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▶VEGF阻害薬は高血圧と血管内皮障害により,CTRCDや血栓症を引き起こす.
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▶GLSはCTRCDの早期検出に有用で,低下例では心保護療法導入の判断に役立つ.
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▶irAE心筋炎は重症化しやすく,筋炎や重症筋無力症を併発しやすい.
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▶がん関連血栓症は抗凝固療法を検討するが出血リスクにも注意が必要である.
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▶CTRCDを発症した場合は,心不全治療を開始しながら,がん治療継続の可否を協議する.
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▶がん治療医・循環器医との連携によって,「がん治療の完遂」と「長期心血管予後の改善」を両立させることが求められる.
pp.526-530
発行日 2026年4月1日
Published Date 2026/4/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.43.04_016
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はじめに
がんと循環器疾患は加齢,肥満,糖尿病,喫煙など共通の危険因子を有しており,近年の疫学研究から,がんサバイバーは心血管疾患を発症しやすいこと,逆に心血管疾患患者はがんを発症しやすいことが明らかとなり,がんと心血管疾患の密接な関わりを探究する「腫瘍循環器学」という学際領域が誕生している.実臨床では,古くからアントラサイクリン系薬剤の心筋障害が知られていたが,現在ではHER2阻害薬,チロシンキナーゼ阻害薬,血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬,プロテアソーム阻害薬,免疫チェックポイント阻害薬,さらにはキメラ抗原受容体T細胞療法など,幅広い治療が心血管系にさまざまな影響を及ぼすことが明らかとなっている.がん治療に伴う循環器合併症は心収縮能低下だけでなく,不整脈,高血圧,心膜疾患,肺高血圧症,末梢動脈疾患,弁膜症など多彩な病態が含まれる.さらに,担がん状態では腫瘍由来の凝固促進因子による過凝固亢進から静脈血栓塞栓症や動脈血栓症をきたしやすい.そのため,腫瘍循環器診療で重要なことは,がん治療に伴う心血管障害が生じうることを認識し,がん治療前に適切な心血管評価を行い,心血管障害の早期発見,適切な循環器的介入をすることで,がん治療の継続をサポートし,がんサバイバーとなった後も心血管疾患発症予防に寄与することである.

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