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(3)アンビュラトリィ・スキゾフレニア
これらの患者は,その身内の者にとっても精神科医にとっても,入院加療が必要な段階になることはめったにないし,能力が低く,しかも遍歴癖があり,物事や人との関係に行きあたりばったりで,なかなか訳者注2)生産的独立的ではないとはいえ,『正常な』人間と同じように『自立してやっている』(to walk about life)ので,彼らは『気むずかしい人』(difficult people),『問題児』(problemchildren)として世の中を渡り歩いている。大人であれ若者であれ,彼らは依存的で無責任であり,(心気的訴えや,年中風邪をひいているような,ささいな慢性の病気がちな傾向はしばしばみられるけれども)心身ともに健全そうに見えるほどたくましい。このような人々は,現実的な意味でも,比喩的な意味でも,あるいは外観的にも内面的にも,自由気ままに振る舞っている。それゆえ私はこれをアンビュラトリィ・スキゾフレニア(ambulatory schizophrenias)と呼びたいのである。
これらの分裂病についての念入りな詳しい調査について簡単に述べる。しかし,このことは極めて難しい。彼らは次のような多くの理由から,精神科医の診察室にはめったに来ないからである。まず第1に,彼らは一般の人々からも医師からも,単なるひ弱な人間,『貧弱な人格』(poor personalities),『精神病質人格』などと(これらの言葉が何を意味しようとも)考えられてしまう。第2に,多少とも裕福な人達,すなわち,有閑階級の人達だけが,精神科医の注意を引くことになる。第3に,彼らがたまたま問題を起こした時にのみ,精神科医に押し付けられる。私が『押し付けられる』と言うのは,彼らがすでに実際のトラブルの過中にある時には,何かしてあげることは非常に困難だからである。その時には彼らは,あまりにも進行しているか,精神科医の治療的管轄外にさえあるからである。というのは,しばしば彼らは性的倒錯者であり,例えば,服装倒錯者かフェティシストか,またはその両方であり,病的レベルに固着しすぎていて,そのレベルを取り除けない。あるいは彼らは犯罪者,大抵は殺人者であり,精神科医は精神鑑定人の役割を演じることができるだけなのである。
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