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従来の免疫療法はすべて,リンパ球を活性化させて癌を攻撃させるという刺激系のものであった。しかし実は,癌はprogrammed death(PD)-1とPD-ligand(L)1のシグナルによってT細胞の攻撃を回避しており,刺激系では効果が出ないことがわかった。免疫チェックポイント阻害薬は,こうしたシグナルを阻害することで癌への攻撃を有効にするものである。免疫療法の歴史を辿ると,まず1970年に癌免疫監視説が提唱され,1970~1983年頃に制御性T細胞が報告された。1984~1987年にかけてT細胞が癌を攻撃していることが明らかになり,1994年には実験レベルで免疫チェックポイント阻害薬の機序が証明された。そして2000年頃,抗cytotoxic T-lymphocyte antigen(CTLA)-4抗体に作用するイピリムマブなどが登場し,CTLA-4とPD-1のリガンドが同定されてきた。そこからバイオマーカーが発見され,免疫療法が開発されてきた。現在開発されている薬剤はほとんどがPD-1やPD-L1を阻害するものである。免疫チェックポイント阻害薬の効果を上げるためには,いくつかの要因が検討されている。まず,腫瘍組織中の遺伝子変異量(tumor mutation burden:TMB)が挙げられる。TMBが増えるとT細胞が癌を攻撃しやすくなる。TMBが多いか少ないかによって阻害薬が効く癌と効かない癌が決まってくるのではないかと考えられており,マーカーとしても重要である。PD-L1の発現についても,有効性を高める役割とマーカーとしての役割の両面から研究されている。効果の発現をモニタリングする方法としては,tumor infiltrating lymphocyte(TIL)といわれる腫瘍浸潤リンパ球や高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high:MSI-high)なども重要視されている。Human leukocyte antigen(HLA)の影響については検討中である。また別の観点として,腸内細菌と免疫との関係も近年注目されている。また,免疫療法と放射線療法との併用も重要である。放射線によってDNAが傷つき,癌細胞が死滅した際に血中へ放出されることで免疫性が上がると考えられている。
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