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第31回 わが国から胃がんを撲滅するために胃炎対策基本法の制定は必要か?
浅香 正博
1
1北海道医療大学学長
pp.66-67
発行日 2020年6月30日
Published Date 2020/6/30
DOI https://doi.org/10.34449/J0039.16.01_0066-0067
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ピロリ感染胃炎の除菌に保険が認可されてから除菌数が累計で1,000万人に迫り,遂に胃がん死亡者数が減少し始めた。このような現象は世界でわが国だけに見られるものであり,わが国のピロリ菌除菌による胃がん予防は世界のトップを走っている。しかしながら,2017年頃からピロリ菌除菌者数は増加のスピードが鈍ってきた。ピロリ菌除菌に関心のある人の除菌はほぼ終了に近づいてきたためと推測される。しかしながら,いまだ3,000~4,000万人存在すると考えられるピロリ菌感染者の多くが除菌されずに残っている。ピロリ菌感染者は全員がピロリ感染胃炎という病気を持っており,除菌治療の必要があることを忘れてはいけない。わが国から胃がんを撲滅するためには,総合的な胃炎・胃がん対策が必要になる。その意味で参考になるのは,国を挙げて行われている肝炎対策である。肝炎ウイルスが原因の肝がんは肝炎対策基本法が2010年に施行され,国が中心となってさまざまな施策が行われている。肝がんと同じく感染症が原因である胃がんに対しても胃炎対策基本法を制定し,国家主導で胃炎対策を行うならば,わが国からの胃がん撲滅に大きな力を発揮するのではないかと考えられる。
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