特集 がん検診とリスク層別化検診の課題
総説 がん検診のあるべき姿
ソーシャルマーケティングやナッジを活用したがん検診の受診率向上対策
溝田 友里
1,2
,
山本 精一郎
1
1静岡社会健康医学大学院大学社会健康医学研究科
2厚生労働省健康・生活衛生局
キーワード:
▶健康無関心層への対策としてナッジやソーシャルマーケティング等の行動科学の活用が着目されている.
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▶筆者らは,行動科学をがん検診受診勧奨に活用することとし,検診未受診者の心理に合わせた受診勧奨資材を開発した.
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▶国の指針で推奨されている5つのがん検診について,受診勧奨資材の電子ファイルを自治体等に無償で提供している.
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▶希望の虹プロジェクトホームページ(http://rokproject.jp/kenshin/)から申し込みが可能.
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▶開発した資材は2015年から2018年の間に787市区町村から430万人に送付された.
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▶167市区町村について効果検証を行ったところ,前年度と比べ,141市区町村(83%)で受診率が上昇し,全体として受診率が2.6%上昇し,1.44倍となっていた.
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▶さらなる受診勧奨として,テレビ番組の放送に合わせて,市区町村から個人に受診勧奨資材を配布するキャンペーンを計3回行った.
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▶主なテレビ番組は,NHK総合「ガッテン!」,「あしたが変わるトリセツショー」.
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▶第1弾(2018年)「乳がん検診」では約360市区町村が約86万人に受診勧奨資材を配布.
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▶放送後3ヵ月間で前年同月比1.5~7.6倍の受診率向上効果が認められた.
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▶さらに放送後,一般の人による「がん検診を受けよう」という呼びかけがSNS等で広がった.
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▶第2弾(2020年)「大腸がん精密検査」では,約330市区町村が約2万2千人に受診勧奨資材を配布.
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▶第3弾(2024年)「5つのがん検診(胃,肺,大腸,子宮頸,乳がん)」では,約280万市区町村から約150万人に受診勧奨資材を送付.
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▶第4弾として,「肺がん検診」をテーマにテレビ番組と連動した受診勧奨キャンペーンを実施予定(2025年9月18日放送).
Keyword:
▶健康無関心層への対策としてナッジやソーシャルマーケティング等の行動科学の活用が着目されている.
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▶筆者らは,行動科学をがん検診受診勧奨に活用することとし,検診未受診者の心理に合わせた受診勧奨資材を開発した.
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▶国の指針で推奨されている5つのがん検診について,受診勧奨資材の電子ファイルを自治体等に無償で提供している.
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▶希望の虹プロジェクトホームページ(http://rokproject.jp/kenshin/)から申し込みが可能.
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▶開発した資材は2015年から2018年の間に787市区町村から430万人に送付された.
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▶167市区町村について効果検証を行ったところ,前年度と比べ,141市区町村(83%)で受診率が上昇し,全体として受診率が2.6%上昇し,1.44倍となっていた.
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▶さらなる受診勧奨として,テレビ番組の放送に合わせて,市区町村から個人に受診勧奨資材を配布するキャンペーンを計3回行った.
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▶主なテレビ番組は,NHK総合「ガッテン!」,「あしたが変わるトリセツショー」.
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▶第1弾(2018年)「乳がん検診」では約360市区町村が約86万人に受診勧奨資材を配布.
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▶放送後3ヵ月間で前年同月比1.5~7.6倍の受診率向上効果が認められた.
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▶さらに放送後,一般の人による「がん検診を受けよう」という呼びかけがSNS等で広がった.
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▶第2弾(2020年)「大腸がん精密検査」では,約330市区町村が約2万2千人に受診勧奨資材を配布.
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▶第3弾(2024年)「5つのがん検診(胃,肺,大腸,子宮頸,乳がん)」では,約280万市区町村から約150万人に受診勧奨資材を送付.
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▶第4弾として,「肺がん検診」をテーマにテレビ番組と連動した受診勧奨キャンペーンを実施予定(2025年9月18日放送).
pp.1330-1337
発行日 2025年9月1日
Published Date 2025/9/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.09_007
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ソーシャルマーケティングやナッジを活用したがん検診受診勧奨
1.がん検診受診勧奨資材の作成
がん検診受診の行動変容には,個別通知によるコール・リコール(受診勧奨・未受診者への再勧奨)が有効であることが米国疾病予防管理センターのレビューによって明らかになっているが1),日本の受診率は先進国の中でも低い.2013年から少しずつ上昇しているが,国の目標値である60%は大きく下回っている.国民への直接の働きかけは市区町村など各実施主体に一任されており,現場では十分な資金的・専門的・人員的サポートが得られないまま,担当者の意欲や能力,環境に依存した対応をとらざるを得ない.そこで,筆者らは,2009年より「希望の虹プロジェクト」として,ソーシャルマーケティングやナッジ等の行動科学を活用した,がん検診受診行動に有効な個別受診勧奨用資材の開発と評価研究を行うとともに,効果の検証された資材を自治体などの実施主体に提供することとした.本プロジェクトでは,厚生労働省の指針により推奨されているがん検診を対象とし,対象者や受診間隔についても,指針に則るものに限定している.そのため,ナッジとの相性が良いといえる.

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