INTERVIEW 対談
タバコと健康
浅香 正博
1
,
田淵 貴大
2
1北海道医療大学学長
2大阪府立成人病センターがん予防情報センター疫学予防課課長補佐
pp.5-11
発行日 2018年7月10日
Published Date 2018/7/10
DOI https://doi.org/10.34449/J0039.14.01_0005-0011
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浅香:タバコは健康によくなく,強力な発がん因子であることはすでに周知の通りです。タバコの歴史は,紀元前数千年の昔から記録に残る酒に比べて,ずっと新しいのですね。田淵:タバコは,コロンブスの新大陸発見時に原住民が吸っていたもので,15世紀にスペインを皮切りに世界に広まり,わが国には江戸時代に伝来したようです。当初は,一部の人が刻みタバコをパイプやキセルを用いて吸っていたにすぎず,タバコによる肺がんが大きな問題とされることはなかったと思われます。しかし,1900年代に紙巻きタバコを大量生産する技術が開発され,世界的普及に伴って肺がんの発生が目立つようになりました。「タバコは文化であり,守らなければならない」と主張する人もいますが,タバコは決して“大衆文化”ではありません。浅香:日本は嗜好品に対して寛容な傾向があるのですが,タバコに対しても世界のどの国よりも寛容と思われます。安いタバコ料金,弱い禁煙規制,受動喫煙被害に対する認識の低さ,公共の場でも喫煙場所が設置されていて,さらには「タバコは健康に悪くない」という情報誌まで制作されており,それを応援する科学者・著名人も少なからずいるのは大きな驚きです。日本癌学会をはじめ大きな学会が,タバコが発がん因子の最たるものであることを主張し,禁煙を勧めているにもかかわらず,なかなか効果があがりません。
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