特集 過去3年間の新型コロナウイルス感染症の総括と今後の対策
7.SARS-CoV-2の下水サーベイランス
吉田 弘
1
,
喜多村 晃一
1
,
梁 明秀
2
1国立感染症研究所ウイルス第二部
2国立感染症研究所ウイルス第三部
pp.42-47
発行日 2023年12月22日
Published Date 2023/12/22
DOI https://doi.org/10.34449/J0108.07.01_0042-0047
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2020年春,新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)の急速な感染拡大の結果,医療体制が逼迫し,高齢者などの基礎疾患を有するハイリスク群で重症例,死亡例が相次いだ.感染拡大のさなか,起因ウイルスと同定された新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus type 2:SARS-CoV-2)と同じベータコロナウイルスに属するSARS-CoVが過去に下水より検出された知見をふまえ,欧米の研究者を中心に下水サーベイランス調査が各地で展開された1).その結果,患者増加前に採取した下水中にSARS-CoV-2ゲノムが検出され,早期探知への期待が高まった.その後,COVID-19の病態への理解が進み,治療薬,ワクチンなど医学的介入手段が確立するにつれ,下水サーベイランスへの期待は早期探知から感染動向把握へとその役割が転換しつつある.国内では,2020年5月に日本水環境学会タスクフォースによるSARS-CoV-2検出手法の検討が開始された2).その後国内でもSARS-CoV-2ゲノム検出の報告が相次いだ3-6).さらに,関係省庁による調査・研究が行われてきたことをふまえ7),2022年度に内閣官房による下水処理場,個別施設を対象とした下水サーベイランスの活用に関する大規模な実証事業が行われた.その結果は2023年5月に公表されている8).
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