特集 がん検診とリスク層別化検診の課題
総説 がん検診のあるべき姿
がん検診でがん死亡率低減を実現するために何が必要か ─組織型検診への移行は可能か─
斎藤 博
1
1青森県立中央病院消化器内科
キーワード:
▶がん検診の目的は当該がんの死亡率/罹患率の減少である.
,
▶組織型検診はがん死亡率減少のためのがん検診の仕組みである.
,
▶組織型検診の要件は ・対象者の定義・把握に基づいた網羅的受診勧奨の仕組み ・プログラム全体の高い質の確保のための品質保証/精度管理の仕組み である.
,
▶任意型検診は対象者が定義されず,網羅的受診勧奨の仕組みのない検診で,通常,精度管理の仕組みもない.
,
▶組織型検診の水準によって死亡率減少の成果が決まる.
,
▶programmeでかつpopulation-basedが組織型検診である.
,
▶日本のがん検診はnon-programme, non-population-basedに分類される.
,
▶国際標準から外れ,科学的根拠のない検診が横行し,精度管理の仕組みもないのが日本の現状である.
,
▶現在のがん対策推進基本計画と組織型検診の要件の間には齟齬がある.
,
▶地域住民の検診は精度管理の基本的な体制は整備され,精度水準は向上しつつある.
,
▶職域でのがん検診(全対象者の70%)には死亡率減少のための仕組みがない.
,
▶職域のがん検診の根本的な転換が必要である.
,
▶受診率の分子は本来,対策としての要件を満たすがん検診の受診者数にすべきである.
,
▶検診の継続の検討と中止の基準設定が必要である.
Keyword:
▶がん検診の目的は当該がんの死亡率/罹患率の減少である.
,
▶組織型検診はがん死亡率減少のためのがん検診の仕組みである.
,
▶組織型検診の要件は ・対象者の定義・把握に基づいた網羅的受診勧奨の仕組み ・プログラム全体の高い質の確保のための品質保証/精度管理の仕組み である.
,
▶任意型検診は対象者が定義されず,網羅的受診勧奨の仕組みのない検診で,通常,精度管理の仕組みもない.
,
▶組織型検診の水準によって死亡率減少の成果が決まる.
,
▶programmeでかつpopulation-basedが組織型検診である.
,
▶日本のがん検診はnon-programme, non-population-basedに分類される.
,
▶国際標準から外れ,科学的根拠のない検診が横行し,精度管理の仕組みもないのが日本の現状である.
,
▶現在のがん対策推進基本計画と組織型検診の要件の間には齟齬がある.
,
▶地域住民の検診は精度管理の基本的な体制は整備され,精度水準は向上しつつある.
,
▶職域でのがん検診(全対象者の70%)には死亡率減少のための仕組みがない.
,
▶職域のがん検診の根本的な転換が必要である.
,
▶受診率の分子は本来,対策としての要件を満たすがん検診の受診者数にすべきである.
,
▶検診の継続の検討と中止の基準設定が必要である.
pp.1312-1320
発行日 2025年9月1日
Published Date 2025/9/1
DOI https://doi.org/10.50936/mp.42.09_005
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
がん対策は世界の先進国に共通の重要課題である.海外先進国ではがん対策としていわゆる組織型検診によって,子宮がん,乳がんのがん死亡率を大きく低下させ,さらに最近では後発で開始された大腸がん検診でも一部の国で成果をあげ始めている1).それとは対照的に日本ではがん検診の成果は認められていない.この差の原因は海外先進国に比べ日本のがん検診の受診率が特異的に低いことであると考えられてきた2).また,それを受けて,3期にわたるがん対策推進基本計画でももっぱら受診率向上対策が最重視されてきたが,やはり成果はあがっていない3).そうした中,第4期計画で海外の組織型検診が改めて注目されている4)が,組織型検診が受診率向上だけではなく,死亡率減少のためのいくつかの要件に基づく検診体制であることを明記する必要がある.成果をあげられない検診からの脱却のために確かに組織型検診の構築が望まれるが,そのためにはまず,組織型検診を正確に理解する必要があるだろう.組織型検診の要件を踏まえて日本の現状の問題点を明らかにし,わが国でも可能と思われる方策・選択肢について若干の考察を行う.

Copyright © 2025 Bunkodo Co.,Ltd. All Rights Reserved.