MY STUDY ABROAD 海外留学から学んだもの
第2回
三輪 洋人
1
1兵庫医科大学消化器内科学 主任教授
pp.98-101
発行日 2020年12月25日
Published Date 2020/12/25
DOI https://doi.org/10.34449/J0039.16.02_0098-0101
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私は1982年に鹿児島大学を卒業したのちに,順天堂大学で内科研修医として2年間を過ごしたのち1984年に順天堂大学の白壁彦夫教室に入局して胃がんのレントゲン・内視鏡診断を専攻した。優れた診断技術を身につけて早期胃がんを見つけて人の命を救うこと,それを一生の仕事にしようと思った。人の命を救う,これこそが医者の本分であると信じて朝から晩まで検査に没頭した。ご存じのように,がんの診断学はパターン認識であり,小さな胃がんをたくさん見ていなければ絶対に小さな胃がんを見つけることができない。森林の中で暮らしていると,緑の葉や茶色の木々の中に潜む昆虫や動物を見つけることができるのと同じである。毎日毎日,1週間に5日は検査をした。途方もない件数のレントゲン,内視鏡検査を重ねるうちに,自然と異常な胃の病変が目に入ってくるようになる。普通の人では見落としてしまうような小さな異常に気付くようになってくるのである。名人芸なのである。逆にあまり慣れていない医師が検査すると小さな病変は容易に見逃されてしまう。優れた診断技術は途方もない努力をした医師のみに与えられる。逆に言えばどの医師に検査してもらうかは絶対的に重要である。すなわち,私の目標は絶対的に信頼できる診断医になることであった。現に入局数年後には私の診断能力は一流といえる域に達していたのではないかと思う。自分は早期胃がんを見落とさないし,自分が見つけられないような胃がんは他の誰も見つけられないだろうと思いながら検査をしていた。白壁内科で修業する,そして白壁内科の中の胃がんのエキスパートになる。このことが自分のプライドであったし,その誇りがあるから頑張れたのだと思う。
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