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乳癌の治療戦略を検討するうえで,リンパ節転移の有無は最も有用な予後予測因子である。従来,臨床的にリンパ節転移陽性乳癌に対する標準的な腋窩手術はALNDである。ALNDはリンパ節転移の有無,転移個数の把握および転移があった場合には摘出による治療効果が期待される。一方,ALNDの有害事象として術後漿液腫,リンパ浮腫,肩関節可動域制限,疼痛などは患者のQOLに悪影響を及ぼす可能性がある1)。2010年にNSABP B-32試験で臨床的リンパ節転移陰性(cN0)症例においてSLNの検出率(identification rate:IR)は97.2%,偽陰性率(ALNDを行うとリンパ節転移を認めるがSLNには転移を認めない割合,false negative rate:FNR)は9.8%と報告された2)。SLNBで転移陰性群ではALND群と比較し,再発率および予後が同等であったため,現在,リンパ節転移陰性症例において,SLNBはALNDに代わる標準的手術治療として認識されている。乳癌に対するNACは乳房腫瘤の縮小のみならず,腋窩リンパ節転移への治療効果が期待される。20~40%の症例で腋窩リンパ節のdown stage(cN+からycN0)を認め,HER2陽性症例では抗HER2治療の導入により,その率は50%以上になったという報告もある3)4)。そこでcN+症例がycN0となった場合,NAC後にSLNBを実施し,廓清を省略することが新たな戦略として期待されている。●本企画「誌上ディベート」は,ディベートテーマに対してあえて一方の見地に立った場合の議論です。問題点をクローズアップすることを目的とし,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません。・論点整理/南博信・「必要である」とする立場から/坂東裕子・「不要である」とする立場から/枝園忠彦
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