アルコールと芸術
①映画(第4回)
森川 恵一
1
1社会医療法人財団松原愛育会松原病院院長代行副院長
pp.6-7
発行日 2020年7月30日
Published Date 2020/7/30
DOI https://doi.org/10.34449/J0078.08.02_0006-0007
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松原病院の森川です。また,お会いしましたね。さて,わが国の依存症治療を受け入れているほとんどすべての精神科病院では,認知行動療法を主体とした,いわゆる「久里浜式」の集団断酒プログラムを施行しています。しかし,このプログラムは細部に至るまでマニュアル化されているわけではなく,心理教育や個人精神療法,認知行動療法など,それぞれの現場で工夫の余地,いわば「名人芸」を発揮する場面が残されています。私は1984年から精神科医としてスタートを切りましたので,そろそろ老医の仲間入りです。そのため,さまざまな治療がガイドライン化されるのは望ましいとは思いますが,すべてがクリニカルパス化されるのは,精神科医がロボット化して臨床の醍醐味が薄れそうで,抵抗感があります。ささやかな名人芸として,私が患者様やご家族様との対話の場面のなかで活用しているのが,「映画・歴史・落語」の3点セットです。映像として示されれば,具体的なイメージが掴めます。歴史上の人物でアルコール問題がみられた方は,枚挙に暇がありません(私は好んで上杉謙信や福島正則ら,NHKの大河ドラマなどで頻繁に登場する武将達の話をします)。実話なので,説得力が出てきます。最後の落語ですが,以前,人情噺の屈指の名作「芝浜」を取り上げましたが,酒にまつわるさまざまなユーモラスなお話が落語にはあります。アルコール依存症は容易に死に至る深刻な病気なので,ユーモアは医師患者関係の構築のなかで重要です。機会あれば蘊蓄を傾けてみたいものです。では,今回ご紹介する映画は「フライト」(2012年,アメリカ映画)です。
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