Clinical Report
第二の治療目標としての節酒の適応 ~症例を通して~
武藤 岳夫
1
1国立病院機構肥前精神医療センター医長
pp.64-66
発行日 2018年2月10日
Published Date 2018/2/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0078.06.01_0064-0066
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これまでのわが国のアルコール医療では,依存症者に節酒を治療目標とすることには否定的な意見が大半であった。ブリーフ・インターベンション(以下,BI)を中心とした飲酒量低減技法が徐々に広まりつつある近年においても,その状況はほとんど変わっていない。断酒がベストの治療目標であることは当然である。しかし,「依存症者には断酒しかあり得ない」は真実だろうか? 確かに,現在専門医療機関で治療を受けている,5万人程度の依存症者についてはそうかもしれない。ただしその5万人は,断酒を検討せざるを得ない状況まで追い込まれ,精神科病院での入院治療という極めて高い治療構造のハードルを乗り越えた,特に重症な患者である可能性が高い。すなわち,アルコール医療の専門家は,107万人いると推計される依存症者のなかでも,いわば「エリート中のエリート」だけをみて,全体像を判断している可能性がある。本報告では,筆者が経験した症例を通して,依存症者の第二の治療目標としての節酒の適応について考察したい。
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